第19話 ハルトの世界
第十九話 ハルトの世界
彼らは勇者キラーに復讐の念を燃やしていた。それを見ながらハルトは言う。
「何をそんな目で見ている?私は裏切り者を誅殺したまでだぞ。」
だが、そんな戯言は彼らの耳には入らない。
「仕方ない。今ここで殺して同じところに送ってやろう。」
そう言って相手は近づいてくる。
「……オマエは!」
シオンが声を荒げる。
「命をなんだと思っているんだ!」
そう言うと、勇者キラーはめんどくさそうな顔をする。
「あ〜……。また、そういう話する?俺はめんどくさいよ?」
だが、彼らの目が彼を逃さない。
「単純だよ。魔族には魔族なりのルールがある。それが守れないなら死ね、そういう話だ。」
彼が淡々と話す。
「オマエ達の話すことはいつ聞いてもうざいな。体がおかしくなりそうだ。」
「そりゃどうも。」
相手はその挑発を躱す。
「何がルールだ。それに乗っかってオマエは生き物を殺したいだけだろ⁉︎この大量殺人鬼め!どうせマリアも、殺す時がきたら殺すつもりだったんだろ⁉︎」
「そうだが?」
彼はあっさりと言う。逆鱗を逆撫でするように。
「殺しは俺にとっての生きがいだ。今までそれが俺の中で消えたことはない。」
「……。」
彼らは呆気に取られたように呆然と立ち尽くす。
「殺し殺され、それを俺は生き抜いてきた。その中で知ったんだよ。」
そう言って自分の後ろにある紫の液体を指差しながら言う。
「殺せるやつは全員殺せ。どのみち自分以外の全ては敵だ。殺せる時に全員殺せ。」
彼の言うことには正当性は微塵も感じない。逆に恐ろしさがあった。
「そうやって俺は敵も味方も殺してきた!そして俺は!今!ここにいる!」
相手は腕を広げ、すばらしそうに自分の持論を語る。
「とても清々しい気分だ。歌でも一曲歌いたいような……。」
その時アキラの投げたナイフが飛んでくる。だが、それはあっさり躱された。
「危ないじゃないか。当たったらどうすんだ。」
彼は挑発している。それはわかっている。だが!彼らには抑えられない怒りがあった。
「今言えるのはこれだけだ。」
シオンがぽつりと言う。
「オマエは死んだ方がいいと思う。」
心の底から出た本音。気色が悪い。
「じゃあ殺してみろ!俺を‼︎」
そう彼が言うと、3人はハルトを取り囲むように接近する。
「さあ早く!俺が逃げるかもしれんからなあ!」
そう殺意を煽ると、3人の攻撃を次々と避けていく。
(攻撃が単調になった。これは殺しやすい‼︎)
彼の今さっき言ったことは半分本音であり、半分は本音ではない。だが、どこの部分が本音でどこが本音ではないのかは、今は言えない。
次々と折り重なる攻撃の隙間に入り、攻撃を避けていく。
「こんなもんか⁉︎さっきの威勢はどこに行った!」
そうさらに煽るような発言をすると、彼は足を斬られた。
「何っ——」
彼の右足が切断されていた。
「……。」
彼は少し考え、その場から消えた。
(どこに行った?)
「どこを見ている?」
すると、上から声が聞こえる。彼はいつの間にか彼らの場所から逃げていたのだ。だが、意味がわからなかった。
(どうやって折り重なった攻撃の隙間を抜けて、脱出が難しい上に逃げた?)
不可能な動き。それに彼は困惑した。
「もう一階層広いところに行こう。」
そう言って彼は放つ。
『おちろ‼︎』
彼らは受け身を取るが、何も起きない。
(不発?)
そう感じた瞬間、相手が話しかける。
「ああ、違う違う。オマエらが落ちるんじゃない。」
そう言って上を指差す。
「“天井”が落ちるの。」
そう言った瞬間、上から魔王城の天井が落ちてきて、彼らはその下敷きになった。だが、
(ここで死んで……!)
