第17話 まだまだ、言葉足らずなお年頃

 そこで琥太郎は、頷きながら、


「うん! 分かった!」


 と子供らしく大きな返事をすると、再び自分の玩具が置いてある部屋へと向かうのだ。


 今日は豪からしてみたら、この家での仕事というのは初日。 だけど朝から色々なことがあったような気がする。


 訪問に来た際には色々な大きな物音に、そこで慌てて部屋へと入ったら、慧達親子に強盗扱いされ、危なく警察を呼ばれるところでもあった。 そういう強面な顔をしているのだから、初対面の人には確かに強盗だとか指名手配犯とかに思われても仕方がないのだけど、先ずは順番というのが違ったのだから、そこが仕方がないだろう。


 それからは早速仕事があって、慧のお子様である琥太郎君のことを保育園へと送って来ようと思ったのだが、自転車が埃を被ってしまっていたこと。 きっと母親が死んでからまたは居なくなってしまってからは完全に使用されてなかったのであろう。


 そこで豪は琥太郎に問うてみたのが、『今日は保育園に行くのか? 行かないのか?』だった。


 そう問うてみたところ、今日は保育園に行かない。 ということだったからなのか、豪は今慧の家で琥太郎と二人きりで居るということだ。


 そして琥太郎が一人で遊んでいるうちに、琥太郎曰く「パパが床を汚したり散らかしているんだ」ということを聞き、確かに子供が汚したような床の有様では無いことも分かり、早速、床を綺麗にし始めた豪。


 それからは通常の仕事というのか、洗濯に食器洗いに掃除にと今日の仕事こなして来た豪。


 だが今日はあっという間に夕方になっていたようにも思える。


 一日が早く終われるということは、今日という日は本当に忙しかったのであろう。


 人間ってそういうもんなのだから。


 暇な時間を過ごしていると、時間というのは過ぎるのが遅く感じてしまうもんだ。 だがこれが一日中忙しいと時間というのはあっという間に過ぎて行くもんなのかもしれない。


 豪は今日一日の仕事で息つく暇もなく、洗濯物を取り込もうと、庭へと足を向ける。


 その頃には、その日一日の仕事を終えようと夕日が沈んでゆく姿を見上げるのだ。


 夕日を見ると人間ホッとするのは何故なんだろうか。


 今日も一日平和に終わったと思えるからなのであろう。


 確かに世の中はいつも何かが事件や事故は起きているのかもしれないのだけど、こう自分の中では平和に終わったと思えるからなのかもしれない。


 豪は洗濯物を手にし、部屋へと戻って行く。


 すると琥太郎が豪の元へとやって来て、


「ねぇ、パパとは、やっぱり違うね」


 と言うのだ。


 そこで豪の方はその琥太郎の言葉に首を傾げる。


 まだまだ言葉足りずな琥太郎。 まだまだそこが仕方がないところだろう。


 琥太郎の年を考えれば、言葉足らずなのは仕方がないのだから。

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