第5話 噂の真相
「やっぱ気味悪いのは戻っても変わんねぇな…」
「うぅ…本格的に暗くなってきたから冗談無しで怖くなってきたよ…」
「同感…」
神社に戻ると先程見た光景と何も変わっていなかった。少年達が直した地蔵も、落ち葉の
少年達は拝殿の方に足を運んだ。そして拝殿の前の階段で寝る事に決まった。
“じゃあ、おやすみ。”
***
どれだけの時間が経ったのだろうか。秋の夜は冷える。寝るには寒すぎる。これでは寝ようにも寝付けない。少年達はただ寝転んで目を瞑っている。
―――シャン、シャン―――
どこからか鈴の音が聞こえる。少年達は飛び起きた。どこから鈴の音が聞こえるのだろう。否、その前にこの神社には誰もいなかったはずだ。少年達は必死に頭を動かす。
「おい、聞こえてるよな、?」
「さすがに聞こえてなかったら僕の耳おかしいよ…」
「噂はまじだったのか…?」
「でもさっき見た時はいなかったよね…?」
―――シャン、シャン―――
―――カサッ、カサッ―――
今度は歩く音も聞こえてくる。鈴の音はどんどん少年達の方に近づいていく。少年達は恐怖で身を寄せ合う。
「ハァッハァッ…」
身を潜めるために息を殺そうと必死なのに、少年達の息は荒くなっていく。
すると、鈴の音が聞こえなくなった。そして目の前にある影が現れた。少年達は恐怖で何も出来ない。ただ少年達の荒い息が聞こえるだけだった。目の前に現れた影はじっと少年達の前で止まっている。1人の少年は恐る恐る影に目を向けた。
(女…?いや、え?)
少年は目を疑った。何故ならば頭部だと思われる所に獣耳らしき形があったからだ。少年は少し、ほんの少しだけ興味を持った。そして、勇気を振り絞って腹を括ったようにその影から伸びる本体を見る。
(き、きつね?)
「おい、ちょ、見上げてみろよ。なんか、き、きつ、ねが…いや、きつねと人間のハーフ?」
小声で少年はもう1人の少年に言った。もう1人の少年も恐る恐る目をあげる。少年達が目にしたのは紛れもない、妖狐だった。腰まで伸びる乱れたボサボサの金髪、破れた着物らしき服、いや巫女?そんなのはどうだっていい。顔は長い前髪で隠れて見えない。ただこれだけはわかる。
―――感情がない―――
少年達はやっとの思いで口を開いた。
「な、なぁ。あんたが噂の…」
そこまで言って固まった。なんて言えばいいのか分からなかったからだ。化け物と言っていいのか?化け物と言ってしまえば、傷ついてしまうのではないか。ぐるぐると考えを巡らす。
「あの、あなたは一体…?」
今度はもう1人の少年が口を開いた。
「………」
妖狐は何も答えない。だからといって、危害を加えようともしない。
すると、妖狐は鈴を持った右手を挙げた。そして
―――シャン―――
鈴を鳴らした。するとどういうことなのだろう。どこから出てきたのか分からない霧は少年達を覆う。妖狐の姿が見えなくなっていく。
「あ、おい!ま、待て!」
少年は声をあげた。少しすると、霧が晴れる。少年達は目を見開いた。村だ。少年達の村が見えたのだ。
「帰ってきてる…。な、なんで?」
「はァ!?」
1人の少年は声を荒らげる。そりゃそうだ。さっきまで山の中にいて、妖狐に会って、鈴を鳴らした途端、霧が自分達を覆って、気づいたら自分達の村に帰ってきていたのだ。
「なぁ、これって…」
「うん。もしかしたら、あの妖狐は僕達を助けてくれたのかもしれないね…」
「じゃあ化け物とか悪い奴じゃねぇじゃん、あいつ。普通に良い奴じゃん。なんであんな悪い噂立てられてんの?」
「……知らないよ。とにかく今日はもう帰ろう。怒られちゃうからね」
「そうだな。じゃ、おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
あの妖狐は一体誰だったんだろうか。その真相は現地に行って自身の目で見た少年達も、誰も知らない―――。
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