第2話幸福な日々が続きそうだ

「マイマイは中学の最高学年で恋人出来た?」

世間話程度の話題を繰り広げながら僕らは帰路に就いていた。

「いえ。全然」

「告白とかされただろ?マイマイは小学生の頃から人気があったかたら」

「何度か。でも全部断りました」

「どうして?そういうのに興味なかった?」

「そうじゃないですけど…私には心に決めている人が居るので」

「ふぅ〜ん。なんだか真剣なんだね」

「そうですよ。相手はまるで気付いていないみたいですが…」

「そうなのか?鈍感なやつなんだな」

「そこも良いところです」

「本当に全肯定女神だ…」

「ふふっ。そう言ってくださって嬉しい限りです」

「僕はしばらく一人が続きそうだよ」

「私が居るじゃないですか」

「居てくれるの?」

「もちろんです♡」

「ありがとう。そんなマイマイには飲み物奢ってあげよう」

「やったぁ〜♡」

そうして僕らはコンビニへと入店するとドリンクコーナーへと向かう。

「なんでも良いよ。何なら少し高いのでも」

「ホントですか?じゃあこれで」

椚舞は少しだけ値が張るカフェオレを手にするとカゴの中に入れた。

僕も喉が乾いていたのでお茶を手にするとそのままカゴに入れてレジへと向かうのであった。



コンビニを出て近くの公園に向かう僕らは周りから見たらカップルのように映るかもしれない。

ベンチに腰掛けて今にも散りそうな桜を眺めていた。

今の状況が心地よくて仕方がない。

無言でも窮屈さを感じない今の瞬間が好きだった。

紗絵と付き合っていた頃。

僕は無理に話題を探していたようにも思える。

相手に気を使っていたり機嫌を損ねないように退屈させないように十二分に配慮していたことだろう。

だが今の僕は違う。

マイマイと一緒にいる時の僕はきっと自然体なはずだ。

それがどうしてかは今はまだわからない。

後輩で年下だから気兼ねなく接することが出来ているのかもしれない。

自分の心に浮かぶ感情の正体に名前をつけることは困難だった。

名前のない感情に僕は頭を悩ませることもなく。

今の状況を精一杯に満喫している。

その様に感じた。

ふと隣に座るマイマイを覗き込むと彼女も自然体の表情で桜を眺めている。

もしかしたら彼女も僕と同じ様な事を思っているのだとしたら。

それは嬉しいことだ。

自然と笑みが溢れて孤独じゃない今に感謝をした。

もちろん今を共有してくれているマイマイに一番の感謝を抱きながら僕らの何でもない日常は進んでいく。

僕にとって幸せに感じられる日々がこれからまた始まろうとしていると思うと不思議と胸が高鳴った。

「ありがとうね」

不意に感謝を告げる僕にマイマイは不思議そうに首を傾げる。

「いや…また僕のもとに帰ってきてくれて」

「当然ですよ」

そんな短いやり取りだったが僕らは再び心で通じ合っているような感覚がした。

「これからだって…ずっと一緒です」

「そう…ありがとう」

再びの感謝にマイマイはくすぐったそうに微笑むだけだった。

飲み物を片手に公園のベンチで桜を眺めながら時間だけがゆっくりと過ぎていこうとしている。

「こういう時間は良いですよね」

マイマイは僕の方を向くと優しい笑みを向けてくる。

「そうだね。心が落ち着くよ」

「ですね。先輩と一緒なら尚更です」

「僕もだよ」

そうして僕らの放課後は過ぎていき夜を迎える前にお互いが帰路に就く。


また明日からもマイマイと僕の日常は続くのだろう。

それを心待ちにしながら本日はベッドに潜り込むのであった。

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