第3話 あ、痛いっ!
豪がそう話し掛けたのに琥太郎の方は豪の事を見続けたままだ。 これではなかなか琥太郎の事を保育園に連れて行く事が出来ない。
そう豪のここでの最初の仕事というのは、さっき慧に言われた通りに琥太郎の事を保育園に連れて行く事だ。 だが、その琥太郎が豪に懐いてというのか、せめて慣れて豪に近付いてくれないと行動する事が出来ない。
未だに豪の方に近付いてくれない所を見ると、琥太郎は豪に対して警戒しているという事だろう。
確かに今日から立川家には家政夫が来るという事は知っていた事なのかもしれないのだが、まさか、こんな強面な人が来るとは思ってなかったのかもしれない。
そんな中、部屋の二階から大きな物音というのか何かにぶつけたような音が聞こえて来る。
「……へ? 何?」
その豪の言葉に琥太郎が、
「きっと、この音パパだよー」
そう半分呆れたように言う琥太郎。 その琥太郎の言葉に豪は、
「……パパ?」
と復唱するように聞いてみる豪。
「うん! きっと、またパパが頭かなんかをぶつけた音なんじゃないのかな?」
流石にまだ豪の事を見て話するような事はしてないのだが、どうやら豪の言葉には琥太郎は答えてくれているようだ。
その琥太郎の言葉に納得したような表情をした豪だったのだが、急に走り出し二階へと向かうのだ。
そう琥太郎の言う通りなら二階で大変な事が起きているのかもしれない。 そう最低でもぶつけたような音が聞こえて来たのだから、怪我をしているかもしれないし、倒れてしまっているかもしれないからだ。
急いで豪は二階へと向かい各部屋のドアを開け、慧の事を見つける事が出来たようで安堵のようなため息を吐く。
「立川さん、大丈夫ですか?」
そう慌てたように言う豪。
「え? あ、はい……僕の方は大丈夫ですよ。 ただ頭をタンスのドアにぶつけただけですから……」
ぶつけたであろう額を摩りながら立ち上がる慧。
「ホント、僕的にはこういう事、しょっちゅうなんで気にしないで下さいね」
慧は微笑みながら豪に向かって言うのだが、その一瞬、慧の笑顔に豪は息を詰まらせたかのように見つめる。
こう今の豪からしてみたら、慧の今の微笑んだ顔が天使のように見えてしまったからなのかもしれない。 優しいそうな表情に眼鏡姿、ゆるふわな雰囲気にドジな所、なんていうのか守って上げたいような感じの人に見えてしまったという事だ。 しかしこの世の中にこんなに可愛い雰囲気の人がいるもんなのかと思う程だ。 いや豪の中では今までにこんなに守って上げたいと思ったような人というのはいなかったという事だろう。
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