第3話:大輔は桃を全面的に受け入れる。

「今夜、あなたのところに置いてくれます?」


「え?ホテルとか旅館とか決めて来たんじゃないの?」


「いいえ、あなたんちにお世話になろうと思いまして」


「はあ、着の身着のままで押しかけて来たわけか・・・」

「あのね準備不足だよ・・・その・・・長澤さん」


「あ、桃って呼んでください」


「桃さん・・・」


「さんもいらないですから・・・」


「最初っから呼び捨ては失礼だから、じゃ〜、桃ちゃんで」

「あ、俺「青山 大輔あおやま だいすけって言います」


「はい、知ってます」


「ああ、そうか・・・俺のことある程度調べてから来たんだよね」

「そりゃそうだ」


ってなことをしゃべってるとキューブから「ニャ〜」って猫が

出てきた。


「あ、ごめんねミカンちゃん、放っておいて」


「ね、ねこ?」

「あの、その猫、君の猫?・・・だよね」


「はい、この子ミカンって言うんです、可愛いでしょ?」


ミカンは茶トラ・・・毛の色がオレンジ色だからミカンって名付けられた。


「あはは・・・そうなんだ」


残念なことに俺は猫がすこぶる苦手、しかも動物アレルギーと来てるから、

ミカンの存在は今後のネックになりそうだった。

だから、これは半分でもいいから夢であって欲しいって思った。


青山 大吉のベッドに現れた50センチくらいの大きさの四角い箱。

その箱から女の子が出てきて未来からやってきたって言ってる。


俺は信じ難かったが目の前に女の子が実際にいる以上否定はできなかった。

そうか、せっかく未来から来たのに未来に帰れとも言えないし一応受け入れて

しばらく様子見るか。


だけどさ、いきなりやってきてまだ知りもしない俺の部屋で一緒に寝るのか?

しかもこれから毎晩・・・一緒に生活?・・・同棲するんだ。


俺のこと怖くないのか?

まあいきなり襲ったりなんかしないけど・・・それでもな。

俺が変質者とか異常者だったらどうするつもりだったんだよ。

彼氏を探すためとは言えまったく無謀な話だな。


無防備な桃は緊張感なんかまるでなくてミカンと戯れていた。


「あのさ、俺も覚悟決めたから全面的に桃ちゃんに協力するつもりだけど」

「これから俺たちどうなるか分かんないだろ?・・・性格的に合わないかも

しれないし・・・だからしばらく生活して様子みよう」


「あの図々しいようですけど、今日からお世話になります」

「私、料理だってできますから・・・家事は任せてください」


「ああ・・それは助かるよ、独り身はわびしいから」


問題は猫だけだよな・・・なるべく距離保とう。

俺は桃ちゃんとミカンと三人でここで暮らすのか。


だけど、待てよ考えてみたら桃ちゃんが俺のところに来たってことは

もうこの時点で俺の運命は変わって来てるってことになるわけだよな。

そう言うことだろ?


桃ちゃんが来なかったら俺の運命も変わらずこのままの人生を生きて

行くはずだったんだ。

俺の未来は大きく変わったんだ?桃ちゃんのせいで・・・。


いいや、そんなこと言ってたらそれこそキリがないだろ。

運命の分岐点なんてどこにだって転がってるんだから・・・。

ただこうなった以上桃ちゃんとうまくやって行くしかなさそうだな。


とぅ〜び〜こんて乳。







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