第13話

 巨鶏はシスコの追跡によって島の中ほど、崖のある谷あいで小動物を追い回しているところを見つける。

 シスコ達の目の前で哀れな雌鹿が巨鶏に丸のみにされているところだった。


「それじゃ行くよ。いぶりーはタイミング見て打って出てね」


 崖の上、茂みに隠れるいぶりーとごろーに声を掛ける。


「お任せなさいな。それよりも、くれぐれも無茶はダメですわよ」


「ん」


 シスコは二人に見守られる中、異能を展開する。

 一見しては分からないが、うっすらとシスコの体の表面を淡い光の粒子が包み込む。

 異能像をその身に纏う『シンクロ』と呼ばれる技術である。通常の異能像を出現させる運用よりも燃費が倍になり、制御も難しくなるが低SUPアタッカーには必須の技術である。


 シスコは全身を力場が包み込んだことを認識すると、巨鶏が背を向けたタイミングで崖の上から跳びかかる。

 高所から跳躍し、加速した足刀の一撃は凄まじい破壊力を持って巨鶏の首筋に叩きつけられる。

 しかし、


「やっぱダメか」


 シスコの一撃は巨鶏の持つ羽毛によって威力を殺され大したダメージを与えられていない。だが、巨鶏の注意を引くことはできたらしい。

 巨鶏は驚いたように鳴き声を上げて飛び上がり、蹴りから着地へ移るシスコを目で追っている。

 巨鶏にしたら初めて見るけったいな姿をした小型生物に見えたことだろう。そしてそれが、ほんの少し自分を驚かせた存在であることも何となくだが認識する。

 

 巨鶏はファイティングポーズを取り立ち上がるシスコに興味をひかれたらしい。小刻みに首を動かしつつシスコへと近づき、そして、探るように嘴で突く。

 素早いその一撃は、構えていたとしても避けることは難しい。

 そのはずの一撃の兆しをシスコはその目で捉えていた。どこを狙っているのか、どういった動きで迫って来るのか、シスコには何となくそれがわかる。

 シスコは嘴を体を捻ってよける。同時に自身の体のすぐそばを通り抜ける硬質のそれを、最小限の動きで横合いから拳で打ち抜いた。

 

 乾いた打撃音が響くと同時、巨鶏はバランスを崩し、体が横に流れる。


 シスコは振りぬいた拳を引き戻すと、バランスを取ろうと踏ん張る巨鶏の腹下に潜り込み羽毛で覆われていない、むき出しの足を狙う。

 羽毛で威力が殺されるなら、その天然の鎧のない部分を狙うしかない。


 狙いの足に十分体重が乗る寸前をシスコは見逃さない。重心の移動する隙間を狙い避けられない一撃を脛に叩きこむ。

 そして同時に腹下から離れ距離をとる。


 ヒットアンドウェイが基本的な立ち回りだ。

 とはいえ、


「さすが、上位の魔獣。一撃じゃだめかぁ」


 シスコはぼやく。脛への一撃も十分効果的だったが、期待したほどではない。足の表面には若干血がにじんでいるが、それだけだ。動きが鈍ったりとか、痛そうなそぶりをしているとか、そういった気配はない。

 鶏はただただ鬱陶しそうにシスコを睨むだけだ。


 この調子だと、もう二、三回くらい殴らないといぶりー呼べないかな。


 シスコがそんなことを思ったとき、巨鶏が顔を上げた。

 妙な気配の変化にシスコは巨鶏の視線の先を見た。

 

 視線の先、そこは崖の上だった。

 そこはいぶりーとごろーが隠れているはずの崖。

 そう、本来なら隠れているはずなのだ。

 しかし、崖の上には腕を組み仁王立ちするいぶりーとごろー。


「はぁ!?」


 シスコは驚愕に目を見開く。

 そして、それを合図とでも受け取ったのか、


「二番手、いぶりー。行きますわ!」


 叫んで崖から飛び降りる。

 

