第9話 嵐の前の静けさ!?

 とりあえず掃除は上からというようにダイニングテーブルから取り掛かる豪。 お皿は流し台の方へと置き粉物はある程度、箒で掃き残りはふきんで綺麗に拭く。 確かに簡単な事ではあるのだが、これが毎日となると拭くのさえも飽きてきてしまって最終的には諦めてしまうのかもしれない。 だから慧は途方に暮れて家政夫を雇う事にしたのであろう。 そう考えると納得だ。 そして豪はテーブルも上を綺麗にするとひと息吐き、とりあえず保育園を休ませてしまった琥太郎の様子を見に行くのだ。


 さっきまでは玩具箱から玩具を出し大人しく遊んでた琥太郎。 少なくとも豪がテーブルの上を綺麗にしている間に数十分は過ぎていただろう。 子供というのはたまに様子を見てないと思ってもないような事をする。 壁に落書きをしてみたり、床を玩具でいっぱいにしてみたり、どっかに隠れてみたりしてしまうもんだ。


 そう自分一人じゃつまらなくて親の注意を引く為に悪戯というのはするもんなのだから。 子供の事を放ったらかしにしておいたら悪戯されてしまうという事だ。


 リビングの向こうに一つ部屋がある。 一つ敷居を跨いだ先にだ。 多分ここの引き戸はリビングと部屋とを分ける引き戸が本来ある場所なのだろうが部屋を広く使う為になのか、ここにはその引き戸はない。 だから豪は敷居を跨いで琥太郎の様子を見に向かう。


 そこに見えたのはさっき同様に何かヒーローのフィギュアを持って戦いごっごをしている琥太郎の姿だった。


 そこに安堵する豪。


 やはり琥太郎というのは一人っ子だからなのか、一人遊びというのは得意なようで一人二役をしながらヒーローのフィギュアで遊んでいた。


 そんな琥太郎に豪は再び琥太郎の身長へ合わせしゃがんで聞いてみる。


「いつも琥太郎君はそんな事をして一人で遊んでるの?」

「だって、パパはお外でもお仕事しているけど、お家帰って来てからもお仕事してるからね……」


 その琥太郎の言葉に首を傾げる豪。 だってそうだろう。 琥太郎の『お仕事』という言葉だけでは、『家事』の方を指しているのか? それとも本当に会社の仕事を持ち帰って来て仕事をしているのか? というのが分からないからだ。


 だが、まだそんなに強く琥太郎に対して豪は聞ける訳もなく、


「そっか……パパは家に帰って来てからもお仕事で忙しいんだね……」


 と言いながら豪はその場に立ち上がる。


「だからねぇ、僕とはあんまり遊べないんだよ……」


 そう琥太郎はその場に立ち上がる豪の事を切なそうな瞳で見上げるのだ。


 確かに子供なのだから、まだまだ大人よりかは言葉は足りないくて伝わりにくいのかもしれない。 だけど、その分、大人とは違い純粋で行動には出てしまっているという事だろう。

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