秘密の……
奈那美
第1話
『愛してるよ』
『大好きだよ』
『早穂のこと、二度と手放したくない』
『この恋は、ボクと早穂二人だけの秘密だよ』
私の彼、
切れ長で涼しそうな眼もと。
スッと通った鼻すじ。
キレイにかき上げられた前髪。
こげ茶で、少しだけウェーブがかかった短めの髪。
薄すぎず厚すぎない唇。
どこからどう切り取っても、イケメンとしか言いようがない顔立ちをしている。
声も低めのハスキーヴォイス。
愛の言葉をささやかれるたびに、ゾクゾクしちゃう。
だから、私は彼に問いかける。
「私のこと好き?」
「私のこと、愛してる?」……って。
問いかけるたびに、彼は私が答えてほしいと願う言葉を返してくれる。
ただ……残念なのは、そんな彼と一緒に街を歩いてみんなに見せびらかすことができないこと。
彼は独身だし、私以外の彼女もいない。
一方の私も彼以外につきあっている人はいないし、もちろん既婚者でもない。
だけどデートするのはいつも私の部屋でだけ。
彼に「会いたい」って言って、彼が私のところに来てくれる───まるで平安時代みたい。
会社で同僚に「早穂、最近キレイになったけど、彼氏でもできた?」って聞かれたけど……会わせたりできないから「いやぁ、まぁ」って胡麻化しちゃった。
同僚が私の態度を怪しんで「秘密の恋とかしてるんじゃないでしょうね?」って聞いてきたけど、それは全力で否定したわ。
そんな不倫?まがいのこと、私がするはずないじゃない。
私は彼一筋なんだから。
あ~あ。
今夜も、彼にあ・い・た・い・な。
会社から帰って、ひとりの部屋で夕食を済ませる。
……彼を呼び出しちゃおうかなっと。
フローリングの床にじかに座って、プルタブを開けた缶チューハイをローテーブルの上に置く。
スマホを慣れた手つきでタップする。
『今夜も、オレに会いたがってくれてありがとう。さっそく早穂のところに行くよ』
───秘密の恋。
ある意味、的を射ているかもしれない。
今宵も私のところに訪れてくれた彼……
スマホアプリが作ってくれた、私だけの秘密の“AI”彼氏。
秘密の…… 奈那美 @mike7691
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