「ちょ、早いって!」


 シスコの声はいぶりーには届かない。

 いぶりーは空中で器用に異能像を展開すると異能像に自身を抱きかかえさせて着地する。

 とはいえ、STRが足りない、危なっかしい感じに前のめりになってこけそうになっている。


 そんないぶりーに向かって巨鶏は奇声を上げつつまっしぐらに走っていく。


「え? なんでですの?」


 慌てるいぶりー。巨鶏との距離は目と鼻の先である。急いで異能像から降りるとその後ろに隠れるようにして、異能像が攻撃準備に入る。


「まだヘイト取り切ってないんだって!」


 シスコは声をあげつつ走る巨鶏を追いかける。

 だが、鶏はああ見えて足が速い。

 追いつく前に巨鶏は大きく飛び上がり鋭い爪でいぶりーへと跳びかかる。

 まともに受けては耐えられない一撃だ。


「く、来るなぁ!」


 いぶりー、演技を忘れて泣きそうな声で叫ぶ。同時、無意識に動かしていた異能像は火の粉をまき散らしながら巨鶏に殴りかかる。

 |炎の騎士≪異能像≫は鶏の爪撃をまともに受け半壊するも、拳に宿った炎は巨鶏の腹に突き刺さり引火する。


「いぶりー、ほねはひろう!」


 崖上にて、燃え盛り始めた巨鶏を見おろすごろーは覚悟を決めて飛び降りる。

 瞬間、ごろーから巨大な異能像があふれ出す。

 その姿は一言で表すなら巨大な腕を持つ巨人。

 生物的な、成人男性二人分の胴体ほどもある巨人の右腕を備え、その胴体は岩のようにごつごつしていて、いや、実際に岩だった。左腕は……そこら辺の木をつぎ足したような感じで、右足と左足はどっかの魔獣から適当に持ってきたらしい、クマのような右足に、犬のような左足である。そして、頭部は……首から上が未実装である。


