第2話 四憑小学校

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四憑よつつき町児童失踪事件のうわさ】

今から20年前、四憑よつつき町の中心部に位置する四憑よつつき小学校で、先生と生徒たちが突然行方不明になりました。うち数名は後日遺体が発見されました。警察は調査を行いましたが、手がかりは発見されず、事件は未解決のままとなりました。それから、学校は閉鎖されて廃校となりましたが、町の人々はその出来事を忘れることができませんでした。

◆◆◆


「ん、痛いぃ…… 」

 頭に手を当てながら、ゆっくり起き上がる。

 どうやら、俺は眠っていたらしい。

 ぼんやりしていた意識がはっきりすると、周りの違和感に気が付いた。


「え、ここどこ?! 真っ暗じゃん…… 」


 そこは電灯も月明りも無い闇の中で、薄っすら見える床や壁も見たことの無い風合いだった。

「そうだスマホは ――あった! 良かった…… 」


 ズボンのポケットからスマホを引っ張り出して、画面を点灯させ、足元を見る。

 血まみれの人形が目の前に転がっていた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!! 」

 俺は周りにある何かに、ガタンと音を立ててぶつかりながら、慌ててそこを離れた。

「本物の血なのか? 」

 心臓が高く鳴って、呼吸も荒い。 俺は震える手でスマホを操作して、ライトを点ける。

 色は確かに赤黒く、時間が少し経ってはいるが、インクとは明らかに質感が違う。 不気味な人形は人間の肉の柔らかさを持っているようにも見える。  


「他には、何も無いよな? 」

 人形のすぐ横には、血と汚れでぐしゃぐしゃになった白シャツのような服が落ちている。


「学校……? 」

 スマホのライトで辺り照らすと、ここは古い学校の教室のようだった。 

 廃墟ではあるが、机も椅子も、しっかりと残っている。

 俺が立っているのは、ちょうど教室の中央の位置。 さっきまで机の間の通路に横になっていたらしい。 窓の外は真っ暗で、ここからでは何も見えそうにない。


 良く見ようと目を凝らすほど、誰も居ない無音の空間に、自分だけが置き去りにされているのが分かって、どうしようもなく不安な気分になる。


 カラン 不意に、ずっと遠くで金属のような物音が聞こえた気がすして、俺はゆっくりと廊下側を振り向く。


 「だ、だれか…… 」


 暗闇から誰かが見ているんじゃないだろうか、次に後ろを振り返ったら目の前に何かが来ているんじゃないだろうか、そんな気配が、俺を教室前方の壁際までそっと後ずさりさせた。


 黒板に背を着けたら、さっきよりも随分と気持ちが落ち着く感じがした。

「まずは、ここがどこなのか調べないと」

 地図を開いて、位置情報を見ようとするが、電波を受信できない。

「駄目か…… 」


 自分から見て左にある、教室のドアが開きっぱなしのせいで、常に何かの視線を感じてしまい、目線を画面から教室に戻すのも恐ろしい。


「ん? あれは、掲示板に何か貼紙が残っている? 」

 ふと、廊下の方に視線をやると、そこにある掲示物に気が付く。


 物音を立てないようにゆっくり廊下側の壁に近づくと、そこには手書きの絵や写真と、この学校の新聞が画鋲で板に刺されていた。


四憑よつつき小学校、6月のお知らせ…… 】

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