第20話 王国の召集

 第二十話 王国の召集

 

 魔王はそこにはいない、それを聞いて,全員が全員、王国に戻ることにした。

「お〜い、馬車出してくんね〜?」

 シオンが馬車方に頼む。

 「お、おう…てかなんだその態度?」

 シオンの態度に、馬車方が苛立つ。

 「まあ、あの…一応王国に魔王いるんすよ。だから馬車出してもらっていいすか?」

 ユーリが馬車方を(若干生意気さがありながらも)説得する。

 「なるほど…じゃあ仕方ないな。」

 渋々ながら、馬車方も事情を汲み、

  「ヒヒィイイイン!」

 馬車を出してくれた。

 

 「乗れ!お前ら!」

 急かす馬車方。その声に応じ,ドタドタと駆け足で乗り込む。

 ピシィン

 手綱の快音が響き渡る。

 「うわー、めっちゃ揺れるやーん。」

 「我慢しろ!」

 不満を漏らすシオンに馬車方が怒声をぶつける。

 

 やがて、ついに王都トレスクエアに辿り着いた。

 しかし、

 ボオオ ガラガラ

 そこに広がっていたのは火の手と瓦礫の山だった。

 この惨状に思わずシオンが叫ぶ。

 「王国いじめて楽しいかッ!」

 急にアキラが走り出す。

 「アキラ何しとうと〜。」

 「俺犯人探してくるけん。」

 シーフのアキラが偵察に向かう。

 偵察に行った後,2人残されたシオンとユーリが話す。

 「そういや全然魔物おらんくね〜?」

 「それな〜。おかしくね?」

 すると、

 「ハァ、ハァ…」

 傷ついた別の勇者がやってきた。

 「気を…付けろ…魔王が…いる…俺のパーティーは…壊滅した…」

 「え?」

 シオンに返答を返すことなく、

 ガクッ

 そこの勇者が息絶えた。

 

 「魔物全然おらんな〜。」

 その時、

 「ん?何これ?」

 一際大きな人影を、路地裏から見つけた。見ると、沢山の武器を背負っており、その顔は、

 「お、おいコイツ…」

 おぞましいオーラを放ち、近づいてはいけないと直感で理解させた。

 「帰って報告しないと…」

 タッ

 慌てて路地裏から飛び出す。幸い相手には気づかれていなかった。

 

