第2話 俺は黒髪の美少女を助けて家に帰る
俺は男の拳をさくっと避け、足を引っかけで転ばせる。
それから強引にあおむけにさせ、男の目と鼻に手に持っていた炭酸水をかける。
「うああああああああ!目があああああああああああああ!!」
男は俺に炭酸水をかけられて、雄叫びを上げる。
目と鼻に炭酸の刺激と浸透圧の差によって発生する痛みに耐えかねて、男はすさまじく悶絶している。
これでしばらく男は動くことすらできないだろうから、この隙にここからあの女を連れ出そう。
そう思い女の元に向かい、腕を取り無理やり起き上がらせる。
「こっちだ」
女を起こした後、そう言って俺は、地下教室があるほうに手を引いて走り出す。
「え、ちょ、ちょっと!」
女が後ろで何か言っているが、俺はお構いなしに強引に連れていく。
地下から1階、そしてそこから連絡通路を通って特別教育棟へ。
そして4階の連絡通路と階段がすぐそこという位置にある空き教室に入り、立ち止まる。
「はぁ、はぁ」
俺と女の両方が息を切らす。
「ここまで来れば大丈夫だろ。俺にできるのはここまでだ。後は自分で何とかしてくれ」
「ちょ、ちょっと、待って!」
俺は女が引き留めようとするのを無視して、すぐに空き教室を出た。
俺は念のため、帰る途中にあの男に鉢合わせしないように、周囲に注意して遠回りしながら、駐輪場へと辿り着いた。
駐輪場の端に止めている俺のバイクまで行き、ヘルメットとグローブを装備する。
ちなみに俺の高校は、書類審査と現物確認をクリアすれば、バイク通学をしてもいいことになっている。
なんで俺がバイク通学かというと、今住んでる家から利用できる公共交通機関が、何一つないからだ。
つまりバイクがなければ、親に送り迎えしてもらうしか、通う方法がない。
両親を煩わせてないように、俺は16歳になってすぐ自動二輪免許を取った。
免許証が交付されたその日のうちにバイクを買い、翌日にバイク通学の申請をした。
学校は、公共交通機関がないという事情を汲んでくれたのか、俺の場合は両方ともすんなり通って、あっさり許可が下りた。
他の人だとバイクで通学する必要性の説明で苦労して、書類審査の時点で不許可になるらしい。
俺はそれを、周囲の人間の会話から知った。
それはともかく、俺は厄介ごとに自ら首突っ込んでしまい、その対処に時間を使ってしまって、家に帰るのが遅くなっている。
なので、俺はすぐに駐輪場からバイクを出し、バイクにまたがって走り出す。
俺が通学で使っているのは、かの有名なビジネスバイクだ。
あの有名な番組が、企画であらゆる手を駆使しても完全に不動にはできなかった、恐ろしく耐久性の高いバイクだ。
今日はバイトもないため、いつもの通学経路を通って家に帰る。
帰宅中に事故に遭う、こともなく無事家に到着。
玄関近くにバイクを止めて、ヘルメットとグローブを脱ぐ。
バイクから降りて、グローブをヘルメットを持って家の中に入る。
玄関で靴を脱ぎ、靴箱の上にカギを置いて、家族に帰宅のあいさつをする。
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