「たまるか‼︎」
『天下無双流 断天!』
瓦礫ごと、両断する。勇者キラーにゾクゾクっとした、なんとも言えない気持ちが流れた。
「いいね……いいねえ!」
そう言った時には彼らは瓦礫から脱出していた。
「これなら俺の最強の技を見せてもいいかもしれねえ!」
そう言うと、彼は天に向かって言い放つ。
『止まれえええええええええっ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎』
(何が止まる⁉︎何が起きる⁉︎)
そう感じて身構えるが、次の瞬間、そう身構えたシオンに起こったのは——
「ドゴッ‼︎‼︎」
シオンは急に殴られ、壁に激突した。的確に拳が腹に入ったようで、肋骨が折れた。
「ガハッ!」
血反吐を吐く。口から血が出る。
(何が……一体何が起こった⁉︎)
その彼の様子を見ながら彼は思う。
(やはりこの技は初見では避けれんよな。まあそれが当たり前だ。)
彼はこの技をいくつかの敵に対して披露はしているが、これを解明したものはいないし、攻略できた者ももちろんいない。いわば必殺。
「流石だ!流石は俺の必殺技‼︎」
「これが……必殺……!」
シオンは打撃を喰らった部位をさすりながら言う。
「シオン!大丈夫か⁉︎」
ユーリとアキラも急いで駆け寄る。
「あ、ああ……。それよりも聞いてくれ。」
いきなり声のトーンが変わる。そう、この時変わっていたのだ。人格が。
「今起こったことをありのまま話す。今、急に打撃が四発か五発、同時に打ち込まれた。完全に同時に、だ。絶対にありえん。腕がそれぐらいあれば別だ。でもそんなチャチなもんじゃ決してねえ。催眠術とか、魔法とか、そう言うもんじゃねえ。そう言うののレベルを完全に超えている!」
シオンはこう話した。
「だからなんだ!でもこれで殺らなくちゃいけねえだろ?」
「少し……時間をくれ。ヤツを観察する。」
シオンはそう言った。
「二人でヤツの相手をしろ。どうせ俺が入ったところで邪魔なだけだ。頼む。代わりにヤツの技のタネを解く!」
シオンの固い決意に彼らは動いた。
「二人がかりで来るか……。」
(もう今さっき出したしな……。)
「出し惜しみはなしでいこう!」
『止まれええ‼︎』
再び何かが止まる。すると驚いた光景が広がっていた。
二人はシオンのすぐそばまで殴り飛ばされていたのだ。
「ば……バカな……!」
二人はなんとか体を起き上がらせる。
「一体……どうやって……!」
彼は相変わらず笑っている。彼の状況を嘲笑っているのだろう。
「フフフ、フハハハハハハハ!恐ろしいだろう!この私の御技が‼︎」
そう言い放つ。
「止まらんぞ!」
『止まれえええ‼︎』
(また来る……!)
身構えるよりも早く、相手の攻撃が到達する。瞬時に今度はユーリのみが吹き飛ばされた。
「ぐ……。」
(くそっ、このままだとみんな死ぬ!一体何を止めているんだ⁉︎)
シオンは脳をフル回転させる。
(最初は心臓を一時的に止めるのかと思った。でも違う!そんなんじゃない!)
シオンは歯がゆい気持ちで考える。
(もっと広い、何かを止めているんだ!でも、一体それはなんなんだ!)
『止まれ!』
その言葉と共に仲間が吹き飛んでいく。同時に、だ。
(同時……。同時……!)
彼の頭の中に導かれた一つの答え。
(同じ時間で、同じタイミングで……!)
