第22話 親子との時間をごゆっくり

「いえいえ……大丈夫ですよ。 寧ろ、帰ってきたらばかりなんですから、ゆっくりとした時間を親子で過ごして下さいね」


 そう豪の方は笑顔で言うと、慧の方も本当に豪が心から言ってくれているのが分かっているからなのか、豪に向かって微笑むのだ。


「晩御飯出来ているので、後はお二人でごゆっくり食べて下さいね。 お父様も帰宅してこられたようですし、そろそろ帰らせて頂きますから」


 笑顔で言う豪。 それに答えるかのように慧の方は、一旦、琥太郎の事を下ろし、


「今日は琥太郎の事、ありがとうございました。 また、明日以降も宜しくお願いします」


 頭を下げて心から言う慧。


「いえいえ、全然、こちらの方はお仕事でしているので、気にしないで下さいね」

「でも、お礼の言葉は普通かと思いますしね」


 確かにそこは慧の言う通りなのかもしれない。


 人間してもらったことにお礼を言う。 それは本当に人間として当たり前なことだろう。 しかも慧の家は母親がいなくて、しかも父親の方は本当に琥太郎が言うようにドジだ。 だから豪がここに来るまでこの家というのは、散らかり放題だったのだけど、豪のおかげで綺麗になったのは間違いない。 それに人にやってもらったのだからお礼は当たり前なことで、そこを遠慮する必要というのはないのかもしれない。


「あー、確かに、そうですね」


 そこで再び笑顔を見せる豪。


「あー、もう、帰っちゃうんですよね? ほ、本当に家の事、ありがとうございました。 琥太郎の保育園は大丈夫でした?」

「あ!」


 豪の方は帰宅しようとエプロンを外しかけていたのだが、確かに夕飯を作って、「はい、さようなら」とはいかないようだ。 伝えておかないといけないことはあるのだから。


「あ! そうですね……とりあえず、ご飯の方は冷めてしまいますので、ご飯を食べながらでも話しても構わないでしょうか?」

「あ、そうですね……。 確かに、せっかく作って頂いたのに冷めてしまいますからね」


 琥太郎も慧も豪も一旦リビングテーブルの椅子へと座ると、


「実は、今日は琥太郎君は保育園の方はお休みさせてしまったんですよ。 朝、自転車を借りようかと思ったんですが、もう、何年も使われてないようだったので、埃が被ってたんでね」


 そこで、豪の方は一旦言葉を切ると、話を続ける。


「そこで、琥太郎君に聞いたんです。 今日は、保育園行くのか行かないのか? というのをね。 そしたら、行かないっていうことだったので、本日は保育園の方を休ませて頂きました」

「あ、そういうことだったんですね。 それで、豪さんは、琥太郎の面倒を見ながら家事とかってやってくれていたということなんですかね?」

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