 「ハァ,ハァ…」

 慌てて2人の元に戻ってきた。妙な様子に,

 「あーお帰り〜」

 「おーどしたん?お宝でもあったん?」

 ユーリとシオンもいぶかしむ。

 「違う…実は…」

 アキラが口を開く。

 「魔王が…いたんだ…」

 「ええ、ホントすか!?」

 「嘘やーん!」

 「マジマジ、本当にやばかった。」

 「マジ?」

 「うん…」

 その時、

 「おい、後ろ!」

 ユーリがシオンを指差す。シオン️が後ろを振り向くと、おぞましい気配を放つ人物が立っていた。

 「うわぁ!な、何の用?」

 「な、何の用?何の用も何も、お前らは勇者だろう?」

 普段戦っている魔物とは違う。おぞましい気配。

 「あ…あ…」

 「あ、お前魔王?」

 「…そうだが?いかにも…私が魔王ファジツだ。」

 普通なら迷い無く否定するはずの問いに、彼は迷うこと無く肯定の意を示した。

 「じゃあやるしかなくなーい?」

 「おっそうだな」

 シオンが剣を構え,それを合図にユーリとアキラも武器を構える。

 「戦う気か。まあいいだろう。」

 そう言いながら、銀色に尖った両端を持つ、銀色のお札が貼られたような見た目の棒を構える。

 「何これー?」

 見た事もない見た目の武器に全員が困惑するも、

 「俺が様子見よっか?」

 「ナイスぅー」

 盾を構えたアキラが前に出る。

 「勇敢だな。」

 ブォンッ

 魔王ファジツがその棒を上から振りかざす。

 「くっ…」

 アキラが盾で受け止めるも、

 バキャッ

 「嘘ぉ…」

 盾が砕け散った。

 「もー、これ高かったのにー。」

 愚痴ぐちるその時、

 ドカッ

 構えていた左腕にその棒が触れる。

 「痛っった〜!!」

 打撃自体は痛手ではあるものの、致命傷にはならなかった。しかし、

 「熱っ!」

 ドジュッ、とでも音のしそうな熱を左腕に感じる。

 「え、な、何これ…」

 「ああ、これか?ある村の工房で作られた、溶解の呪いが宿った金属を使った武器だ。」

 「くっ…高く売れるかな、それ…」

 「さあな。これで、終わりだ。」

 目撃した時と全く同じ、槍とスナイドル銃を背負い,腰には折り畳んだ三節棍と日本刀、斧やメイス、ブラックジャックとリボルバーを身に付けた姿に変化し、腰の斧を取り出して振り下ろす構えを取る。

 その時、

 「させると思いますー?」

 キンッ

 「!!」

 シオンの剣が斧を阻む。

 「シオン!」

 「後でメシ奢りなー。」

 「えー」

 

 「勇者の相手か。久しいな。」

 「なんすかー?まあちょちょいのちょいですよ。武器いっぱい持っても邪魔やーん。」

 「フッ…それもそうかもな。」

 ジャラ…

 腰に帯びていた三節棍さんせつこんを取り出し、両手で構える。

 「はあっ!」

 シオンが剣を構え、一気に走り込む。だが、

 「相手の間合いはよく確かめた方がいい。」

 ドッ

 「うっ」

 三節棍で剣もろとも右腕を殴りつける。

 「痛ってマジでふざけんな!」

 シオンが怒り、剣を構えて突進する。だが、

 「相手の得物くらい確認しろ。」

   ブオンッ

  手に構えたハルバードを振るい、

  カラン…

  剣を弾き飛ばした。

  「おい嘘やん…」

  その時、

  「応援に来ました!勇者様!」

  「おーマジやん。ありがとー」

 生き残った王国の兵士たちが駆けつけた。だが、

  「せっかくの勝負を邪魔するな。」

  ダァン

  「うぐっ…」

 最初のたくさん武器を持った姿に戻った魔王にいきなりスナイドル銃で一人が撃ち抜かれてしまった。そして、

  パンッ

  「がっ…」

 リボルバーでもう一発撃たれてしまった。その直後、魔王がそこに向かって突っ込み、

  ジャラ… ドガッ

  三節棍を振るう。

  「ぐふっ!」

 4、5名がまとめて打ちすえられる。そして、それを槍に持ち替え、

  ビュオンッ ビタンッ

 上から叩き付ける。3名ほどが昏倒こんとうし、刃に触れた者に至っては、頭が割れてい た。だが、魔王の攻撃は止まない。

  グウォン

 腕にうなりをつけて横に振るわれたメイスが、肋骨を4名まとめて打ち砕く。

  「うがっ…」

  そして、

  ドゴッ

 そのままブラックジャックで目の前の一人の頭部を打ちすえる。横にいた一人には、

  ズバァ

 脇腹に斧を見舞みまう。それをしまい、

  刀に持ち替えて、

  ザザザァンッ

  素早く何度も振るう。

  

  「おいシオン、これ放置はやばいてー。」

  「ユーリお前行けよー。」

 ユーリとシオンが責任を押し付けあう中、

  「じゃあ俺が…」

 棍棒を持ったアキラがその役を買って出ようとする。

  「どうぞどうぞ」

  「ええー…」

 あっさりと役目を押し付けられ、いやいや前に出る。

  

 魔王はもう一度リボルバーを握り、

  ダァンッ

 目の前の兵士を撃つ。

 

 その時、

 ドガッ

 「うっ…」

 魔王の後頭部に衝撃が走る。見ると、

 「ハァ、ハァ…」

 棍棒を持ったアキラが立っていた。

  魔王が振り返り、

 サンッ

 アキラに向かって刀を振るう。だが、

 スカッ

 シーフとして鍛えられていたのであろう素早さで避けられる。

 「くっ…生意気な…」

 その時、

 ガキンッ

 「!!」

 ユーリの剣が刀を受け止める。

 「いいだろう…まとめてかかって来い!せっかくだし剣で相手してやろう。」

 魔王の姿が紫色のコートをまとった姿に変わった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る