二
目を覚ました女のまえに、白い白い神が立っていた。座ったままでは女が居られぬ
ほど美しかった。女は赤くなった。
「哀れ、ですね」
神は声と涙と
「お待ちください、私は少しも哀れではありません」
「話を聞かずとも、分かります」
神は両手を胸に当てた。女が自分の子を失った時のように。
「お待ちください、泣かれては頭に血が上ってしまいます。そもそもなぜ私が哀れな
のです」
「わからぬから、ここに、いるのですね」
はてと女は今更ながら思った。
「こことはどこでしょう?」
女は黒く艶のない髪を指で
「あなたのいた、場所よりも、ずっとずっと、上の上です」
指で女の頬をなぞりながら神はそう言った。女の赤くなった顔の熱さが白い指にぽ
ぽっと流れた。それを感じた神の白い顔から色のない涙がつつっと
「哀れ、ですね」
「お待ちください、お願いですからかえしてください」
「かえせ、と言われたところで」
神は顔を逸らして周りを見た。女はその目の先を追った。四つの目玉は周りを囲む、
「もどすことなど出来はしませんよ」
神はかなしそうにそう言った。
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