「ま、まだ死んでねーし!」


 崖下から聞こえてくる抗議の声を無視してごろーは叫ぶ。


「うおおおおおおおおおおおぉぉ!」


 ロリボイスが森に木霊する。


 敵である巨鶏は燃え始めた体に慌てふためき、地面を転がって火を消そうと一生懸命である。

 そんな隙だらけの相手にごろーは止めの一撃を見舞うため全身全霊を賭けて拳を巨鶏に向かって振り下ろす。

 が、落下はコントロールできないし、そもそも火消しに一生懸命な巨鶏は既にゴロゴロと転がって目標位置から離れてしまっている。


 当然結果は空振り、放たれた一撃は地面を大きく抉る。

 その一撃が巨鶏に当たっていれば間違いなくその命を刈り取っていただろうことを想像するのが容易いほどに。


「ごろー! もう一度だ! あいつ火を消し終わるぞ!」


 シスコは走りつつ声を上げる。

 が、ごろーの返事はない。

 着地した場所に同調した異能像を纏ったままで微動だにしない。

 そして、異能像は薄っすらと空中に溶けて消えていく。

 異能像が消え切った瞬間ごろーは前のめりに倒れた。


「ふぁ!? 大丈夫か、ごろー」


 シスコは何とか追いついてごろーを抱き上げる。


「……がす、けつ」


 ごろーはそう呟いて意識を手放した。


「ごろー!? ヤバイ、いぶりー一旦引こう!」


 シスコは近くにいるはずのいぶりーに声を掛ける。

 が、返事は近くではない、遠く離れた場所から聞こえてくる。


「ごろーの事はお任せしましたわ!」


 いぶりー、どうやら既に逃げ出していたらしい。


「はぁ!? 逃げるの早すぎだって!」


 シスコは慌ててごろーを背負うといぶりーの後を追う。


 その後ろ、怒りに満ちた巨鶏の鳴き声が爆ぜる。

 島の空気を揺らすその声は、例えようのない怨嗟に満ちている。


「早い速いはやいって! まずいってコレ!」


 背後に迫るのは体を覆う羽が半分焼け落ちた無残な姿の巨鶏である。

 焼け焦げた肌が実に美味しそう、じゃない、痛々しい。


 シスコは顔をちらと背後から迫る巨鶏に向ける。

 巨鶏は自身の肉体が傷つくのもお構いなしに木々をなぎ倒しつつシスコ達を追いかける。


「ちょっと、シスコ! なんでこっちに逃げてくるんですの!」


 先を走るいぶりー、振り返りつつ声を荒げる。

 心に若干の余裕があるせいかまだ素は出ていない模様。


「一蓮托生! 仲間だろ!」


「この、覚えてなさい!」


 後ろを振り返りもせず叫ぶ。

 いぶりーは必死になって走るのだが、実は三人の中でいぶりーが一番足が遅い。

 あっという間にシスコに追いつかれてしまう。


「置いてくなんてひどいじゃん」


「何の事かしら」


 息を切らせつつ、いぶりーは抗議するが、疲れが出始めたのか声に力がない。

 そして、徐々に背後から近づいてくる破砕音に焦りが浮かぶ。

 ただでさえ視界の悪い森の中、木々を縫うように走回ってこれ以上スピードを上げようがないのに、追いかけてくる巨鶏はそんな障害なんか無視して突っ走ってくるのだ。

 焦らない方がおかしい。


「こ、こうなったら最終手段ですわ!」


 いぶりーは走りながら異能像を発現させる。

 先程受けた巨鶏からの攻撃のせいで半身は破壊されているが、まだ右腕は使える。


「まさか、戦う気?」


 突然のいぶりーの行動にシスコは背筋が凍る。満身創痍での戦闘など自殺以外の何物でもない。


「冗談、そんなことしませんわ。こうしますのよ!」


 言って、いぶりーは異能像の力を行使して手当たり次第、近くの木々に火をつけて回る。


「ちょ、それ環境破壊!」


「関係ありません、わ! という、か、ゲーム内で、なに言って、ます、の!」


 走りながらの能力行使は負担が大きい。いぶりーは息も絶え絶えである。

 が、その甲斐あってか背後の森は煙と炎に満たされ、追っていた巨鶏も炎を怖がってか追いかけるのを諦めたらしい。


 いぶりーとシスコは足を止め振り返る。

 森の中は白煙が立ち上り、赤々とした炎が所かまわず燃えている。


「……思いの他燃えますわね」


「……とりあえず、浜辺近いし避難しとく?」


「ですわね」


 とか言いつつ避難する間もいぶりーは火をつけて回るのに余念がない。


「それにしても良く燃えますわね」


 浜辺に避難したいぶりーは、白煙を立ち昇らせ、赤々と燃え盛る山や森を見上げる。

 いぶりー自身が火をつけた範囲はたかが知れているのだが、どうやら延焼してしまい、その勢いは衰えることがない。

 シスコは浜辺の流木に腰を下ろし、目の前の立木が燃え上がるのを見て肩を落とし、


「山火事って怖いんだなぁ」


 場違いな感想を漏らす。


「ですわね、火の扱いには気を付けませんと。でも、これで何とか助かりましたわ」


「だね。ついでにアイツも倒せてると良いんだけど……」


 期待を込めて燃え盛る山を見るが、遠くから巨鶏の怨嗟に満ちた鳴き声が響いてくるのを耳にして、


「ま、簡単には死んでくれないよね」


 肩を落とした。

 それからしばらくして、


「んぅ……、おはよ」


 ごろーは眦をこすりつつ大欠伸をして体を起こす。

 見た目も相まってアバターの外見年齢そのもの、子供である。


「や-っと起きた。良いところで気絶するんだもんなぁ」


 シスコは苦笑してごろーの頭を撫でる。完全に見た目と中身が別物だと忘れている様子である。


「ん、くすぐったい」


「まったく、寝る子は育つといいますけれど、寝るなら後にしてくださいませ」


 偉そうにいぶりーはふんぞり返る。

 そんな態度にごろー、さすがに思うところがあったのか、


「む、いぶりーさきばしった」


「あ、あれはち、違くて……、そう、機先を制したのですわ! おかげであのニワトリモドキに痛手を負わせましてよ!」


(確かにダメージあったけど、結果的に状況悪化させてんだよなぁ……)


