第38話
アルバ枢機卿を治療してから数日、数回の失敗はあったものの、私たちはあらたな化粧水を作り出すことに成功していた!
その延長線で乳液も!
――今までは焼酎が手に入らなかったから植物由来の化粧水や乳液だったんだけど、これからはむかしの高校生たちが大絶賛だったお酒由来の化粧水たちを使えるって寸法よぉっ‼︎
……お酒の元はお米で植物由来だったりするけど、その辺りはニュアンスで違いを感じ取ってほしい。
新しい化粧水をたっぷり肌に含ませて、乳液で保湿したお肌に回復魔法かける――
お金を取ってもいいレベルで劇的ビフォーアフターの完成よ……
つるつるとかじゃ言い表せない。
あれは、とぅるっとぅるっ!
……マジで治癒師辞めてエステティシャンに転職しようって思ったもんな……――今も迷いがないと言ったらウソになるけど……
――だがしかし! そこには絶対に捨てられない条件が存在していた……
エステの方にはイケメンの送り迎えが付いてないんだ……っ!
――やっぱ、私の天職は治癒師なんだなって。
……それにやろうと思ったら、治療だって言い張って施術すればいいだけだし。
そしてあれから変わったことといえば、私がお忍びで教会に赴くことが多くなったぐらいかな?
アルバ枢機卿ってば、冬でもあったかくなる治療魔法がお気に召したみたいで、梅やお米、焼酎なんかを融通する代わりに……って定期的に教会で治癒魔法をかけることが私のルーティーンに加わっていた。
……日に日に患者の数も多くなっている気がしてならないけど……――それに比例するようにさまざまな日本食――じゃなかった、宗教食の材料がお礼代わりにうちに送られてくるので、不満は無い。
そのおかげで梅干しも手に入ったし、梅酒も仕込んだし!
この世界、学校卒業と同時に成人だからイルメラもお酒飲めるし、この世界甘いお酒全く無いし‼︎
……梅酒に関しては失敗してるかもしれないけど、料理長だけじゃなくジーノさんやカーラさんも出来上がりを楽しみにしているので上手くいってほしいところ……
――ダメだったら成功するまでやるだけだけどねー!
だって梅も焼酎もたくさん手に入るし‼︎
あー……それから――ご近所さんたちへのお礼代わりにと手に入れたかったおにぎりだったんだけど……その流れで手に入れたこの化粧水たち……――おにぎりなんか目じゃ無いほどに、お手伝いに来てくれてたご婦人方の心を鷲掴みしてしまったようだった……
この品はまだ数が出来てなかったので誰にも渡すつもりなんかなかったんだけど――……私はともかく、カーラさんやルーナちゃんたちの肌艶までペッカペカになっていることに、めざといご婦人方が気が付かないわけはなく――
あれよあれよという間に『私たちのお礼もこれで! 少しでもいいから‼︎』ということに決まっていた……
……どこの世界だって女は美容に貪欲だよねー。
――しかしここで少しの問題がイルメラちゃんから提示された。
それは『……これお母様やお婆様に黙っていて良いのかしら……? 最悪の場合、この平民たちに悪意が向けられてしまうのでは……?』というもので――
貴族怒らせる、ダメ絶対。
ということで、お母様たちにもそこそこの量送ることに。
こっちは回復魔法も併用する方法も付け加えておいた。
いくら娘だからって、平民と同じ贈り物するのはマズいからね。
――でもイルメラだって、もはや別邸を取り仕切る女主人!
贈り物のついでにこちらの要望を織り交ぜることも忘れなかったよ!
……正確には内なるイルメラが『……まさか本気で“贈る”だけで終わらせるつもり⁉︎ その手紙の内容、どうぞ搾取してくださいと書き変えたならおよろしいのに……』と、蔑み――ご指摘くださったので『生活費が増えたならもっと材料買えるんだけどなー! チラッチラッ』的なことも書き加えておいた。
あとは侍女0人事件の時、巻き込んでしまった、兄弟の婚約者たちにも『この間は兄弟喧嘩に巻き込んでごめんね?』って味合いのメッセージと共に送りつけてみた。
――こっちは回復魔法のことは伝えたけど、詳細は書かなかった。
まだ他人だからね。 念のため。
そしたら、そんな速さで手紙が届くことありますか⁉︎ ってぐらい速やかに全員から返信があった。
みんな大喜びで、文面からだけでも喜び興奮しているのがわかった。
お母様たちからの返信には、たっぷりのおこずかいや宝石、イルメラが好んでいた王都のお菓子なんかも付けられていて、これには私もイルメラもニッコリだった。
意外なことに、未来の姉妹たちも、もはや社交界に戻れるか微妙になっている私に対して好意的で『例え未来がどうなろうとも、私たちは姉妹です!』とまで言ってくれた。
……そこまで気に入ったのかその化粧水。
――気に入ったんだろうな……
少々物につられやすい未来の義姉妹たちに呆れる気持ちもあったが……――これまで何度か同席したお茶会よりも数十倍親しみを感じることが出来た。
……本当、未来がどうなってるか分からないけど……――なんかこの人たちとなら上手くやっていけそう。
お母様たちから送られてきたお菓子にイルメラちゃんも嬉しそうだし。
――今度はレシピ本に書いてあった、色付きリップや匂いの付いたボディクリーム、ベタベタしにくいハンドクリームも作るつもりだから、完成と同時に送ってあげようかな?
お母様やお婆様たちが好きなお菓子も添えて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます