第2話 リスもどき

ステンレスボールに、目分量で強力粉を入れる。塩、砂糖、ドライイーストを入れて、浄水したぬるま湯を加えて混ぜる。少し捏ねてからオリーブオイルを加えて、更に捏ねる。生地がまとまってきたらしばらく捏ねてから丸めて

布巾をかけて、発酵させる。

一時間程して、膨らんできたら、もう一度捏ねてガス抜きをする。丸めてからフライパンに乗せて休ませる。

厨房にも竈らしきものはあるのを発見したのだけど、薪を燃やさないといけないらしいし、使い方もよくわからないから

カセットガスコンロとフライパンでパンを焼くことにした。


カセットガスの残りはどれくらいかな。食い繋ぎならが、徐々にこちらの道具だとかを試せば良いかなと思っている。


フライパンで焼いたパンは、ちょっと平べったくてフォカッチャみたいな感じ。パンを切るのは冷めてからが良いとかいうけど、焼きたて熱々のパンってつい食べたくなるよね。

熱々のパンをちょっと切って、チーズを挟む。それと水筒に朝食のコーヒーの残りを入れる。

肩掛け鞄に紙袋に入れたパンと水筒を入れる。


「お出かけ準備、完了〜!」


肩掛け鞄を襷掛けにしたら、準備完了。パンを捏ねている間に、ちょっと森に行ってみようって考えていたのだ。


気になっているのは森の中に木の実だとか食糧になるようなものがあるかどうか。後、水。


今の所、謎システムで「六華」の持ち物が出てくるし、倉庫部屋にちょっとは芋や玉葱だとかがある。しかし、いずれ食材が底をついたらと考えると、

余裕があるうちに、森で食材が手に入るのかどうか確認しておいた方が良いと思ったのだ。

木苺だとかドングリだとかね。

キノコ‥‥は、やめておいた方が良いね。




今まで、屋敷の外に出る時は、使用人が御者を務める馬車でだけだから、森に出たことはないんだよね。

無闇に出歩いて道に迷ったりしたら困るので、あまり遠出はせずに屋敷の周辺をちょっと彷徨く程度の予定だ。


それだったら、「お弁当」は必要なさそうだけど、気分ですよ、気分!


屋敷の裏手の勝手口のような所を恐るおそる開けてみると、木漏れ日が差し込む静かな森が広がっていた。


「わあ‥‥!」


ワクワクしながら一歩踏み出した。カサッと、落ち葉を踏む音。木漏れ日は、森の少し先まで明るく照らしている。

幻想的で美しい光景だ。

思わず引き込まれていきそうになるけれど、グッと堪えて周辺を見回す。手が届きそうな範囲は藪だ。木の実などは見当たらない。

ひとまず、屋敷から離れず、屋敷を取り囲む、柵の周りを一周してみることにした。


左側に柵が見える状態で、ゆっくりと進む。しばらく歩いていたら、木の上の方をピョンと移動する何かが見えた。


「あ、さっきのリスかな。」


リスらしき小動物の様子を観察してみた。何か両手に抱えて食べている。木の実だろうか。


「近くに木の実があるってことかな。」


眺めながら呟くと、リスが動きを止めて、キョロりとこちらをみた。


「ギョー!!」


「え?」

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