第11話 司令室

 進次郎が生徒会に入る事になった頃、軍の司令室で列寺ともう一人の人が話し合っていた。


「久方ぶりだな列寺」


「こちらこそお久しぶりです、月島重信つきしましげのぶ


 列寺の目の前にいる髭の生えた人は月島重信、日本軍の元帥で弱冠三十歳でその地位に上り詰め、四十年近くその座に座っている、元帥になった後も数々の功績を残しており未だ軍に入った時から無敗の記録を誇る。


「君の息子があの組織の者と接触したようだな」


「はい、迂闊でした。言い訳になるかもしれませんが索敵系異能を持った警備員数人をすり抜けて、学園内に侵入してきた者は初めてです」


 腹が立つ、侵入された事も、進次郎に接触されてしまった事も。

 

 列寺は今まで感じた事が無いくらいの自責の念を感じている。


「別に学園側に問題があったとは思っていない、それに学園内に侵入した奴は組織の中でも少なくとも幹部級だという事が分かった」


「もしかすると気づいてないだけで既に何度も侵入を許してしまっているのかもしれません」


「そうだな、だがそれよりも幹部級が来たという事実からより一層警備を厳重にしないといけないな」


「はい、既に警備に関しては見直しを進めています、今回の事は進次郎を実の息子のように接して来ただけに侵入を許してしまった件は校長兼理事長としてではなく一人の親として腑が煮えくり返っています」


 列寺の顔の血管が浮かび上がって来た、それ程までに怒りが収まりきれていないのだろう。


「ああ、だからしっかり頼むぞあの子をさらに上のレベルへと押し上げてあの子自身が自分にかかる火の粉を払えるようになるその時まで」


「はい!」


「あの子をお前が引き取る時に言ったが、全てを背負い込み過ぎるな助けが必要な時は俺やおまえの同僚だった奴に頼ればいい」


「分かりました、今一度心の中に留めておきます」


「では失礼します」


 列寺が司令室を去ろうとした瞬間。


「ちょっと待て」


 珍しく元帥に止められた。


「はい、何か他にも私に用がありますでしょうか」


「一度あの子と面と向かって会わせてくれないか」


「大丈夫ですけど進次郎は自由な奴です、失礼な態度を取るかもしれませんそれでもよろしいのでしたら」


「それは問題ない」


「ですがその前に伺いたいのですが何故進次郎に会おうと思ったのですか?」


「それは…………」


「言えない事でしたら大丈夫です、いつ頃にしますか?」


「いやっやっぱりやめておこう、もう少し待てばの季節になる、楽しみは取っておく事にする」


「そうですか、私はこれで失礼します」


「ああ」


 そして列寺は司令室を後にする。


「とてもじゃないが孫娘と婚約して欲しいなどとは死んでも言えんな、能力なら申し分ない後は人間性と生理空せりあが気にいるかどうかそこが問題だな」


 そしてその日以降元帥は隠れて進次郎と孫娘の生理空を婚約させるための作戦を仕事そっちのけで立てて始めていた。




「はっクチュン!誰か私の噂でもしてるのかな」

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