アリス、出版社に勤める

アリス、出版社に勤める(1)

 アリス幼い頃から、父親の背中を見て育ってきた。諦めのよさと、諦めない強い意志を持っている、父親と同じように。

 アリスの父親は、アリスに自分と同じ道を歩んで欲しいとは思っていない。自分の道は自分で決めさせる、そう思っている。


 高校を卒業したアリスは、大学には全く興味がなく就職を選んだ。その就職先は、父親と同じ会社。ある漫画の影響を受け、中学生の頃から、父親から出版社の仕事内容はいろいろと聞き。まるで、出版社で働くために英才教育を受けているようだった。


 アリスの父親はとしては嬉しい。しかし、アリスの父親の勤める佐々木出版社は、全国でも有名な出版社。大卒しか採らない規定になっている。当然、アリスはそのことを知っていた。なのに、なぜ、大学に行かないのか、その訳をアリスの父親は聞くと。私に考えがあるの、としか言わない。


 アリスは、大卒の経歴欲しさに大学には行きたくない。それに、早く編集者として働き、あの人に会いたい想いでいっぱいだった。そして、アリスのある考えとは。高卒を採らないのなら、採ってもらえるようにすればいい。

 そこでアリスは、ダメもとで、1ヶ月間のテスト期間を設け、私の技量を見極めて欲しい。不合格ならきっぱりと諦めると、その想いを手紙に書き佐々木出版社に送った。このことは、アリスの父親は知らない。

 この時、アリスは父親のコネを使うことは考えなかったのか。アリスは一切考えていない。父親もそんなことは考えない。なぜなら、この世界は実力の世界。

 

 佐々木出版社では、アリスの履歴書と編集者として働きたい想いを書いた手紙が届き。その手紙を受け取った人事部長は、アリスのことをよく知っていた。というのも、アリスの父親が働いているからという訳ではない。この出版社によく見学に来ていたから。

 そんな時、アリスは人事部長にこんなことを言っていた。こんなに本があるのに、映画事業部はないの。

 この発言がきっかけで、と言うのは大げさだが、映画事業部が発足した。アリスは、実写よりアニメに力を入れ、そのあとに様子を見てから実写にした方がいいと、いろんな意見を言っていた。

 採用するかどうかは、人事部長に一任されているが、最終的に採用を決めるのは社長。その結果、アリスの想いが通じ、1ヶ月間のテストを承諾した。

 そして、その結果通知の封筒を受け取ったアリスは、2階の自分の部屋に行き。机に向かい、封を開け、通知内容を確認し、急ぎリビングに行き。このことを知らなかった父親は、その結果通知に驚き、喜んでいたが、アリスの思い切った行動と、その度胸は母親譲りだなと感じ。

 母親は、ちょっと浮かれている様子のアリスに、現実を突きつけるかのように言った。アリス、喜ぶのはまだ早いよ。ここから勝負だかね、気を抜かないように、と言うと。隣にいた妹も同意見でうなずいていた。

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