彼らはそれでも立ち上がる。
(そういうことか!バケモノめ‼︎)
そうして確信を持った。そして大声を出す。
「わかったぞ!ヤツの止めているもの‼︎」
それを聞き流しているのか、勇者キラーは攻撃を止めない。
「時間だ‼︎ヤツは時間を——」
『止まれ』
時が動き出した時、シオンの目の前にあったものは——
(ナイフ⁉︎⁉︎)
10本以上のナイフがシオンの目の前に出現した。いや、置かれた。
「ドドドッ……!」
シオンの体にいくつかのナイフが突き刺さる。
「「シオン‼︎」」
二人は声を上げる。
「ぐっ……!」
痛みに悶絶しながらも戦いを見る。
(間違いねえ!コイツは……時を止めている……っ‼︎)
「素晴らしい‼︎」
ハルトは大声を上げる。
「よもや、私の技を見破るとは!」
そう言って再び、今度はわかるように言う。
『時よ止まれええ‼︎‼︎』
その瞬間、世界中の時は動きを止めた。何もかも止まり、そうして彼はシオンに近づく。そして、
「無駄なのだ。たとえ技の本質を見抜こうと、止まった時の中では無力!いわば私の独壇場!圧倒的強者なのだ!」
そう言うとシオンの体にパンチを浴びせる。
止まった時の中では、通常動くことはできない。だが、彼のもつエネルギー自体は止まらない。そのためパンチのエネルギーはシオンの体表で停止する。そして、
「時間だ。そして、時は動き出す。」
時止めが解除されると同時にパンチのエネルギーはシオンの体にダメージを与える。そう、パンチのエネルギーが同時に到達するのだ。
「ドドドッ!」
シオンは止まった時の流れの中で殴られたダメージを喰らう。
「ぐっ……!」
ナイフも喰らった彼の状態はあまり良くない。治癒の仮面で回復自体はしているが、それでも追いつかない。
(まさか時を止めているとは!一体何秒止めている⁉︎)
「時止めの秒数は3・34秒だ。」
相手はそう言い放つ。
「その短い時間に打ち込めるパンチの量は最高で二十九発。最大まで打ち込めば簡単にオマエは殺せる。」
(意外と時間は短い!3・5秒程度なら離れれば最悪近づくだけだ。でも……離れては攻撃ができない!)
対策法は単純に離れるだけだ。だが、それでは敵にダメージを与えることはできない。
「終わりだ!」
『時よ止まれええ‼︎‼︎俺だけの時間だァ‼︎‼︎』
時が収縮し、止まる。
「終いにしよう。」
シオンをそして殴りつける。
「まずはオマエからだ!」
そうしてパンチのラッシュを浴びせかける。
「オラオラオラオラオラオラオラオラ‼︎‼︎」
何十発ものパンチを打ち込むと、
「そして……時は動き出す。」
「ドドドドドドッ‼︎」
シオンの体に今まで以上の数のパンチが浴びせられた。
「パキンッ!」
その時何かが壊れた音がした。
「やはり脆いな。その剣は。」
剣が中途で真っ二つに折れていた。
「チ……クショウ!」
シオンは折れた剣先を見つめ、自分の不甲斐なさを感じた。龍鱗を剥ごうと剣を滑らせたりしたことで、既に剣には多大なダメージが入っていた。それが完全に重なって折られてしまった。
「大丈夫だ。オマエ達が死んで親の元に帰れなくても、じきに会えるさ。」
「⁉︎どういうことだ⁉︎」
「魔王は遠征中と言っただろう?」
「……。」
彼はニヤニヤ笑いながら言う。
「どこに遠征しているかわかるか?」
「……まさか……!」
「そう。王都、トレスクエアさ。」
同刻
王都 トレスクエア
ある魔族が、王都の前に立っていた。すると、王都の方に手を伸ばす。すると、結界が現れ、彼の侵入を阻んだ。だが、そのまま結界に触り続ける。
「ビキビキビキビキ……。」
少しずつ結界にヒビが入っていく。
「ミシミシミシミシ……!」
そして、ヒビが完全に広がると、
「バキン……ッ‼︎‼︎」
王都を護っていた、守護結界は魔族によって破壊された。街を護る最終防壁が突破されたのだ。
そして、周りに転送魔法で大量の魔族が運ばれてくる。魔族は王都の奥にそびえ立つ王城を見ると、街に侵入していった……。
「今ちょうど攻撃が始まった頃だろう。ゲリラ戦になるからなあ。かかって2日ってぐらいだろうか。そのぐらい時間があれば、王都は落ちる。」
「コイツ……!」
彼は悟った。なぜ魔族が少なかったのか。単純に王都攻めに大量の魔族が参加していたのだ。全土の魔族を収集し、王都攻めに参加させていたため、数が極端に少なく、必要最低限まで数が割かれていたのだ。
