172 塔のダンジョン ④


 七階層目に現れたのは、スケルトンアーチャーと引き続きスケルトンソードマンだった。


 前衛と後衛の役割ができており、少々面倒な相手になるだろう。


 しかし魔導銃の射程が長く、スケルトンアーチャーを難なくジョンが倒していく。


 攻撃もトーンが防ぐし、サンの遊撃も上手く機能している。


 アロマも少しずつトラウマが薄れてきたのか、怯えた感じがあまりしない。


 正に、順調といえる状態だった。


 今回も案内役を新たに用意して、攻略を進めていく。


 また当然のように、宝箱や強敵はいない。


 冒険者も、先へと進んでいるようだ。

 

 出てくる敵がDランクという事を考えれば、それも当然かもしれない。


 Aランクの冒険者=Aランクのモンスターを単独で倒せるとは限らないが、少なくともBランクとは十分単独でも戦えるだろう。


 であれば、冒険者たちはもっと上の階層にいるかもしれない。


 先に攻略されるのは少々しゃくなので、攻略速度を上げようと思う。


 結果として七階層は、六階層目よりも早く突破することができた。


 そうして八階層目に進み、同様に攻略していく。


 八階層目は、スケルトンソーサラーとスケルトンソードマンが出現した。


 スケルトンソーサラーは個人的に集めたいところだが、今は攻略を優先させる。


 しかし出来る限りは倒し、カード化していった。


 そして順調に、九階層目にやってくる。


 九階層目は八階層目の敵構成にプラスして、スケルトンアーチャーが増えた。


 それぞれ連携してきて面倒だが、ジョンの方が上回る。


 ちなみにスケルトンアーチャーは、既に500枚あるのでカード化する必要はない。


 この階層は少し時間がかかったものの、とうとう俺たちは十階層目に辿り着いた。


 しかし十階層目は部屋になっており、通路が無い。


 あるのは、大きな魔法陣だけだ。


 なのでとりあえず、鑑定をしてみる。



 名称:入場の魔法陣

 説明

 ・最初の一人が乗ってから三十秒後、魔法陣に乗った者たちを転移する。

 ・一度に乗れるのは四人まであり、五人目が乗ると発動がキャンセルされる。

 ・一度発動すると条件を満たした時に出現する退出の魔法陣が発動、又は移動した者たちが全滅するまで再使用不可。

 ・一度この先を突破した者は、退出の魔法陣の転移先に転移する。

 ・突破した者とそうでない者が乗った場合、発動はキャンセルされる。

 ・この魔法陣は、ダンジョンから魔力が供給されている限り自動で修復される。



 なるほど。どうやらボス部屋に入るための魔法陣らしい。


 おそらく転移された直後に、ボスモンスターが現れるのだと思われる。


 これは、少し期待ができるな。


 どのような敵が出てくるのか、楽しみである。


 とりあえず四人しか乗れないみたいなので、レフとアンクを残して送還した。


 四までとなっているが、匹や羽も一人分とカウントされると思われる。


 そうして準備が整ったので、俺たちは魔法陣に乗った。


 すると、魔法陣が光り出す。そのまま三十秒待っていると、鑑定通り転移される。


 ふむ。何も無い部屋だな。


 広々とした四角形の部屋。それがこの部屋の印象である。


 そして転移の数秒後、目の前にモンスターたちが姿を現した。


 なんだ、こいつらか。


 現れた敵の内容は、以下の通り。



 ・スケルトンナイト(C)×1 

 ・スケルトンソーサラー(D)×2 

 ・スケルトンアーチャー(D)×5 

 ・スケルトンソードマン(D)×10



 まあ、一度にこの数は、脅威だろう。


 上位種のスケルトンナイトもいるしな。


 一応、鑑定をしておこう。



 種族:スケルトンナイト

 種族特性

【生命探知】【闇属性適性】【闇属性耐性(小)】

【剣盾適性】【スラッシュ】【ガード】【集団指揮】


 エクストラ

【階層守護者】


 スキル

【シャドーニードル】【サークルスラッシュ】【パリィ】

【斬撃強化(小)】【眷属召喚】



 おおっ!? こいつ、エクストラを持っているぞ。


 すぐさま、その効果を確認してみる。



 名称:階層守護者

 効果

 通常個体よりも生命力や魔力、身体能力が上昇する。

 即死効果が無効になる。



 ホブンの持つダンジョンボスのエクストラは、大幅に上昇するというものだったはずだ。


 だとすれば、階層守護者はその劣化版といえるだろう。


 しかし、それでも強力だ。


 加えてダンジョンのボス故か、多彩なスキルも習得している。