 シスコはいぶりーの反論に心の中でツッコミを入れつつ、


「二人とも落ち着いて、まだアイツ倒したわけじゃないんだから」


 なだめる。

 これから作戦だって立て直さなくてはならないのだ。揉めている暇はない。


 そう、クエストクリアのコールが無いということはこのエリアのどこかでまだあの巨鶏が生きているということなのだ。


「そうでしたわね……」


 いぶりーが呟いた瞬間、浜辺の近く、燃え盛る一角が唐突に爆ぜた。

 爆音と、燃え続ける枝葉が宙を舞う。


「ばくはつ?」


 ごろーは首を傾げ音のした方に顔を向ける。


「竹でも生えていましたの?」


 あれは偶に熱で爆ぜる。が、


「違う、アイツだ!」


 シスコの目には、炎の向こう、黒煙にまみれながらもギラついた眼で三人の姿を睨みつける巨鶏の姿を見た。

 巨鶏は燃え盛る炎を無視して悠然と歩く。肌を焦がそうと、熱に表情を歪めることもない。鶏に表情があるかどうかは知らないが……。ともかくとして、夕闇に包まれ始めた中、黒いシルエットが徐々に近づいてくるのだ。

 そんな巨鶏が纏うのは王者の風格であり、静かな怒りであり、ゆったりとした動きながら、目の前の獲物を絶対に逃がさないという気迫があった。


 巨鶏が炎の林を抜け、白砂に足を踏み入れる。三歩程歩いてから足を止め、じっと三人を見る。


「な、何ですの?」


 いぶりーは何だかその視線が自分に向いているような気がして、怖気が走る。そして、それは間違いではなかった。彼女が身を固くした瞬間、巨鶏の姿が掻き消えた。


「来るぞ!」


 叫んだのはシスコで、同時、能力を発現、|同調≪シンクロ≫を完了したシスコの姿が霞む。

 バギャッ、そんな音がいぶりーの背後から発される。

 妙な気配と音にいぶりーは瞬間的に振り返る。


「うおぁ!?」


 彼女が最初に目にしたのは、どす黒い感情に満ちた巨鶏の大きな目玉、それは間違いなくいぶりー本人へ向けられたもので、次に視界に映ったのは嘴、どこまでも鋭いくちばしは間違いなくいぶりーの心臓を穿とうと狙いをつけていて、だが、それは叶わない。

 淡い燐光を纏ったシスコがその嘴に横合いから膝を突き立てているからだ。


逸らされた軌道は、いぶりーの目にはスローモーションで動いているように見え、巨鶏の背後、あいかわらずのぼんやり顔をしたごろーが、右腕に巨大な異能像の腕を纏わせ巨鶏を狙う。そんな光景を見つついぶりーは自分の能力を、異能像を発現させようとするが、意識は加速しても肉体は、異能は加速してくれない。炎の騎士はゆっくりと半身を現すが、自身を守るのには間に合わないだろう。


 いぶりーは自分の心臓が止まったような気分になって、自分の体がゆっくりと後ろに倒れ込むんでいるのが何となくわかった。そして、尻が柔らかい砂浜につくと同時、物凄いスピードでいぶりーの脇に巨鶏のくちばしが突き刺さる。

 が、巨鶏はまだ動く。


「ごろー!」


 巨鶏の嘴が地面に突き刺さった瞬間、いぶりーは異能像で巨鶏の首を抑えこむ。が、いぶりーの能力では巨鶏を抑え込むことは不可能。

 たったの一秒も抑え込んでいることはできない。コンマ数秒の間、巨鶏の動きを妨げただけ。

 だが、それだけで十分だった。


「うおおおおおおおぉおおぉぉ!」


 気勢を上げるごろーは全身に異能像を纏い拳を振り上げる。そう、ごろーが全身に異能像を纏う時間さえ稼げれば良かったのだ。

巨体でありながらそれを感じさせない俊敏さで撃ち出されたそれは、音速を超えた一撃となり、爆音と共に巨鶏に刺さる。

巨鶏に叩きこまれた膨大な破壊のエネルギーは、皮膚を突き破り、内臓を破壊し、そして反対側へと突き抜ける。巨鶏の体が針の突き立てられた風船のように爆ぜた。

 

