第9話 8日目 リゾートクラブ3日目

トラベル小説


 この日も朝ドライブに出かけた。気分は海外ドラマのポリスマンである。でも55マイル(およそ90km)の制限速度は守る。外国でつかまると、ろくなことがないということはヨーロッパで経験済みだ。スピード違反ではないが、駐車違反でつかまったことがある。郵便局で反則金を払ったのだが、シールの貼り方が違うということで、警察署に呼び出されたことがある。

 マイアミの近くまで行って、もどってきた。7時半の朝食タイムには間に合った。

今日の朝食は、ハムエッグとドリアである。毎日メニューが変わるので、楽しみだ。

 9時には子どもプールに子どもたちを連れていく。今日こそ、妻といっしょに過ごせるかと思いきや、妻もプールではしゃいでいる。そこを何とか拝みたおして、いっしょにゴルフに行くことを納得してもらった。そうでないと、なんのために子どもたちをキッズクラブに入れているのかわからなくなってしまう。

 10時前にゴルフコースにやってきた。9ホールのショートコースである。もちろん、フルコースのゴルフクラブもあるのだが、そこは追加料金がかかる。ここのショートコースは追加料金なしである。妻は大学以来のゴルフだということだ。授業でやったと言っている。そこで、7番アイアンだけを渡して、小刻みですすむことを選択させた。9ホール中、7ホールがショートホールなので2オン可能だ。他にお客さんがいないので、貸し切り状態である。ゴルフ好きな人たちはフルコースに行ったのだろう。

 いざ、スタートしようとすると、ティーグラウンドに妙な看板が2つあった。池の絵の上に×マークと、ワニの絵の上にATTENTION!と書いてある。妻と二人で顔を見合わせ、

「ワニでるのか~」

 と思わず口にだしてしまった。

 おそるおそるゴルフを始める。OBはもちろんラフであっても、絶対に取りにいかない。スコア無視なので、ひたすらフェアウェイをすすむ。おかげで1ダース用意したボールは残り2個になってしまった。途中、池のあるホールで、茂みにボールを打ち込んだ時、のそのそと動き出す獣がいた。子どものワニが池に入っていったのだ。

「いたわね~」

 と二人で顔を見合わせた。大人のワニだったら全速力で逃げないといけない。ワニは結構速いのだ。妻は最終ホール、2オンに成功し、パーをとってご機嫌だ。私はチップオンバーディーをねらったが、勢いが良すぎて、グリーンの向こうまでいってしまった。ボギーだった。妻は「勝った、勝ったー!」と喜んでいた。(スコア無視なんだけど・・)と言いたかったが、言い返されるのがオチなのでやめた。まあ、妻がご機嫌なことはいいことだ。

 ゴルフを終えて、プールに行くと、子どもたちは午後のダイビングに向けて、足ヒレの練習をしている。なかなかすすまないようだ。

 昼食を終えて、軽い昼寝をして、いよいよダイビングの練習である。まずは子ども用プールでフル装備をつける。ゴーグル・マスク・酸素ボンベだけでなく。足ヒレとウェイトもつけている。子ども用プールで5分もぐることができると、次は50mプールだ。水深は2mある。私も防水カメラをもって潜る。子どもたちは沈むのはできるが、そこで泳ぐのが難しいようだ。足と手を動かしているのだが、さっぱり前へ進まない。浮くのも難しいので、インストラクターのヘルプが必要になっていた。何度かすると、自分で浮くことができるようになっていた。最後はダイビングプールである。浅いところで3m、深いところで5mある。私ももぐってみたが、素潜りでは3mがやっとだった。

 ダイビングを終えてもどってきた子どもたちに

「怖くなかったか?」

 と聞くと、

「ぜーんぜん」

 という返事がきた。あっけらかんである。ずっと潜ってられるのがうれしいということだ。将来、海に潜ると言い出すのではないかとちょっと心配になった。妻は

「子どもたち、たくましくなったわねー」

 とのんきに喜んでいる。


 夕食は、またもやビュッフェレストランだ。日本料理は、焼き牡蠣だった。ただ日本の牡蠣とはちょっと違う感じがした。もしかしたらフロリダ産? と思ったが、フロリダで牡蠣がとれるとは思えない。どこかからの輸入品らしい。K国料理はスンドブ。アサリが入った豆腐料理だが、子どもたちにはちょっと辛い。C国料理は焼きそばだった。これはいける味だったが、今日のハイライトはアメリカのステーキである。骨付きTボーンステーキで食べ応えがあった。子どもたちも妻から切り分けてもらって、「うまい、うまい」を連発している。圭祐はいつものようにマヨネーズをかけて食べている。

 夜は、またもやプールサイドでカクテルタイムだ。座るところはいつも同じだ。うかつにも、そこでうたた寝をしてしまった。起きると3人はいない。見捨てられてしまったと思い、部屋にもどったらだれもいない。

「まさか?」

 誘拐されたかと思い、ホテル中をさがしまわったら、3人はバーにいた。今日はアニソン特集ということで、子どもたちは流行っている日本のアニソンを歌って、大うけだったということだ。もう1曲歌うということで、今待っているとのこと。そして、だれでも知っているアニソンを二人で歌い、多くの人から手拍子を受ける。まるでスター扱いだ。

 夜9時になるので、大人たちとさよならをして、部屋にもどる。子どもたちは満足した顔で寝ている。子どもの寝顔は天使だ。

「どうして、オレをプールサイドに置いていったんだよ」

 と聞くと、

「起こしたわよ。でも、起きないんだもの。それで部屋にもどろうとしたら、アニソンが聞こえてきて、子どもたちが興味を示したの。子どもでもいいと言われたから歌っていたというわけ」

「起きたらびっくりしたよ。部屋に行ってもだれもいないし、誘拐されたかと思ったよ」

「あら、心配してくれたの。嬉しいわ。それにしても子どもたち、たくましくなったと思わない。今までの圭祐なら、ダイビングやカラオケやるなんて言わなかったと思うよ」

「そうだな。やはりいろんな体験させないといけないんだな。危ないからといってさせないのがいけなかったのかもしれないな」

「そうね。そういう意味ではここに来てよかったね」

 と、二人で見つめ合った。いい雰囲気になったので、顔を近づけようとしたら、すっと避けられた。

「おやすみ」

 と妻は祐実のとなりに滑り込んでいった。今日もラブラブなしとなった。

 3日目終了。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る