第2話 獣人と重騎士

 王宮を出たところで、声を掛けられた。

「ベイカーさんですね?ロデール王より同行の命を賜りました自分、荷物持ポーターちのプロトと言います」

「お?おお、ヨロシクね」

「城塞都市までの交通手段、装備、糧食等すべて手配致します。路銀もロデール王より預かっておりますので、必要な物があれば何なりとお申し付け下さい」

「ありがとう。とても助かるよ」

 プロトは獣人で、犬耳と尻尾がある。モフモフで癒されたい。

「早速で悪いんだけど会いたい人がいるので、王国騎士団に付き合ってくれないか?」

「自分で良ければ、喜んでお供致します」


 王国騎士団の団員が集まっている場所に行くと、鍛練の真っ最中の様で、気合いの入った掛け声が響いている。

 端の方にいた団員にタムリンの事を尋ねると、ちょうど中央で手合わせ中だと教えてくれた。

 近づいて確認しようとしたら、アゴが落ちた。

 そこには白銀の甲冑を着けた騎士と、赤いフルアーマーの重騎士が立ち合っていたからである。

 どちらも他の団員より2周りはデカい。

 タムタムの姉ちゃんだよな?鎧だけデカくて中身ちっちゃいとかか?タムと大きさ違い過ぎない…色々と情報が錯綜しまくってる。

 結局、赤いフルアーマーの重騎士が、相手の鎧の隙間にバスターソードを差し込んで勝負を着けた。

(バスターソードって、そんな繊細な剣技の武器じゃないよね?相手の鎧ごとぶったぎる力技の武器だよね…確か)

 重騎士が兜を外すと中からタムタムを大人の女性にして、かなり美人よりにした顔が現れた。

 しかも鎧との比率がちゃんと合っている…と言うことはかなり大きめな女性だ。


 汗を拭っている重騎士に近づくと、

「タムリンさんで間違いないだろうか?僕はベイカー、ロデール王に紹介されて会いに来た」

「ああ、アタシがタムリンだ。ベイカー…聞いたことのある名前だ。もしかしてタムタムの師匠か?」

「師匠なんておこがましいが、タムタムには助けてもらっている」

「そうかそうか、ところでタムタムをいじめたりはしてないだろうな?」

 急に重騎士の纏う雰囲気が変わる。

(あれ?まさかロデール王と同じ種類の人じゃないよな)

「もちろんですよ、彼女は自分を過小評価し過ぎなんですよ。やれば出来る子なんです」

 重騎士の顔が、満面の笑顔に変わる。

「だろう、そうだろう!アタシもそう思っていたんだけど、アイツがムリ絶対ムリって言うから我慢してたんだよ」

「やる子ですよ、タムタムは…」

「いい師匠に巡り会えたんだなアイツは…ところでロデール王からの紹介とは何かな?」


 ロデール王からの依頼で、魔王城近くの城塞都市まで向かうパーティーを編成している旨をタムリンとプロトに説明した。

 必要があれば途中でダンジョンアタックもあり得る旨、付け加える。

 タムリンは暫し考えると、

「面白そうだな、ご一緒させてもらおう」

 諸々の調達もあるので、しばらく王都に滞在する必要があり、活動拠点として宿屋をプロトに手配してもらう事にした。

 

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