第4話 え?チューしてる?

 そして豪は今何かを考えていたのか、その考えていた事を払拭するかのように頭を一旦振ると現実へと戻って来たのか、慧の事を見つめ、


「立川さんはこういう事、当たり前のようですが、私というのは、今は貴方方の家政夫です。 なんて言うのでしょうか? 家政夫なので家人の心配や怪我なんかもサポート出来たらとも思っていますからね。 ですから、自分から言うのもなんですが、他人とは思わないで頂ければと思っております。 要は遠慮せずにっていう事ですかね……。 家族ってそういうもんじゃないんですか? こう遠慮せずに物事を言ってみたり、遠慮せずにやりたい事をやってみたり出来るのが家族だと思うのですよ。 だけど勘違いしないで下さいね。 立川さんはここの家主さんなんですから、遠慮しないでいいんですが、私はただの雇われの身なので立川さんに対しては色々と遠慮させてもらう事はございますので……」


 そう豪は慧に言うと、豪は豪なりに慧に向かって笑顔を向けるのだ。 それに納得したのか慧は、


「……ですね。 分かりました。 これからは武蔵野さんには遠慮しないようにすればいいんですね」

「はい、私の方はそれで大丈夫ですよ……。 それで、今立川さんがぶつけてしまった場所というのは?」


 と早速、豪は慧にさっきぶつけた事について聞いているようだ。


「あ、え?」


 慧はいきなり振られた事で一瞬戸惑いを見せたのだが、今さっき豪が言っていた言葉を思い出したのか、


「右の額の部分です」


 そう素直に答える慧。


「スイマセン……触れさせてもらいますね」


 慧より豪の方が背が高く、豪は少し身を屈めながら慧が痛みを訴えている所を見ているようだ。 確かに慧の言う通り右のある部分が赤くなっている。


「ココですか?」


 そっと触れてみる豪。


 そんな姿を琥太郎が豪の背後から見ていたようで、


「ちゅーしてるの!?」


 と急に琥太郎は大声を上げるのだ。 きっと豪の後ろにいた琥太郎からはそう見えてしまったのであろう。


「あ、いや……そ、そういう訳じゃないよ……っ!」


 そう豪は琥太郎の方に視線を向けて慌てたように否定したのだが、どうやら誤解しているようだ。


 琥太郎は目を丸くして慧と豪の事を見ているのだから。


「あー、違うって! あー、だからね、琥太郎君のパパが、さっき頭を打ったって言うから今見て上げただけで……。 あ! そうだ! 琥太郎君、保冷剤みたいなのある?」


 豪は琥太郎の視線に合わせると頼むようにして言うのだ。


「あ! 分かった! 僕の事をここから追い出して、また、パパとちゅーする気なんでしょう?」

「あー、違うからねぇ。 と、とりあえず、パパがぶつけてしまった額を冷やさないとたんこぶが出来てしまうかもしれないだろ? それに私はここに今日来たばかりで、まだ、冷蔵庫の場所とか保冷剤が何処にあるかも分からないからね……。 だから私は今、琥太郎君にお願いしているだけなんだけどな。 パパの事を救えるのは琥太郎君しかいないかなぁ?」

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