「オマエらは運が良い。名誉なことじゃないか。誰としてたどりつけなかった魔王城に来て、果てるのだから。」
そう言って腕を広げた。
「コイツ〜〜ッ‼︎」
シオンは怒りを抑えきれない。彼は夢中に駆け出した。
「来い!最後の勇者!」
だが、
(変わらせてもらう。)
ズッ、と体の主導権を握らされる。
(こんな感じで済まないが、殺らせろ。)
言うまでもなく近接戦闘が繰り広げられる。相手はそれに対応していたが、少し違うのに気づいたようだ。
(拳の威力が上がっている……。)
魔力量も微かではあるが増えている。
(まあいいか……。変わらんことだ。)
そして、シオンに殴られ離れた時に言葉を発する。
『止まれ』
再び時が止まる。
「いくら火力を上げようとこの世界では——」
そう言いかけた時だ。シオンの目がこちらを向いていることがわかった。
「⁉︎」
最初からこうだったのではない。ゆっくりとだが、目玉が動いている。彼はそれを観測して、感じた。
(コイツ、見えているのか⁉︎時の流れ自体が‼︎)
そうして再び時は動き出す。時間が短い上に、驚きのことも重なり、残念ながら彼は動けなかった。
(次の時間だ。)
『止まれ!』
間髪入れずに時を止める。本来はあまり好まれないのだが。
今度はシオンの指が微かに動いている。
(なるほど、強力な魔力で魔法の効果を緩和しているのか……。)
勇者キラーは笑みを浮かべた。
「そんなことをしようと!意味はない!死ねえいっ!」
そうして拳を顔面に向かって振り下ろそうとするが、
「ドッ……!」
「バカな……。」
彼の目の前に飛び込んできたのはシオンがそのまま止まった時の中で動いていることだった。
「時は動き出す。」
シオンがそう言うと、そのまま止まっていた時が動き、アキラとユーリもその現状を確認する。
「⁉︎」
その現状はとても信じ難いものだった。なぜなら魔法を発動した本人が攻撃されているのだから。
「……面白いな。」
そう言うとハルトはその場から離れた。
「いいだろう。なら私にも考えがある。」
そう言うと彼はポケットから何かを取り出した。
「オマエが止まった時の中で何秒動けるかは知らん。だが!それに関係なく殺す方法は、ある!」
大量のナイフをポケットからだし、宣言する。
『時よ止まれええ‼︎』
再び時が止まる。シオンは動かない。だが、魔力で体を纏っているのを感じる。それを見て、彼は笑う。
その二秒後、彼は何もすることなく魔法は解かれた。
(なんのつもり……。)
すると、時が動き出したタイミングで今度は攻撃し始めた。そして、攻撃の合間のタイミングで、
『時よ止まれええ‼︎』
魔力を覆う隙を見せず魔法を発動させる。
(これでは時の中での観測が——)
キイン……と時が止まった。
「二連続での発動……、流石に反動がくるな……。」
そう言ったが、彼はもうすでに準備は完了していた。
「フフ……。時は再び動き出す。」
3人の周りには、大量のナイフが配置してあった。
(((ヤバッ!!!)))
3人はなんとかしてそれを弾こうとするが、流石に無理だった。胸近くのナイフは全て防ぎ、まだ耐えていた。だが、足にはいくつか刺さってしまった。
(このままではまずい!ジリ貧になる!相手はまだ多分あの感じ、魔力をかなり残している‼︎)
相手はまだ余裕そうな顔だ。まだあの時止めも使えるのだろう。時止めだけに魔法を絞っていることから、これだけで勝つつもりなのだろう。
だが、相手にもそういう作戦があるのに対し、こちらにも同じように作戦があった。
アキラがユーリに何か話している。それを見たシオンも何かを感じ取ったようだ。
『時よ止まれえ!』
再び時を止めるが、
(コイツら、魔力で全身を覆っている‼︎)
つまり、この時の中でも動けるだろう。
(まあいい。ナイフなら……。)
「効くだろう⁉︎」
そう言ってシオンにナイフを投げる。だが、その時、
「ズバッ……。」
彼の肩は斬られた。
「時とめは、終了だろ?」
時が動き出す。空中で止まっていた鮮血が、鮮やかに散る。
「な……に……⁉︎」
彼はシオンに気を取られすぎて、アキラの動きを注視していなかった。彼のスピードは止まった時の流れの中でも健在。急いで近づき、攻撃を叩き込んだのだ。
(やっぱりか!)