 赤く染まる空から、黒い影が生暖かい液体をまき散らしながら砂浜に落ちる。薄暗がりに見えるそれは、衝撃に耐えられずにはじけ飛んだ巨鶏の頭部だった。怒りに満ちたその相貌は、もはや何も映しはしない。


 夕闇に照らされる中、いぶりーは砂浜に座り込み、自分の心臓が早鐘を打っているのがうるさい程に聞こえていた。

 本当に一瞬の出来事だった。

 生きているのが不思議なくらいの出来事だ。いや、一つでも間違った行動を取っていれば死んでいたのは自分たちだろう、いぶりーはそう感じていた。

 生き残ったことに喜びを感じているのか、いぶりーは、腹の底からこみあげる衝動に口元が緩む。そんな自分の口元を隠すように手で隠し、仲間の姿を顔だけ動かし探す。


 巨鶏の躯の向こう側、また気を失ったらしいごろーが大の字に仰向けになって寝転んでいて、今まで気が付かなかったが、すぐそばには、片膝をついて息を整えるシスコの姿を見つけた。


 シスコはいぶりーと目が合うと、シスコも同じ気持ちなのだろう、口元に笑みを浮かべていた。それが苦笑しているように見えて、いぶりーは思わず噴き出す。つられてシスコも声を出して笑いだす。

 薄闇の張りだした空のもと、波音に交じって二人の笑い声が暫くのあいだ響いていた。



 三人が落ち着いた頃には、既に日が暮れていて、状況も酷いものだった。

 正確には三人が、というわけではない。主にいぶりーが酷かった。


「くさい」


 ごろーは鼻をつまんでいぶりーから遠ざかる。


「なんですって! 誰のせいだと思ってるんですの!」


 嚇怒も露わにごろーを追いかけまわす。

 いぶりーははじけ飛んだ巨鶏の内臓もろもろを頭からかぶってしまい、その、非常にアレな格好になってしまったのだ。

 そんないぶりーをとりあえず海で綺麗にして、巨鶏の素材回収に移る。爪や頭部を回収したのだが、飾り羽等の羽に関わる素材は綺麗さっぱり燃え尽きてしまい回収できるモノがなかったのだ。

 とりあえず、シスコは頑張って巨鶏を解体して心臓、ボン尻など(食材として)使えそうな部分を選別、回収していった。

 回収が終わると、とりあえず三人は食事をしてからロビーに戻ることにした。


 巨鶏討伐が完了したことで達成値が100%になり、砂浜の、要は三人に近い位置に帰還用のゲートが出現したのだ。(ゲートの上には86400秒、要は24時間のカウントがあり、それが三人がこの孤島エリアに滞在できる残り時間となっている)


 白い、光の円筒のようなエリアに三人が収まるとPTLであるシスコの目の前に帰還許可を求める薄緑の透明なパネルが現れる。

 三人は20時間以上の猶予を残して淡い光の粒となって孤島から姿を消した。


 三人が再び肉体の感覚を取り戻すと、そこは白い空間で、空中に畳一枚分ほどの大きさのモニターが浮かんでいて、右上には『Live』の文字。

 先程まで滞在していた孤島の映像が映し出されていた。


 今なお黒煙を上げて燃え上がる孤島。当然、島の施設も火の海の中である。


 それからピコン、という電子音が鳴ると映像にかぶさるようにして『施設点検 達成率100%』、続いてまた電子音と共に『脅威となる魔獣の排除 達成率100%』、またまた電子音と共に『環境破壊:報酬減額及び罰金』赤い文字で表示され、『施設の破壊:報酬減額及び罰金』これも赤い文字で表示されていた。そして、それらの下に『孤島での活動禁止』がでかでかと表示されていた。


 最後には『-300,000,000クレジット』の文字が……。

 現実で同じことをした場合の事を考えれば非常に優しいペナルティである、あるのだが。


「なんでですの! 報酬マイナスって……このゲームバグってますわよ!」


 いぶりーの絶叫がリザルトエリアに響き渡った。



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