第4話他にも後輩
仲の良かった後輩が一人だけと言ったつもりはない。
中学の頃、僕らは同じ部活動に所属していた。
男女共同で入れるような部活動はあまり存在していなかった。
中学には文化部のような教室内で過ごす部活動は無く。
外で体を動かす部活動しかなかった。
尚且つ強制的に入部しなければならなかった。
僕らは陸上部に所属していて放課後は走って汗を流していた。
大会でもない限り男女は揃って部活動に励んでいた。
その中で僕と紗絵とマイマイは仲良く過ごしていたと思う。
しかし部員は僕らだけではないわけで…。
それを快く思っていた人もそうじゃない人もいたと思う。
特にマイマイと一緒にいる時に僕らの下へとやってくる後輩女子がいた。
「マイマイ…丈先輩。また二人で…何しているんですか?」
「カンナちゃん!見てみて!先輩の記録!自己ベストだって!」
「そうなの?たしかにさっきのは早かったけど…」
後輩女子のカンナは記録表を覗き込むと僕に柔らかな笑みを向けてくる。
「凄いですね…頑張ったの…偉いです…♡」
優しい声音に僕は少しの擽ったさを感じながら素直にそれを受け入れていた。
そんなやり取りが部活中にいくつかあったと思われる。
今回はそんなカンナの話…。
「先輩!おはようございます!」
登校中に声を掛けられて後ろを振り返るとマイマイは僕のもとに小走りで向かってくる。
「おはよう。今日も元気だね」
「はい♡先輩に会えたのですぐに機嫌が良くなりましたっ♡」
「大げさだよ」
他愛のないやり取りを繰り広げて校舎までの長い道のりを歩いて向かう。
「一年の校舎はこちらなので。ここで失礼します。また昼休みか帰りに」
マイマイは途中で僕と別れるとそのまま一年生の棟へと足を運んだ。
僕も二年生の棟へと向かっているのだが…。
「丈先輩…お久しぶりです…」
静かな声だが聞き覚えのある優しく耳心地の良いそれが脳内に響いて僕は顔を綻ばせた。
「カンナちゃん。久しぶり。同じ高校なんだね」
「はい。マイマイが丈先輩と同じ高校を受験すると言っていたので…私も頑張りました」
「そっかそっか。目標を達成して偉いね」
「えへ…ありがとうございます。丈先輩に褒められて嬉しいです…♡」
「そうかな。昔はカンナちゃんが僕を褒めてくれたよね。何かしらの記録を出したりするとさ」
「あ…覚えていてくれましたか…」
「忘れるわけ無いよ。カンナちゃんが褒めてくれるのが嬉しくて頑張っていたところもあるんだから」
「そうだったんですね…知りませんでした…今になって聞けて…嬉しいです…♡」
「こっちは二年生の棟だけど?遠回りにならない?」
「良いんです。教室に居てもまだ馴染めていないので…先輩と遠回りして行きます」
「そう。マイマイとは別のクラスなの?」
「そうなんです。私は一応スポーツクラスに配属されたので…」
「そうなんだ。部活には所属したの?」
「いえ。面接の時に陸上の話をしたんです。そうしたらスポーツクラスに配属されていて…高校ではやる気ないんです…」
「そう。いつでも声かけてよ。僕も見かけたら話しかけるから」
「はい。ありがとうございます。やっと学校で話せる人に出会えて…嬉しいです…♡」
「僕も話せる後輩が二人も居て良かったよ」
「二人だけじゃないと思いますよ。陸上部の娘は結構ここに入学しているので…」
「そうなんだ。僕に話しかけに来るかな…」
「多分…その内、訪ねてくると思いますよ」
「そっか。教室見えてきた。ここで別れるけど…大丈夫そう?迷子にならない?」
「小さい子供じゃないんですから。ではここで」
そうして僕とカンナはその場で別れると僕はクラスへと向かうのであった。
放課後にマイマイへ尋ねたところ。
中学の後輩の多くは僕の通う高校を第一志望に設定していたようだ。
その理由は定かでは無いが…。
とにかく陸上部だった女子生徒は僕らの通う高校へと多く流れ込んだようだった。
ここから後輩女子を巻き込んだ恋愛物語は始まるようだ。
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