最終話 夢物語のような…

涙と雫の見分け方は簡単な話だった。

僕から見て右に立っているのが涙であり左に立っているのが雫だ。

これは二人の癖であり決まった立ち位置に立つのが習慣になっていた。

ただし立ち位置を変えられても僕には理解できる。

彼女らは少しだけほんの少しだけ声質が違うのだ。

涙の方が少しだけ高く雫のほうがフラットに近かった。

そんな少しの違いを探らないとどちらがどちらかもわからないほどに瓜二つな双子なのである。

その違いが分かる僕を彼女らが好いてくれていても何ら可笑しくない。

そんな事を思うのであった。



カンナはきっと兄のような存在として僕を崇めてくれているのかもしれない。

それが純粋な好意だったとしても…。

僕はどうしてもカンナを妹のようにしか思えない。

それがいつか覆るような日が来るのだろうか。

それはまるでわからないことなのである。



最上カレンはどう考えてもムキになっているだけだ。

自分が落とせない相手をどうにかして振り向かせたいだけ。

けれど僕にはそんなつもりがまるで無い。

どんな手を使われようが僕は彼女を好きになることはない。

それだけは断言して言える。



紗絵はきっとこれからもずっと幼馴染として生きるのだろう。

付き合ったことも間違いじゃなかったと思う。

そう断言できる。

紗絵のおかげで僕は自分自身が求めていた恋愛像に気付くことが出来た。

彼女のお陰で理想の人物が誰なのか。

利用したようだが僕自身の本心に気付けたのだ。

そして僕は…。



夏休み。

僕とマイマイは殆どの日をバイトに費やしていた。

二人共朝からシフトに入ってリーダーと三人体制でホールを回していた。

人が増えた分、休憩を取るのもスムーズになり仕事効率も上がったと思う。

バイトが休みの日も一緒だった。

その為、休日は一緒に夏休みの宿題をして過ごしていた。

そんな僕らはいつしか恋人となっていた。

自然な流れで数少ない言葉のやり取りで。

僕らは自然に流れるように恋人となった。

それはキスなどの行為があったためだ。

「付き合って」

「いいよ」

そんな短い言葉のやり取りだったが僕らは確実に心で通じ合っている。

マイマイは束縛もないし自由を尊重してくれる。

不自由さを感じない僕らだったが自然と毎日のように一緒に居たかった。

一緒にいられない日は寂しかったし辛かった。

しかし再会できたら僕らはお互いの存在を確かに感じていた。

夢物語のようで申し訳ないが…。

僕とマイマイはいつまでも一緒に過ごすのであった。

                完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

束縛の激しい幼なじみの恋人に振られた途端…昔可愛がっていた後輩が再び懐いてきた。後輩は束縛もないし自由を尊重してくれる全肯定女神だった件 ALC @AliceCarp

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