「みんな聞いてくれ!」
アキラが言う。
「コイツは時止めの時、防御が格段に脆い!おそらく魔法の運用に魔力を多く割くからだろう。でもこれはチャンスだ!」
彼は腕を治すと、彼らを見る。
「……いいだろう。どうせこうすればオマエらは死ぬ。」
そう相手はしたを向いて呟く。
「見せてやろう!私の正真正銘最後の時止めだぁ‼︎‼︎」
『時よ止まれえ!これが俺の時間だーッ‼︎‼︎‼︎』
時が止まった。だが、彼はその場から立ち去った。
(⁉︎一体どこへ行った⁉︎まさか背後……。)
でもそうではないようだ。そうこうしている内に3・5秒が過ぎて時が動き出す。だが、その瞬間にまた時が止まった。
(二連続⁉︎一体何を……。)
そして再び時が動き出す。だが、また時が止められる。その時目の前に現れた。
あるものを持って。
「終わりだあああああああああああ!外からわざわざ建物を持ってきてやったぜ!潰れてしまえよ!」
彼は建物を外からそのまま持ってきたのだ。これで3人まとめて潰すつもりだ!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
シオンは建物を殴りつけ、なんとか潰れるのを防ごうとする。
「無駄よ!すでに万死!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
二人が互いに上と下で建物を殴り、潰そうとする。
「残り0・5秒‼︎終わりだああああああああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎」
そうしてハルトは今までよりも強い魔力で殴った。
「ドドオン……‼︎」
地面に建物が激突した。土埃は上がらなかった。
(やった……。これで奴らは完全に潰された。)
「フフフ、フハハ。フハハハハハハハハ!」
そう言って笑う。
「みよ!これが勇者キラーの力だ!取るに足らん人間どもよ!大人しくオマエ達は死んでいるのだいいのだ!」
そう天に向かって言い放つと、
「さて、アイツらの死に様を見てやろう。」
そう言って体を倒そうとするが、
「?なんだ?」
体の動きが止まっていることに気づいた。
「どうした?」
体が全く動かない。
「一体どういうことだ。何が……。」
その時に気づいた。
「動きが鈍っているのではない……!時が……!時が止まっているのだ‼︎」
「ここまでだ。」
背後からシオンの声がした。
「!」
「俺らが時を止めた。……というより挟み込んだ。」
そう言い放つ。
「だよな。アキラ。」
アキラの魔法、
「俺の魔法は金を使ってものを売買できるんだ。今回買ったのは時間……。俺ら3人の共同名義で買ったからこの時の中で動けるのはこの3人だ。」
「時を……買っただと⁉︎」
相手は理解しかねる様子だった。
「丁寧なことに領収書までついてるんだ。買ったのは時間四十秒。今でちょうど二十五秒だ。ただ金は15万スルート飛んだがな。」
「やすいぐらいだろ。そのぐらい。」
もう彼は動けない。喋ることさえもだ。
「今からオマエをフルボッコにする!苦しみを味わいな。」
そう言って3人は攻撃を開始した。シオンは殴りで。アキラはナイフで。そして……、
「お望みだったよなあ。奥義を見てみたいって。いいぜ。見せてやる。」
『天下無双流 奥義‼︎』
(やめ……)
『神鬼滅殺‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎』
彼の背中に大きな傷ができる。死んでいるかどうかはわからない。
「「「そして!」」」
3人の声が重なる。
「「「時は再び動き出す‼︎‼︎‼︎」」」
3人のその声と同時に彼は瞬時にダメージが入り、彼は遠くに吹き飛んだ。
(この俺が……こんな奴らに……!)
そう思った時には壁に激突し、彼は力無く倒れた。
「オマエが死んだ理由は一つ。オマエは俺らを、怒らせた。」
「シオン!急いで戻ろう!王都が大変だ!」
アキラにそう言われると、彼らはすぐに引き返していった。魔王城の外に出るとアキラが馬車を出し、急いで戻っていった。
王城内は彼の赤い血で埋まっていった。血は、赤い波紋を出しながら、流れていった——
王都
「攻撃だ!全員殺せえ!」
魔王軍による大量の魔族が攻撃を始めている。
「迎え撃つぞ!」
勇者も参加し、魔王軍と戦っている。だが、物量的に、勝敗は分かっていた。
「魔王様、大体城下町のほとんどは制圧いたしました。」
「一日もかかるとは……。一体何をしておった。」
「も……申し訳ありません‼︎敵の反撃が激しく……。」
「もう良い。」
「は……はっ……。」
報告に来た魔族は下がった。
「もう良い。私が前線に出る。」
「しっ……しかし……。」
「出る!この戦争を終わらせてやる。」
魔王がついに戦局を動かす……。
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