第4話 危機を救ったアドリブ?

 ヒーローショーは好評だった。

 子供たちも喜んでくれ、お父さんたちにもライブに注目してもらうことができた。

 私もシルフィを演じながら、子供たちの瞳が輝いていくのを実感したんだ。


 ——この腕時計があれば、私たちはやり遂げることができる。


 もしかしたら、メジャーデビューも夢ではないかも。

 なんて、ちょっと油断してしまったのかもしれない。翌週のヒーローショーで、私は致命的なやらかしをしてしまったのだ。

 というのも、どんなにダンスをしても腕時計から電気信号が伝わって来ない。

(なんで? 信号が来ないの?)

 いつもならビビっと脳を揺らす信号が来るのに。

(もしかして? でもまさか、そんなこと……)

 一つの可能性が私の頭をよぎる。

 それを証明するように、ダンスが終わった直後、ぷらっちがマイクが拾えないくらいの小さな声で耳打ちした。


「シルフィがマスターになってるわよ」

「ええっ!?」


 よく見ると、私が着けている腕時計のディスプレイの縁は、白金色に輝いていた。


 スタート同期ウォッチは、マスターの筋肉の動きをサーヴァントに送る機能がある。ということは、マスターとサーヴァントの二種類があるということ。

 その区別をつけるために、ディスプレイの縁の色を変えているのだ。

 ホワイトウォッチーズの場合、マスターの縁の色は白金色。普段はぷらっちが着けているが、ヒーローショーの時は怪人の攻撃を避けるために怪人が着けることになっている。

 しかしこの白金色というのが曲者だった。私が着ける銀色との区別が着けにくいのだ。つまり私は間違えて白金色、つまりマスターの腕時計を着けてしまい、サーヴァントである銀色の腕時計を怪人役の俳優に渡してしまっというわけ。


「マジか……」

 これでは怪人の攻撃をタイミングよく避けることは不可能だ。

(どうすればいい、どうすれば!?)

 いくら考えてもアイディアは浮かんでこない。

 そしてさらに状況は悪くなる。アクションに集中できなくなった私は、足をもつれさせて転んでしまったのだ。

 そこに襲い来る怪人のロープ攻撃。

(こうなったらアレをやるしかないわね。私がマスターなんだから)

 私は一世一代のアドリブを決意した。

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