第16話 寝るのが怖いんだけど……
「え? 何で!?」
そう驚いたような感じで聞く豪。
「だってさ……」
琥太郎は豪のことを見上げ、
「……怖いんだもん」
豪のことを見上げて来たのだから、やはりまだ琥太郎は豪のことが怖いんであろう。
「あ、そうか……まだね、琥太郎君はおじさんのことが怖いんだねぇ……」
苦笑いをしながらも琥太郎の言葉を察し答える豪。
そんな豪の言葉に琥太郎は元気よく頭を頷かせるのだった。
豪の方はそんな子供の素直な頷きに納得はするものの、気持ち的に少しヘコんでいるようにも思える。
確かに自分は強面な顔はしている。 だから初めて会った子供というのは完全に警戒されてしまうのは分かっていることなのだが、こうハッキリと言われてしまうと流石に流すことは出来ないようだ。 そこまで豪だってメンタルは強くないということだろう。
だけど今までの経験上、毎日のように子供と顔を合わせてれば、子供の方も豪の方に慣れて来て、笑顔を見せてくれるのは豪の方も良く知っている。
そう未就学児くらいなら、いずれ慣れてくると顔で判断しなくなってくるからだ。
未就学児というのは、顔より心を見ている方が多い。
簡単に言えば、見た目で判断しないということだ。
これが小学校高学年ともなってくると、先ずは顔で判断をしてくる。
本当にそれになって来ると豪からしてみても厄介なのだから。
だけど未就学児というのは逆に残酷なところもあるのも特徴だ。
大人のように言っていけないような言葉というのは分からない。 だからなのか寧ろ言葉なんかは心に思ったことをストレートに言うのだから、いきなり心に刺さってしまうようなことを口にしてしまうということだ。
今さっきだって琥太郎は、一応、豪のことを気にしながらも、『怖い』という言葉を口にしていたのだから。
だけどそこで豪はめげている場合ではない。 とりあえず今日は琥太郎は家で昼寝をしないということを言っているのだから、そこは何とかしないとならないだろう。 だからなのか、
「んー、じゃあ、琥太郎君は昼寝しなくていいの?」
と優しく問うのだ。
「んー、しなくていい……」
「そうか……分かったよ。 私の方は別に無理して寝る必要は無いと今は思っているからね。 だけど、もし、琥太郎君が私に慣れて来たと思った時には昼寝はした方がいいんだよ。 だって、子供のうちは沢山寝た方が大きくなれるんだからさ」
こう優しく丁寧に子供に分かりやすく説得する豪。 豪の仕事は家政夫なのだから、家の仕事はやる。 要は代理の母みたいな人なのだから。 母親みたいなこともするということなのであろう。
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