第25話 アルラウネ娘の限界レシピ

 異世界転移できるらしいけど、お前らどうする?


 311:1 ID:oThErwOrlDy

 なあお前ら

 琥珀の判別方法って

 ①塩水に漬けて浮かぶ

 ②アルコールで拭いてもベタベタしない

 ③ライターで炙った針金を押し付けてきつい匂いがしない

 であってる?



 313:名無しの冒険者 ID:********

 >>1 おかえり

 異世界で琥珀買ったの?



 314:名無しの冒険者 ID:********

 >>1 鑑定魔法みたいなの異世界にありそうだけどな



 316:名無しの冒険者 ID:********

 >>1 おつ

 琥珀の見分け方はあってる

 ①で沈んだらプラスチック

 ②でアルコールに溶けてベタベタになったら若いコーパル

 ③で変な匂いがしたらプラスチック



 318:名無しの冒険者 ID:********

 琥珀の真贋判別って昔は重さとかでやってたんじゃないかな

 コーパル(若い琥珀)がアルコールで溶けるとか昔は全然知られてなかったから、コーパルと琥珀って全然見分けがつかなくて大変だったって聞くけど



 321:名無しの冒険者 ID:********

 琥珀はまあ、昔は同じ重さの金と交換されたとか言われてるもんなあ

 翡翠とか真珠と並んで、琥珀は古代から宝石として扱われてきたわけで

 昔バルト海の神様は琥珀の城に住んでるという言い伝えがあったぐらい琥珀は有名な宝石



 324:名無しの冒険者 ID:********

 異世界に琥珀売りつけたほうが儲かるんじゃね?



 326:1 ID:oThErwOrlDy

 >>321

 そんな言い伝え地球あるの?うちの剣闘士の子も同じようなこと言ってたわ

 >>324

 同じこと考えたけど、流石に琥珀販売はやりすぎかなと思って自重してる

 お偉いさんに目をつけられて殺されたくないから、貴族とか有力市民には賄賂用に琥珀を送るぐらいにしようかなと



 327:名無しの冒険者 ID:********

 サンクト・ペテルブルクのエカテリーナ宮殿みたいに、琥珀だけで出来た部屋を作って王侯貴族にプレゼントしたら大層気に入られるんじゃないか

 多分それだけで異世界で一生遊んで暮らせるぐらいの恩賞をもらえるんじゃない?



 330:名無しの冒険者 ID:********

 異世界って迷宮あるから、未知の宝石とかいっぱいありそうなんだよな



 332:名無しの冒険者 ID:********

 琥珀の真贋ってなんで必要になったんだろうな

 何か新しい商売でも思いついたのか?

 ひよこ鑑定士みたいな感じで、琥珀鑑定士みたいな仕事でも見つけたのかね



 334:1 ID:oThErwOrlDy

 >>332

 実は新しい魔術を勉強するのに琥珀が必要なのだ



 335:名無しの冒険者 ID:********

 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!



 337:名無しの冒険者 ID:********

 魔術チート俺TUEEEE展開待ってた



 339:名無しの冒険者 ID:********

 ちゃんと魔術使ってるところの動画うpしろよ



 341:名無しの冒険者 ID:********

 お前ら魔術大好きだな



 344:名無しの冒険者 ID:********

 俺も魔術使いたい!

 >>1 琥珀買えばいいんだな?






 ◇◇◇






(琥珀って、嚙んでみるとなんだか砂っぽいんだな。初めて知った……)


 こんなじゃりじゃりしたものを飲んでいいのか、と急に不安になるが、もうここまで来たら飲むほかない。

 じゃりじゃりの琥珀をすり潰して自分の血を少量垂らして混ぜた、謎のお酒。お世辞にも美味しいとは言えなかった。だがこれも、琥珀を身体に馴染ませるために必要な儀式である。


(ちょっとこれは、動画ネタには使えないよなあ……)


 流石にこんな怪しいものを飲んでいる様子は、動画の投稿ネタに向いてないので撮影するのは辞めた。


 代わりといっては何だが、アルルが『豚バラともやしとめんつゆと梅肉をレンジでチンするだけ』という超簡単レシピに挑戦するという動画を撮影し、今日の分の撮れ高を確保する。

 動画投稿は継続することが肝要である。収益化できてないとはいえ、短いスパンで投稿を試すことが重要なのだ。


 白ごまや刻みネギを加えるとおしゃれになる、ラー油を垂らすと味変にぴったり、お好みでガーリックチップを散らすのもおすすめ、大根おろしにポン酢を垂らしてこの豚肉で巻いて食べると最高に旨い。そんな、男の一人暮らしにも即座に使えそうな応用レシピが早速出来上がった。

 最初のレシピを教えた以外、特に俺は何もしていない。アルルが独りでにレシピの応用を考え出したのだ。


 白ごま、刻みネギ、ラー油、ガーリックチップ、大根おろし。

 全部、アルルの編み出した発想である。


(へえ……こいつはいいや。もっとアルルに色んなレシピを教えようかな。で、こんな感じでちょっとずつ彼女なりに改変してもらったら、食事のレパートリーも増えるだろう)


 豚ともやしの梅肉蒸しを美味しく食べながら、俺はそんなことを考えていた。

 実際、刻みネギと大根おろし以外は常備できるものばかりである。刻みネギも準備にさほど手間がかかる訳ではなくパックで売っているし、大根おろしもチューブ状の既製品がスーパーに売り出されている。

 そう考えると、この料理のハードルは非常に低い。


(全然手間がかからなくて美味しい"限界レシピ"系って、競合が多いレッドオーシャンの領域ではあるんだけど、バズりやすいネタなんだよな。ちょうどいいし、彼女にはその路線を伸ばしてもらおうかな)


「あら~、全部食べたんですね~。お代わりありますよ~?」


 ほわっとした柔らかい声。

 アルラウネってみんなこういう喋り方なんだろうか、なんてことを思いながら、俺はついついお代わりを頼んでしまった。


(こういう短めのレシピって、TicTocやInsightamに投稿しやすいしバズりやすいのがいいよな)


 豚こま肉と野菜とコンソメ根粒と豆乳をレンチンするだけ豆乳スープ。

 コンビニで買ったポテサラに溶けるスライスチーズを乗せてオーブンで焼くだけチーズポテト。

 アボカドとツナをわさび醤油で混ぜただけサラダ。


 そういった楽ちんで美味しい料理のレパートリーをどんどんアルルに教え込む。

 ゆくゆくはこれをAmazing Candleの電子書籍で出版してもいい。レシピ本は話題性が一番大事である。

 料理の映える写真を撮りながら、俺はそんな新しい金儲けの準備をちゃくちゃくと進めるのだった。

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