「重すぎて、その髪ではできぬか」

「あの人はどうなるのですか」

「さて、わからぬ。しかしあなたは、髪が切れて、落ちずに済んだ」

 神は女を見下ろした。女はなにも答えなかった。

「そんなにも望むなら、次は切れぬよう、生んでやろう」

 神は女を飲みこんだ。飲み込んだ腹を虫がかぶった。腹を割ると一匹の蜘蛛がそこから這い出てきた。蜘蛛は翡翠ひすいのような色をした蓮の葉の上に飛び乗ると、美しい銀色の糸を紡ぎ出した。

「つぎは、切れぬとよいですが」

 神は腹を押さえながらそう言った。紡がれた糸のことは、いずれ誰かが話すことだ

ろう。そう神は考えた。

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