第九十五話 大陸二分
「えっ? 連合軍に参加した多くの王や貴族たちが死んでしまったって?」
「ええ、盟主であるゾーリン王のみは、運よく自国に逃げ帰ったようですが……」
「それはつまり……」
「後継者争いや、軍が壊滅したことによる治安の悪化で南方の多くの国々が混乱しており、新ラーベ王国なら生活に困らないという噂が流れておりまして……その……」
「移住希望者が殺到していると?」
「はい。それと、降伏した兵士たちなのですが……家族を呼び寄せてこの国で生活したいと……」
「ただ、 受け身のままでいると難民の受け入れで大変なのです。これなら、混乱した南方の国々を占領して軍政でも敷いた方がマシです」
「それで俺が、また征服王とか言われてしまうんだな」
「そこはもう諦めてもらうしか」
「アントンは国務大臣だからいいよな。俺は王様だから」
「今さら王様を辞めるなんて言わないでくださいよ」
「言えないだろうが」
おかしい……。
俺は絶対無敵ロボ アポロンカイザーのスキルを極め、いつか本物の絶対無敵ロボ アポロンカイザーに搭乗できるようにしようと……それはもう叶ってしまったか……。
あとは、操縦技量を上げるくらいが人生目標になってしまったことを家臣たちに気がつかれ、俺はスーパーロボット操縦者ではなく、この大陸を統一させられそうだ。
「ダストン様、多くの土地を統治するようになれば、きっと全銀河全滅団とやらの本拠地も見つかりますよ」
「そう言われると確かにそうだ」
これまでは、他国の領地だったので本格的な偵察が難しかったのだ。
シゲールたちが無事に監視衛星の打ち上げに成功していたが、どうやら女帝アルミナスは巧妙に根拠地を隠しているようで、なかなか尻尾を出せなかった。
混乱した南方の国々を占領すれば、女帝アルミナスの本拠地探しも捗るはず。
そんな理由で大陸を統一しようと思うのは、きっと俺くらいだろうけど。
「とにかく、女帝アルミナスは厄介だ」
心に闇を抱えた人間を機械大人と機械魔獣に変えてしまうので、アニメの時よりも厄介な敵であった。
元が人間だからか。
人間にそっくりな機械魔獣にして四天王を名乗ったメリーは倒したが、それでもあと最低三人……三体は四天王がいる計算になる。
もしメリーみたいに人間同士を争わせる策を用いてきた場合、対応が難しいので困ってしまう。
「一刻も早く、女帝アルミナスを倒すべきか……」
「私はそう思います」
「そうだな」
時間が経てば経つほど、女帝アルミナスは力をつけることは確実であったからだ。
「兵を出すのは構わないが、問題はどこまで進むかだな」
さすがに大陸全土統一は不可能なので、ある程度目標を達成したら進撃を停止する必要がある。
占領した土地の開発などもしなければならないからだ。
開発が進めば、故郷に戻りたがる者たちも出るであろう。
新しい移住者が増えるかもしれない。
無理に大陸を統一しても、民たちの生活が困窮して心に闇を抱えれば、そこを女帝アルミナスに突かれてしまうのだから。
「軍務大臣は今回の戦争の後始末と、混乱した南方の国々の占領作戦が始まった場合、書類の山に埋もれて大変だろうから、アップルトン将軍に任せるしかないな」
補給は……最悪アトランティスベースに合成食料でも作らせるしかないな。
多分、各地に建設中の職員工場で間に合うはずだが。
「それでは早速、混乱した南方の国々に兵を送ります」
唯一心配なのは混乱に拍車をかけないかというものであったが、俺とプラムが上空に絶対無敵ロボ アポロンカイザーとセクシーレディーロボ ビューティフォーを上空に浮かべているだけで、大半の者たちはすぐに降伏してしまった。
無理に軍勢を出したせいで食料も不足しているらしく、またも新ラーベ王国軍の最大の仕事は、占領地の民たちに食料や物資を配給することであった。
「俺ら、この前戦ってたのが嘘みたいだな。いつもの、困っている人たちに食料と物資を配給するお仕事だぜ」
「別に無理に戦争なんてしたくないから、これでいいんだけど」
「あとは道路工事の手伝いとか。水害が発生した時、川の土手に土のうを積んだり、逃げ遅れた住民を避難させたり。訓練の時はともかく、普段はあまり軍らしくないんだが、よく戦争で負けなかったものだ」
「武器が良かったからだろうな。あれでは少々の魔法では歯が立たないだろうしな」
「軍にいると色々教えてもらえるし、退役したあとはそれを生かして働けば生活するのに困らないからな。問題は兵士の選抜が少し厳しいらしいけど。『志願兵制度』とはよく言ったものだ」
「待遇がもの凄くいいからな。変な奴を入れないためだろう」
絶対無敵ロボ アポロンカイザーの装備するセンサーから兵士たちの会話が聞こえてきたが、大きな不満はないようなので問題ないようだ。
「今回の戦争で多くの王様や貴族たちが戦死してしまいましたが、肝心のゾーリン王のみは逃げ延びてしまいましたね」
「責任者なんだけどなぁ……」
しかも、女帝アルミナスの配下に操られていた。
それを知っているのは新ラーベ王国の関係者のみであったが、連合軍のトップなのに自分だけ逃げ帰ったのは事実で、損害を出した多くの国の人たちから批判されていると、ハンゾウから報告が入っている。
ところがゾーリン王国はこの大陸の南端にあり、現状では手の出しようがなかった。
しかも恐ろしいことに、帰国後に無理やり軍勢を編成し、他の軍主力やなくした王を亡くした国々を数ヵ国併合してしまったという。
「四天王のメリーはゾーリン王を利用していると思っていたが、はたしてどちらが利用されていたのやら……」
今は、侵略を続けるゾーリン王国を止めるのは難しく、結局この大陸は、ほぼ新ラーベ王国とゾーリン王国により二分されたのであった。
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