 これまでの経験から考えるに、エクストラのあるボスはスキルを与えられるのだろう。


 これは是が非でも、カード化をするしかない。


 問題はカード化したことで、このダンジョンが崩壊するかもしれない事だが……まあ、別に構わないか。


 それに崩壊するにしても、確かダンジョンが保有している魔力が無くなるまでは、時間があるはずだ。


 この規模のダンジョンとなれば、すぐにどうこうなるとは思えない。


 それまでに、攻略を済ませればいいのである。


 よし、そうと決まれば話は早い。


 早速、コイツを倒すことにしよう。


 もちろんジョンたちを再召喚して、経験を積ませることも忘れない。


 ちなみに他のモンスターを鑑定してみたが、普通のモンスターと変わりなかった。


 するとそんな事をしているうちに、スケルトンナイトが眷属召喚を発動させる。


 周囲に、数十体のスケルトンが出現した。


 ザコとはいえ、増えると面倒な相手である。


 入場人数が四人と制限されているのであれば、通常なら十分に脅威だろう。


 しかし、数を増やすのは俺も得意だ。


 ネクロハウンドを十体召喚して、ザコ狩りを任せる。



 種族:ネクロハウンド

 種族特性

【闇属性適性】【闇属性耐性(小)】

【シャドーニードル】【あぎと強化(小)】

【嗅覚向上(小)】【集団行動】【骨喰い】



 こいつらからしたら、スケルトンはエサに過ぎない。


 それとジョンたちにメインの敵を任せたいところだが、流石にこの数は厳しいだろう。


 なのでホブンを召喚して、アンクと共に数を減らすように命じておく。


 

 種族:エリートゴブリン(ホブン)

 種族特性

【無属性適性】【悪食】【病気耐性(小)】

【他種族交配】【腕力上昇(小)】

【技量上昇(小)】


 エクストラ

【ダンジョンボス】

【ランクアップモンスター】


 スキル

【打撃武器適性】【強打】

【連撃】【小波】【シールド】

【パワーアップ】


 種族:アサシンクロウ(アンク)

 種族特性

【闇属性適性】【闇属性耐性(小)】

【隠密】【暗殺】【追跡】【警戒】

【ナイトビジョン】


 スキル

【鷹の目】【声真似】【体力上昇(小)】



「ゴッブア!」


 ホブンはCランクだが二つもエクストラがあり、下手なBランクなら倒せるほど強い。


 数の多いスケルトンソードマンを、簡単に倒していく。


「へたくそ! へたくそ! ぷぷぅっ」


 アンクは最近煽り癖が付いたのか、スケルトンアーチャーの矢や、ソーサラーの魔法を避けてはチマチマと煽りと共に攻撃を繰り返す。


 アンクは正面からの戦闘は得意ではないので、こうした陽動としては良い動きである。


「にゃぁ」

「レフはだめだ」

「にゃぶう」


 レフが行ったら、簡単に終わってしまう。


 俺もそうだが、見守った方がいいだろう。


 攻略速度を考えれば参加したほうが良いのだろうが、こうした戦闘経験を得る機会も逃したくはないのだ。


 いわゆる、ケースバイケースである。


 いい塩梅で、臨機応変に考えていこう。


 そしてジョンたちだが、トーンをタンクとしながら順調に攻めている。


 ジョンとサンは、的確にスケルトンソードマンを削っていく。


 アロマはトーンだけではなく、ホブンやアンクのサポートが可能なくらい余裕があった。


 対して敵のスケルトンナイトといえば、全く手が回らないといった感じだ。


 スケルトンソードマンを前衛として、後方からアーチャーとソーサラーの遠距離攻撃を基本とした、堅実な戦い方をしていた。


 加えて眷属召喚でスケルトンを絶え間なく召喚して、左右から回り込んで来るであろう敵に備えつつ、遊撃としてちょっかいを出させる。


 スタミナが実質無限なアンデッドという事も考えれば、普通はかなりやっかいだろう。


 しかしそれも思わぬ強敵が出てくれば、一気に瓦解する。


 Fランクのスケルトンを幾ら出したところで、Cランクのネクロハウンドは止められない。


 肝心の前衛であるスケルトンソードマンは、ホブンに潰されていく。


 貴重なアーチャーとソーサラーは、アンクのちょっかいで攻撃がままならない。


 そんな状況下で、正面からジョンたちと戦うのだ。


 正直、過剰戦力だったかもしれない。


 スケルトンナイトは指揮官故か、自ら打って出ることはしなかった。


 しかしそれも、配下の数がほぼ壊滅近くまで減少する時までだ。


 指揮の意味が既に無いと判断したのか、ようやくスケルトンナイトが動き出す。


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