第3話 私は、私を救った誰かに、恋をした。

(side:桔梗)



私は、ある男に呼び出されていた。



「俺がここに呼び出した意味、わかるよな?」

「さぁ、さっぱりわからないわね」



目の前にいるのは、校内でも有名な女たらし、もといクズ。

私は以前から、このクズにしつこく言い寄られていた。



「またまた」

「本当にわからないわ。あなたにここに呼び出された理由なんて」



私はわざとしらばっくれるが、クズはニコニコしながら言う。



「お前に愛の告白をしにここに呼び出したんだよ」



その言葉にイラッときた私は、クズとしゃべってるうちに、言い合いとなった。

そしてクズが激昂し、私に殴りかかろうとしたその時、クズの向こうにある扉が突然開き、男の声が聞こえてきた。




「待ちやがれ」



そして今度は、クズと入ってきた男が喧嘩になった。

でも入ってきた男のほうが一枚上手で、クズはすぐにノックアウトされてしまった。



「こっちだ」



男が私に近づいて、そう言って手に取る。

その直前に私は男の顔を見たのだけど、この男の顔をどこかで見たことあるような?

そう思いながらも、私は男に引っ張られて連れられて行く。



「ここまで来れば大丈夫だろ。俺にできるのはここまでだ。

後はあんたのほうで何とかしてくれ」



4階空き教室まで連れられた後、その言葉とともに男はどこかへ行こうとする。



「ちょっと!」



私は男を引き留めようとするが、男は私の言葉を無視して行ってしまった。



「彼の顔、やっぱりどこかで見たことあるような?」



息が整った後生徒会室に戻り、生徒名簿を見つけて調べる。

あの顔の男子生徒は―—―—―—―—



「あった!伊良湖健一郎?」



この名前、どこかで……そうだわ。

彼、あの事故で休学届が出て、9か月休んでた男子生徒だわ。

そういえば、名前も入学当初から変わってるのよね。

この顔、よく見るとそこそこいい顔してるわね。



「伊良湖健一郎くん」



顔写真を見ながら、先ほどのことを思い出す。



「考えてみると、彼はあのクズにケガさせられるリスクや、その後自分が不利な立場になるリスクを負ってでも私を助けたのよね。

今まで、私のことを助けてくれる人なんていなかった。彼が初めてのひと」



そう考えると、彼のことがすごく気になってくる。



「そうだわ。名前もわかったことだし、お礼を言わないと」



そんなことを思ったとき、なぜか胸がドキドキしてくる。

それと同時に、私の知らない感情がわいてくる。



「え?なんでこんなにドキドキするの?

なんだか彼に対して好意を感じてる?

まさか、これって」



私は、誰かに対して好意を感じている自分がいることに、驚く。

でも、考えてみると、彼は私のことを、リスク承知で助けてくれた初めてのひと。

そんな人を好きになるのもしょうがないのでは?と、私は思う。



「え、これが、人を好きになるってこと?

私、彼のことを好きになってしまったの?

まさか私が、誰かを好きになるなんて。

でも、彼なら、私が好きになるのも無理ないわ」



私は、人生で初めて誰かに恋をしたことを、認識した。

その瞬間、私は彼と付き合いたいと、そう思うようになった。



「彼と、恋人同士になりたい。

こんなにはっきり思う日が来るなんて。

でも、まだ彼のことを、私はほとんど知らない。

まずは彼について知ることから、始めましょう」



私は彼について調べるため、その場を後にする。

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