第2話 会えますように
幽霊の杏奈は最初は空を飛べたり壁をすり抜ける事を楽しんでいた。
でも物に触る事ができないと幽霊の杏奈はゲームがやれないしTVの電源をONにもできたないし本も読めないので、物を使う楽しみがないのは不便だった。
物に触りたくて持つ動作を何度も挑戦したが昼間は触れる事が出来なかった、しかし夜になると物を持つことが出来た。
幽霊にとって夜は活動が活発になり力が出た。
出来る事が増えて楽しみができた。
しかし誰とも話せないのは1番辛かった。
でも今消えるとお母さんの顔は二度と見れないと思うと、幽霊でいるだけマシなのかもしれない。
弟のうるさい声も聞こえると何故だか今は聞けるだけで嬉しい気持ちになる。
この前、学と話せたのは楽しかった。
でも学が飛び降りた事に驚いた。
学にも悩みがあったのだろう。
また幽霊の杏奈は学校を見たくなり覗きに行く。
学校の休み時間に教室の窓辺に立ち話しをしていた相葉美波と平野真凛がいる。
真凛がいう強く叫ぶ。
「学くんの事は美波のせいじゃないよ!」
美波が少し俯いて言う。
「でも杏奈ちゃんの話をしたから……」
真凛も暗い顔で話す。
「杏奈ちゃんが亡くなって最初の頃は学くんの気持ちは浮き沈みが激しかったけど……杏奈ちゃんと付き合ったのって1ヶ月だけだよ! 学くん2年に上がってクラスでは元気に大笑いしてたし、修学旅行だって美波と2人で海辺で楽しそうに話してたじゃん。普通に見えたよ」
真凛は美波を見た。
「告白した時……杏奈ちゃんの事を忘れられてないようすだったし……」
真凛は強い口調で言う。
「えー!? でも杏奈ちゃんが亡くなった時、学くん休まずに登校してたけどなぁ。原因は勉強の悩みだと思ってた。最近みんな勉強モードに入ってるじゃん。それに学くんのお父さんは、医者だよ。きっとプレッシャーだよ」
美波は真凛の目を見て今にも泣きそうな顔で言う。
「そうかな? 私が悪かった気がする……」
真凛は真剣な顔で言う。
「原因を理解して亡くなった相手に寄り添うのはいいけど、自分が悪いとせめるのは良くない。学くんは美波のせいだと思ってないよ!」
「そんなの綺麗事だよ!」
真凛がため息をついて言う。
「はぁー……綺麗事だと言うなら、美波は捻くれ者だよ! あの日、学くんに何かできたかもって誰もが悔やんでる! 美波だけのせいにできないよ!」
美波は泣き出して話す。
「ごめん。考えちゃうの学くんが生きたかもしれない選択肢を……学くんに生きてほしかった」
美波は目から涙が溢れ出てしまう。
真凛は美波を抱きしめる。
美波が落ち着くまで保健室で休ませる事にした。
その様子を幽霊の杏奈は見て呟く。
「相葉ちゃんは学が大好きなんだ……学と相葉ちゃん会わせてあげたいなぁ。あーでも相葉ちゃんが幽霊を見えないと意味がないなぁ……」
幽霊の杏奈は放課後に相葉美波と榊原学を会わせるために美波の後を追う。
駅まで歩いているうちに夜になっていく。
美波は改札口を通り駅のホームに立ち電車を待っている。
もうすぐ電車が通過する頃に幽霊の杏奈は美波の背中を押し線路に落とした。
美波は落ちて痛くて思わず声をあげる。
「うっ痛い!!」
幽霊の杏奈は嬉しそうに言う。
「落とせた!」
美波は怪我をしたが痛いのを我慢して、すぐ立ち上がり駅のホームに戻ろうとする。
しかし高さがあり登れない。
美波は助けを求めた。
「誰かー助けてー!」
美波は手を伸ばして助けを求めたら駅のホームにいた6人の男性が美波の手をとり引き上げようとするが、なぜか上がらない。
なぜなら幽霊の杏奈が美波の肩にしがみ付き駅のホームに上がらせないように下に引っ張っていた。
「いっ痛い!」
肩が痛いくて美波は後ろをチラッと見たら幽霊の杏奈が見えて叫ぶ。
「きゃー!」
幽霊の杏奈の姿を見て美波は杏奈が学の事で怒っているのだと思い殺される恐怖で動けなくなった。
警笛とブレーキ音が響き電車が駅のホームを通過してガタンガタンの音に紛れてドンッグチャッと聞こえる。
男性たちは最後まで頑張り助けたが駅のホームに引き上げられたのは美波の千切れた手だけ。
杏奈は幽霊の生活が長くなり死ぬ事の抵抗が薄れて美波を殺す事に何の迷いもなく、むしろ良い事をした気分で満足そうな顔をしていた。
「相葉ちゃん、学と会えるね。」
駅のホームは血まみれだ。
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