第15話
ここにある本を読んで学んだことはほかにもある。
それはこの本を書いた者たちのこと。
――この世界では、ずっと昔に日本人の高校生がごっそりと飛ばされてきた事件があったらしい。
つまりは――
クラス全員異世界転移。
――そこから少しでも暮らしをよくするために、仲間やこの国の人々と協力したり知恵を出し合ったりして、苦労して復元したものたち。
苦労して作り上げたそれらを、出来るだけ後世に残そうと、わざわざ長期保存に適している和紙や墨まで作り上げ、本という形にまとめたものの一部がこのキャビネットに収納されているらしかった。
――元日本人たちが
ここに来た理由や原因なんか誰も説明してなかったけど『日本にいたと思ったらいきなり異世界! 持ち物もなければ帰り道もない! もー! 私たちこれから一体どーなっちゃうのぉー⁉︎』
って時に『でもまずは美味しいご飯とスキンケア! カレーやらラーメンの再現方法やメイク用品も作らなきゃ!』……ってことをやり出したってことでしょ?
メンタルオリハルコンじゃん……
いや、日本食に対する執念が凄すぎるだけ……?
まあ……その執念のおかげで、今の私は醤油も味噌も日本酒すらも、作り方だけは分かってて、日本食のレシピもたくさん知っている訳だけどー。
ただ……お米がなぁー……
この高校生たちが転移してきた頃は普通に育てられていた米、なにがどうなってしまったのか、今の時代では“聖食”と呼ばれる食べ物になっていて、基本的に教会の偉い人たちか特別な儀式でしか食べられない、とても貴重な食べ物になっているんだそうな。
つまり……今、私がお米を買おうとすると、教会に行って色々な許可を貰わないと買えない品物になってしまっているのだ。
しかも主食にしようとしたらその許可は毎回必要ってことで……――え、知ってる? お米って主食ですけどね?
お米食べなくなったって言われてる現代社会だって米はおっきな袋一杯に入れられて売られてましたからね⁉︎
……とっても食べたいけど……めんどくさいのも困る。
――そして普通にお高いのもジミにキツい。
無理すれば買えないってほど高くは無いんだけど……それがお米の値段だと思うと目が飛び出るほど高いのやめてほしい。
……今の私にはそんな贅沢品買っている余裕なんてどこにも無いってのにっ!
でも……それでも……
私はお米が大好きなんだ!
あるなら是非とも食べたいんだ……っ!
もうずっとお米の口なんだからっ‼︎
――おにぎりや焼きおにぎり、チャーハンにいなり寿司、炊き込みご飯……
買えば食べられるのに……
――そういえばジーノさんが、ここの日本語の本たちならば、教会が結構な値段で買い取ってくれるかも――みないなこと言ってたけど……――でもこれはレシピ本なんだよ。
全部覚えるとか無理ゲーだから全部手元に置いときたい。
写すって案もあるけど……いくら薄いとはいえ、本一冊丸々書き写すとかそんな作業やりたくも無いし、人を雇うお金も無い。
――……そもそもとしてよ?
私がこんなにお金に困ってるのって理不尽以外のなにものでもないよね⁇
だって私が一体なにをしたっていうわけ?
ここに来たのは婚約者に浮気された挙句、こっちにはなんの落ち度もないのに傷物扱いされて、田舎に追い出されて?
よりにもよって私に着いてくるはずだった侍女達と不適切な関係になったからって、私欲のために簡単に同行を取り消すような親ってだけでもありえないのに⁇
なんで許されない行為をしといて、それを奥さんや婚約者にバラされたからって、生活費を止めるような嫌がらせしてくるとか絶対ナイと思うんだよねっ⁉︎
――我、圧倒的なほどに被害者ぞ?
――うちの親の器が小さすぎる上に、人でなしが過ぎる……!
一体どんな教育を受けて育ったらそんなひどい人間になるって言うんだ‼︎
全く! 親の顔が見てみたいねっ‼︎
……――なるほどぉ?
お父様だって人の子なわけだよ……
つまり――親がダメなら、そのまた両親じゃね?
親ってだけでお爺様たちにも多少の責任はあるでしょ!
息子よ? それが自分たちの孫に経済DVとかしてたら
――私は今こんな不幸なのにお父様やお兄様たちにこんなにヒドイことをされました! ってこづかい巻き上げたろ!
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