第3話 危機一髪
突然、リス、と思っていた小動物が大きく口を開けて牙を見せた。
そしてバッと、木の枝の上からこちらに向かって飛んできた。
四肢を広げてグライダーのようだ。リスじゃなくてモモンガにような動きだ。しかし、リスでもモモンガでもないらしい。
「ギョ〜!!」
「ひゃ!」
ザン!! こちらに向かって飛んでくるのを避けると、木にぶつかり、きの枝がバサー!と落ちてきた。
「ギョー!」
「やだ!こっち来ないで!」
リスもどきは、別の木に張り付いたと思ったら、雄叫びを上げながら木の上の方に登っていく。また高い位置の枝から飛び降りてくるつもりらしい。
私は走った。必死に走った。
ザン!バサーッ!
後方で音がする。リスもどきが追ってきているようだ。
高い枝からの飛翔を避けるために、必死でジグザグに逃げた。
グッ! 必死で走っていたら急に何かにドレスの裾を引っ張られるのを感じた。
みると、ドレスの裾に枝が引っかかったらしい。
「や!ちょっと!」
慌てて、ドレスに絡まった枝を外そうとした。
「ギョー!」
リスもどきの鳴き声が近くで聞こえた。顔を挙げると、本の数メートル先の木にリスもどきがと停っていた。
そして、こちらに向かって大きく口を開けた。顔のサイズより大きいのじゃないかと思うくらいの牙だらけの口を見せた後、また木の上の方に登っていく。
また高い木の枝からこちらを目掛けて飛んでくるつもりのようだ。
怖い!
背を向けて逃げ出そうとしたら、ズルっと足元が滑った。
まずい! 視界がブレる。地面の両手をついて、振り向くと木の枝の上にリスもどきが移動したのが見えた。
そして、リスもどきが枝から飛び出した。
もうダメ!
ギュッと目をつぶって身を丸くした。
「‥‥あれ?」
逃げることもできなかったので、衝撃が来るのを予想していたのだけど、思ったタイミングでは何も起きなかった。
恐る恐る目を開けると、目の前が真っ白だった。白い空間の中にいた。
白い壁で囲まれた、一人用のテントくらいの広さの空間だ。
足元も白い。シーンと静まり返っているその空間をキョロキョロと見回した。
リスもどきの姿はなかった。
「た、助かった‥・?」
リスもどきからは逃れたようだけど、今居る場所がどこだかわからない。
どこだろうと更に見回すと、天井まで真っ白だった。白い壁に手を触れると、小さな窓ができた。窓の向こうにはリスもどきの姿が見えた。
キョロキョロしながら、牙だらけの大きな口を開けて雄叫びを上げている。
「モンスターじゃん‥‥。」
今更だけど、自分が異世界にいることを思い出した。森にモンスターがいても不思議はない。
今まで、森に出たことがなかったから知らなかっただけで、森の中にはモンスターがウジャウジャといるのかもしれない。
「やばいよ。危機一髪だったよ。」
森がそんなに危険な場所だったとは知らなかった。ゾッとする。
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