あの子の秘密
ムネミツ
あの子の秘密
「君、その髪型はニチアサ視てるね?」
彼女の俺に対する第一声がそれだった。
「ああ、良いだろ? ヒーロー好きなんだよ」
ヒーロー番組の主人公と同じ髪型にした俺、
そんな俺に語りかけて来たのは転校生の美少女、
女子の癖に男子の趣味に詳しいオタクの変人として定着した春野さん。
凡庸な顔だが、体は柔道部で鍛えてる俺カレー好きなので黄色戦士と言われる。
ショートカットでボーイッシュな、八時半アニメの黄色系な彼女。
彼女と俺は同じ趣味から、友人づきあいを始めた。
「おはよう朝田君♪ 私と一緒に、学校のお手伝いをしないかい♪」
「いや、何そのキメ顔♪ 良いよ、手伝う♪」
春野さんに引っ張られて、彼女と一緒にプリント運びの雑用を手伝う。
彼女の良い人属性は、俺の心に光と熱を与えてくれていた。
「君と私の連絡先を繋げよう♪」
「マジか、オッケー♪」
SNSでも繋がった、話す内容は趣味の事とかだ。
俺は春野さんとの関係を、友人から恋人へと変身させたくなった。
こんな子、誰かに渡せねえよ。
ヒーローよりも、野望を抱く悪の組織みたいな気持ちになった。
美女と野獣と言うか、ヒーローと怪人なコンビの俺達に転機が訪れた。
土曜日。
自宅の部屋でノートPCを開き、特撮の配信を見ていたらスマホに着信が来た。
『一緒に、キューピュアと仮面ヒーローの劇場版を見に行かないかい?』
映画のお誘いである、好きな物を好きな人と見るって最高だよなあ!
俺は即座に了承していた、彼女とならオタク家族を作れる。
彼女と俺と子供達でイベントとか映画とかに行くんだ♪
これ、俺の人生で初のデートじゃねえ?
翌朝、決戦の日曜日。
ファッションはヒーローから学んだ俺。
公式サイトで買った変身前のヒーローの衣装と同じ服装で決めて身だしなみを必死に整えて彼女の元へと走る。
「おはよう、春野さん!」
「おはよう、朝田君♪ 良い趣味してるねえ♪」
「そっちも、キューピュアみたいだよ」
「プレドーで買ったのさ♪」
「ああ、やぱぱりプレドーか♪」
プレドー、オタクの金を吸い上げる公式通販サイトプレミアムドーダイだ。
俺は上下ブルージーンズに、赤いスニーカー。
彼女は、黄色ワンピースに黄色パンプスと黄色系魔法少女の私服だ。
「朝田君、黄色とか言われてるけどレッドの素質あるよ♪」
「そ、そうかな♪」
彼女に褒められて俺は顔が真っ赤になった。
俺達は映画を楽しみ、コラボカフェで相席して限定メニューを頼んだ。
だが、運の悪い事に悪の組織の店の外の地面に闇が広がった。
「嘘っ! 何で奴らがっ!」
「え、春野さんは奴らを知ってるの?」
全身真っ白な戦闘員達と共に、魚の骨人間とでも言うえb機械人が出現した。
「春野さん、隠れて!」
「ごめん、無理っ!」
俺が彼女の身を隠そうとするも、彼女は避けて外へ飛び出す。
俺も彼女を追いかけ、店を飛び出す。
春野さんには何か秘密があるのか?
ヒーロー好きだからとはいえ、怪人を間近で見ようとか非常識な人じゃない。
突如閃光が迸り俺は目を覆う。
「そこまでだよ、ボーンウィッシュの怪人!」
「え、黄色のヒーロー?」
逃げ惑う人々、唖然とする俺、俺の前には全身を黄色いスーツで固めたヒーロー。
「イエローキャットが相手だ~~っ!」
イエローキャットが怪人に挑む、だがそうはさせじと戦闘員達が立ち塞がる。
「ふざけんな!」
「ギギッ!」
俺の中で何かが目覚め、気が付くと突進し戦闘員を次々と投げ飛ばしていた。
「え、朝田君っ!」
「俺は良いから、怪人を倒せ!」
俺の理性は飛び、戦闘員達を相手に修羅となっていた。
「ギョギョ、何だあの一般人はっ!」
「朝田君はやらせない、キャットスラッシュ!」
「猫は嫌いだ~っ!」
俺が暴れている間に、怪人が倒されたのか戦闘員達は消えた。
緊張の糸とかスタミナが切れた俺は、倒れこんだ。
「ありがとう、朝田君♪」
誰かに受け止められて、春野さんの声を聞いた気がした。
その後、春野さんが所属するヒーローの基地に担ぎ込まれて彼女の秘密を知り俺もヒーローとなるのはまた後のお話だ。
あの子の秘密 ムネミツ @yukinosita
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