第21話 パパの靴が濡れてしまうんだけど?!
「え? ここから上がっちゃったら……パパの靴可哀想なことになっちゃうんじゃないのかな?」
そこまで言うと琥太郎の方は首を傾げるのだ。
「え? 何で?」
そう子供なのだから、全く分からないという純粋な気持ちで聞いているように思える。
「だって、もし、雨が降ってしまったら、パパの靴はどうなっちゃう?」
とりあえず会話を広げる為なのか、慧の方は先ずは答えを出さずに琥太郎に問うてみることにしたようだ。
そこでちゃんと首を傾げてまで考えている琥太郎。 きっと今まで慧はこうやって琥太郎に考える力を与えて来たのであろう。 先ずは大人が答えを出さずに子供に考えさせる。 そうすれば、考えなきゃいけないのだから、考える力を与えられるということなのかもしれない。
「んー、そうだねぇ。 パパの靴が濡れちゃって、明日履けなくなっちゃうよねぇ。 でも、いいじゃん! 靴が履けなかったら外に行かなくてもいいんだからさぁ」
そこは子供なりにパパと一緒にいたいという気持ちなんだろう。
「だけど、パパはお仕事に行けないと、お家とかご飯とかって食べられなくなっちゃうよー。 それでいい?」
「あー、それは……ダメなのかな?」
とそこは自信無さげに答える琥太郎。
だってそこは琥太郎からしてみたら、想像でしかないのだから、分からないところだ。
「とりあえず、パパがお仕事に行けないと琥太郎は嬉しいのかもしれないけど、お家もご飯も食べられなくなっちゃうからねぇ……分かったかな? お金が無いと食べ物も買えないだろ?」
「うん!」
きっと今の話で琥太郎くらいの歳だと、少しの部分しか理解出来てないのかもしれない。
とりあえずは琥太郎の方は今の話で納得したようで、
「じゃあ、パパは外から玄関に向かってねぇー! 僕の方は中から玄関に向かうからぁー!」
「よーい、ドン!」と言わずに琥太郎の方は玄関に向かって走り始める。 その後慌てたように慧の方も走り始めるのだ。
とりあえずどちらが勝ったのか。 っていうのは分からないのだが、慧が帰宅して来てからの微笑ましい親子に出来上がった料理をテーブルへと運びながら微笑む豪。
それから二階へと上がる足音を聞きながら、暫くしてから今度階段を降りる音まで聞こえて来たのだから、もう直ぐ二人はリビングへとやって来るだろう。
慧は琥太郎の事を抱っこしながらリビングへと入って来る。
「スイマセン。 お待たせしてしまって……」
そう言う慧は本当に、申し訳ないという気持ちが伝わってくるような感じで言うのだ。
本当、言葉というのは心から言うのと、上部だけで言ってるのとでは全然違う。 やはり心が籠った言い方だとこっちまで気持ち良くなれるのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます