第14話 抱っこしてもいい?
琥太郎は豪の声に一瞬手を止め首を傾げたのだが、玩具をその場に置いて、テクテクとした足取りで豪がいるリビングテーブルへと向かうのだった。
すると豪は、
「いつも琥太郎君は何処の席に座ってるの?」
と優しく声掛ける。
テーブルの上を覗き込むようにして見ている琥太郎なのだが、まだリビングテーブルよりやや小さめの身長なのかどうやらテーブルの上までは見えてないようだ。
「ココ! ココでいい!」
リビングテーブルのお誕生席側にある子供用の椅子を叩いて言う琥太郎。
流石の豪もその席には気付いていたのだが、まだ心許してない琥太郎をいきなり抱き上げる訳には行かず、そう声掛けたという方が正解なのかもしれない。
きっと今の琥太郎のサインで豪が琥太郎の事を抱き上げてもいいという事だろう。
「琥太郎君、じゃあ、私が琥太郎君の事を抱き上げて椅子に座らせて上げてもいいのかな?」
そう優しく問う豪。
その豪の問いに琥太郎の方も「うん!」と頭を頷かせるのだ。
そこに豪の方は安堵すると琥太郎の事を持ち上げて椅子へと座らせる。
ここまで来ると琥太郎の方は大分豪に懐いてきてくれているという事だろう。
本当に警戒している子というのは、親以外の人と話もしなければ抱っこなんてさせやしないのだから。
琥太郎の方は椅子に座った途端に目の前にあるお子様ランチに目を輝かせるのだ。
「わぁー! 本当に作ってくれたんだね! すっごい! すっごい! 本当のお子様ランチみたーい!」
そう手を叩いてまで琥太郎は喜んでくれているのだから、豪の方も作ったかいがあったという所だ。
豪の方は普通の大人用の椅子に座って手を合わせると、子供の手前もあるのか、
「いただきます」
と言うのだ。
いや豪の性格というのか、こういう仕事をしているからなのか、やはり各家庭お子様が多い。 だからなのか勝手に癖ついて来た事だ。 大人になるとこういう当たり前の事が出来なくなってしまってきているのだが、豪の場合にはその行動自体が当たり前になって来ている。
すると琥太郎の方も豪を見てなのか、それともやはりご飯の前には「いただきます」ともう言っている年なのであろう。 ちゃんと手を合わせて食べ始めたのだから。
しかし流石にまだ会ったばかりの二人の間には会話がないようだ。 だからなのか静かに食べている。
これがもし親子という関係だったら会話とかあるのであろうが、まだ二人の間には会話がなかった。 それに琥太郎の方はもう一人で零さずに食べていたのだから。 親がドジっ子だからなのか子供の方はしっかりとしているようにも思える。
そこは親の影響というのか、この家に関しては反面教師というのか、もしかしたら慧がドジばっかするもんだから琥太郎の方はしっかりとしているのかもしれない。 それに一人っ子の場合、親に負担を掛けまいと思っているのか、わりとしっかりしている子の方が多いという事だろう。 いつの間にか身に付いてしまっているのは『自分でやれる事は自分でやる』という事なのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます