第5話 遅刻しちゃう!?
そう豪は琥太郎に頼るように言うと、琥太郎は返事せずに言ってしまったようだ。 そういう所を見ると、まだ絶対に琥太郎は今の出来事を誤解しているという事だろう。
そこに豪はため息を吐きながらも、慧の方に視線を向ける。
「スイマセン……ホント、朝からバタバタとしてしまって……」
その慧の言葉に豪はムッとすると、
「さっきも言ったでしょう。 立川さんは私に対して遠慮する事はないって……。 既にそこが遠慮してるんですよ……」
「あ……」
今の豪の言葉で慧も分かったのであろう。 そう思わず「あ……」と言ってしまっていたのだから。
すると今度は階段を大急ぎで上がって来る人物がいた。 きっと琥太郎が慧の為に保冷剤を持って来てくれたのであろう。 案外、早かったのかもしれない。
「ねぇ!」
そう琥太郎は豪の方に向かってそう声を掛ける。 子供とはそういうもんだ。 しかも豪とは今日会ったばかりで名前もまだ覚えてないのだから余計になのかもしれない。
「ん?」
豪は琥太郎の視線に合わせ、しゃがみ込むと、さっき頼んだ保冷剤は持っていなかった。 とりあえず叱るとかではなく琥太郎の話を聞いてみようと豪は琥太郎の方へと耳を傾ける。
「ねぇ! 冷蔵庫の場所は分かるんだけど、僕じゃ、そこまで届かないんだけど!」
それを聞いて、豪は手を叩くと琥太郎が保冷剤を持って来れなかった理由が分かったようだ。
「じゃ、琥太郎君……私に冷蔵庫の場所を教えてくれないかな?」
「うん!」
そう豪の言葉に琥太郎は大きな声で返事をすると、「僕の後に付いて来て」と言ってるかのように先に階段を降りて行くのだ。 それに付いて行く豪。 そして琥太郎に案内されて冷蔵庫のある場所へと向かうと、豪は冷蔵庫の扉を開けて保冷剤を探すのだった。
豪はこういう事には慣れている。 そう今までだって豪というのは、家政夫の仕事をしていたのだから他の家庭の内部事情は知っていた。 だが部屋の中がこんなにも荒れているのは慧の家が初めてなのかもしれない。 しかもこの家の場合には子供が散らかしたのではなく、父親が散らかしたというのだ。 きっと何をやっても何かこうやらかしてしまうのであろう。
とりあえず保冷剤を探し出すと、今度は琥太郎にタオルの場所を聞き、保冷剤をタオルに包んで二階にいる慧の場所まで急ぐのだ。
そして豪が慧にその保冷剤を渡した瞬間だっただろうか、
「ねぇねぇ! 早くっ! 九と十二の所に時計の針が来ちゃってるよー!」
その琥太郎の言葉に豪は自分がしている腕時計の方に視線を移す。
「あー!!」
と叫んだ後、慧の方に視線を向けて、
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