第4話 3日目 アニマル・キングダム
トラベル小説
今日は子どもたちのリクエストで動物園に行きたいということで、アニマル・キングダムに行くことにした。アイちゃん情報で一番おもしろいという話だったからだそうだ。
朝食のコーヒーは部屋にあるポットでお湯をわかし、インスタントコーヒーにした。それでもレストランの煮詰まったコーヒーよりはおいしかった。昨日のうちに手にいれていたサンドウィッチとバナナで朝食。それで充分だった。そして朝一番のバスに乗って、アニマルキングダムへ。比較的近くにあるので、30分で到着。朝9時に入園できた。すいているうちに、人気のアトラクションへ行くことにした。エベレストの中をジェットコースターが疾走するアトラクションである。ところが、問題発生。身長制限があって、祐実が乗れない。あと3cm足りなかった。あきらめようとしたが、圭祐が納得していない。妹のせいで乗れないということに合点がいかないようだ。そこで、男組と女組に分かれることにし、女組は昆虫の世界をめぐるアトラクションに行くことになった。そっちは身長制限がない。
さて、ジェットコースターに乗車。運よく最前列に乗ることができた。今までの経験で最前列が一番怖くないということを知っているからである。最初はビッグサンダーマウンテンにに似ていると思っていたが・・・途中の山登りで上昇していると、そこに山男のイエティがいた。よく見ると線路が破壊されている。そこからが恐怖だった。バックが始まったのだ。それも暗闇の中を疾走する。ジェットコースターの最後尾はもっともスピードを感じる。それもバックだからどこで曲がるかわからない。恐怖の数分だった。圭祐も血の気を失っている。妹を見放した罰を受けたようだ。
降りてから妻に連絡。Wifiをもっているので、ラインが通じる。電話だと国際電話になってしまうので高価になってしまう。すると、むこうも終わったとのこと。それで川下りのアトラクションで集合することになった。祐実は昆虫のアトラクションがおもしろかったみたいで、ご機嫌な顔をしている。圭祐はブスッとしているが・・。
川下りは丸いゴムボートに乗って急流くだりをするアトラクションだ。乗る前に簡易のカッパを購入する。日本でも乗ったことがあるので、たかが知れてると思ったが、すごかった。岩にやたらとぶつかって、ショックが多いし、下りも生半かではない。そしてお決まりのザブーンである。4人ともずぶぬれとなった。カッパはあまり意味がなかった。それでも、1時間もすると乾いてしまう。さすがフロリダである。
圭祐は祐実の濡れた髪を見て笑っている。自分もずぶぬれなのにだ。
次は、恐竜コーナーのダイナソーというアトラクションに乗った。ここも身長制限はあるのだが、祐実もクリアだった。ライドに乗っていると恐竜が現れたり、襲ってきたりする。ユニバーサルのアトラクションに似ていると思った。
ダイナソーを出ると、売店があった。そこで、早めの昼食をとることにした。目的はターキーレグである。日本でチキンレグを食べたことはあるが、その倍の大きさはあるだろうか。4人とも食べきれず、袋にいれて持ち帰ることにした。
ライド系のアトラクションは行列ができている。話には聞いていたが、アメリカ人はゆったり過ごすので、朝一番に来るという発想はほとんどないそうなのだ。そういう発想をするのは日本人だけだと聞いたことがある。なんかわかるような気がした。
午後からは、ショータイムが始まる。スケジュールを見ながら計画を立てる。祐実が
「ニモのショーを見たい」
とリクエストをだしてきた。どこかで看板を見たらしい。圭祐は、
「アニマルキングダムに来たらサファリバスにのらないと意味ないじゃん」
と生意気なことを言っている。ニモのショーまでには時間があるので、最初にサファリバスに乗った。
バスに乗って、ゲートをくぐるとそこは広大な敷地で、まさにアフリカだった。周りに建物が見えない。ディズニーワールドに巨大な建物はない。ホテルでさえ、3階建てがふつうである。ショッピング街に10階建てのホテルがあるが、ディズニー直営のホテルではない。狭苦しい日本ではありえない世界である。
サファリバスは各エリアを抜けていく。ライオンエリアでは近くでライオンが寝そべっている。起きたら襲ってくるかもしれないと思うぐらいだ。ただエサは充分に与えられているので、そういうことはないということだ。むしろ、ハイエナが無気味だった。うろうろしていてエサをさがしている感じだった。キリンは顔を近づけてきた。子どもたちは大喜びである。
その後にいった小動物と触れ合えるコースが子どもたちには大うけだった。祐実は自分と同じくらいの大きさのヤギに抱きついている。圭祐はヤギにペロッとなめられ、悲鳴をあげている。私のカメラのいい被写体になってくれている。
ニモのショーを見に行く。まさに子ども向けのショーでおさかなさんたちが歌や踊りで楽しませてくれる。祐実はルンルンである。言葉がわからなくても動きだけで充分楽しめる。
そこが終わると妻が
「今ならライオンキングのショーに間に合うわ」
と言い出した。日本で見たことがある私が
「ライオンキングなら日本でも見られるじゃないか?」
と言うと、
「日本だと一人1万円ちかくとられるのよ。ここならただじゃない」
と強く言われた。心の中で(入園料はとられているんだけど・・)と思ったがここで口答えしても始まらない。しぶしぶアフリカゾーンにもどり、ライオンキングのショーを見にはいった。
テントのような建物の中でステージは中央にある。観客席はまわりに座る。これだけでも日本とは大違いだ。ショーの内容は日本と大差ないのだが、動きがまるで違う。ステージが中央にあるからだろうか。舞台設定が細かく変わるシステムにも驚かされたし、なにより動物たちの動きがダイナミックなのである。それに役者さんたちが皆かっこいい。踊りがキレッキレなのだ。それにステージが近いというのが大きな要因だと思う。終わってでると妻が
「今日一番よかったんじゃない?」
と言ってきた。子どもたちも歓声をあげたわけではないが、満足の顔をしている。
「あなただって、女優さんが出てきた時、鼻の下伸びていたわよ」
と言われて、思わず鼻の下を隠した。たしかに、すてきなダンサーが出てきた時には見惚れていたのは事実である。
アニマルキングダムの終了は早い。たまにナイトサファリが開催されるというが、夜行性の動物も多いので、夜はしずかになのである。バスに乗ると遠くで花火が見える。今日は丸一日歩いたので、足が疲れた。ホテルにもどり夕食である。食べ残していたターキーレグでおなかいっぱいになった。
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