第七十二話 さらなる強化

「陛下、王妃様。ついに、このアトランティスベース(基地)に多数ある封印エリアが解かれるのですね」




 定期的にアトランティスベース(基地)で学習と研究をしているシゲールは、絶対無敵ロボ アポロンカイザーとセクシーレディーロボ ビューティフォーが並ぶ格納庫の隣にあるいくつもの封印されたエリアを心から惜しそうに見ていた。

 この封印エリアはアトランティスベース(基地)のあちこちにあり、俺でも中を見れない。

 とはいえ、格納庫になにが封印されているのかは知っている。


「じきに、レップウⅣとマウスⅢの実機の封印が解けるはずだ」


 ミアとメアがレベルを上げ、俺とプラムみたいに実機に搭乗できるようになった時、ここの封印が二つ解けるというわけだ。


「戦車と飛行機ですか。データで見ましたが、神話の時代の乗り物は凄いですな。早く見てみたいし、研究してみたいですよ」


 シゲールは、車、バイク、トラック、農業機械、建設機械に類する魔法道具の開発と量産に成功していた。

 次は、戦車と飛行機を試作してみたいようだ。


「ミアとメアですか。その双子次第ってことですか。で、二人は?」


「今日は王城の中の部屋に泊まっているさ」


 まだ正式な宿舎が決まっていないので、今日は安全な王城の部屋に泊まらせた。

 これからどこで寝泊まりさせようか?


「プラム、どう思う?」


「そうですね……ここでいいのでは?」


「特殊なスキル持ちですからね。安全を考えたらここでしょうな」


 シゲールも、プラムの意見に賛成なようだ。


「部屋は余りまくっているからいいか」


 そして翌日。

 今日も、ミアとメアは……俺から借りた豪槍(ごうそう)アポロニアスとスペース青龍刀で、アイアンタートルと戦っていた。

 レベルが上がって身体能力が上がったのと、ビーム機銃だとアイアンタートルの甲羅まで蒸発してしまうからだ。

 二人は筋も悪くなく、次々アイアンタートルを倒していく。


「大丈夫だな」


「はい」


 俺とプラムも、次々とアイアンタートルを倒していく。

 このところの魔法道具の大量生産や、新ラーベ王国の開発特需で、亀鉄の需要が逼迫していとランドーさんから言われ、こうして四人でアイアンタートルを狩っているわけだ。


「しかしまがら、亀鉄は鉄よりも頑丈だけど、寿命があるのが欠点ですね」


「ああ、そこはシゲールがなんとかしたみたい」


 アトランティスベース(基地)のデータベースを参考に、微量のレアメタルとレアアースを配合して、亀鉄をさらに頑丈に、長持ちするようにしたそうだ。

 一応原理は聞いてみたのだが、俺の頭では理解できなかった。

 シゲール外以外誰も理解できなかったのだけど。

 彼も時おり、俺たちに同行してレベルを上げているからかもしれない。

 シゲールの場合、レベルが上がっても身体能力に変化はないが、知力は大幅に上がるようだからだ。


「凄い発見ですね。他国には言えませんが……」


「なんだよねぇ……」


 最悪、他国に誘拐されかねないからな。

 しかもシゲールは、身体能力が一般人と大差ない。

 順調にハンターとしても強くなりつつある、ミアとメアよりも危険なのだ。


「そこで、神話に則ろうと思います! 名付けて! 『アトランティスベース完全基地化計画』!」


 ようはアニメのように、基地を生活のベースとしてしまうのだ。


「幸い、スペースは空いているから」


「使っていない場所が大半ですからね」


「まずは……ミア、メア、シゲール、ムーア、アントンとその家族かな」


 以後、有事以外はアトランティスベース(基地)を新王都の上空に固定し、建設中の王城は政庁と迎賓館を兼ねる施設にしてしまう。

 そして俺が決めた、新ラーベ王国経営にとって重要なメンバーやその家族たちは、アトランティスベース(基地)の居住区に住んでもらうことにした。

 アニメでも、パイロットや整備士、研究者、基地を管理している人たちとその家族は、基地の居住区に住んでいたので、それと同じことだ。


「疑うわけではないですが、防諜は大丈夫でしょうか?」


「それは大丈夫」


 アトランティスベース(基地)は、古代アトランティス文明の遺産なのだ。

 どの人物がアトランティスベース(基地)に入れて、さらにどの区画まで移動できるかを詳細に設定、監視できるからだ。


「もうすぐ新王都の王城も完成するから、完成したらそうしよう」


 できれば、王城の建設はこの世界の人たちのみに任せたいのだが、こっちにも色々と都合がるので、新王都の王城はアトランティスベース(基地)内の設備を用いて夜中に作らせていた。

 本拠地が機能していないと、女帝アルミナスや彼女が繰り出してくる機械大人、機械魔獣に対して有効な迎撃態勢が取れないからだ。


「一週間後には、新王都の王城もなんとか機能するって感じですね。あっそうだ! 私もそろそろレベリングをしてほしいですね」


「そうだったな」


 この世界では、普通に生活していても徐々にレベルが上がっていく。

 力、体力、知力などが成長はしているのだけど、ハンターになって魔獣が狩れるという人はかなり少ない。

 その可能性が血筋的な理由で高いのが貴族なわけだが、必ずしも全員がそうというわけでもないし、貴族は政治家、軍人、役人の仕事に就くことが多いので、そこまでシャカリキにレベルは上げないわけだ。

 ところがシゲールのように、レベルを上げると知力だけ異常な成長を遂げる人物がいることが判明した。

 同時に、高レベルになると特殊なスキルがあとでつく人間がいることも。

 シゲールがレベルを上げると知力が驚異的な成長をし、今レベル400を超えたのだが、研究者、職人の他に、スキル『博士』も覚えていた。

 成人の儀以外でも、後発でスキルを覚える。

 こんなことがあるのかとランドーさんに尋ねてみたのだけど、彼も初めて聞く事例だと言っていた。


『レベル300って……レベリングでのみで、普通の人はそこまでレベルを上げられませんよ。優秀なハンターでも、レベル200超えが大半なので……』


 スキル絶対無敵ロボ アポロンカイザーで魔獣を虐殺している俺だからであろう。


『シゲールさんはレベルを上げても、力や体力は常人の範疇だと聞きました。だとしたら、余計そこまでレベルを上げませんね。しかも、見たことがないスキルばかり……』


 スキルは、ハンター業で使えるようなものが大半だ。

 各種魔法や、剣技、槍術、格闘術とか。

 体力上昇、速度上昇などのステータス補正にあたるものとか。

 そもそも、平民だとスキルなしも珍しくなかった。


『レベルアップでハンターとしてなかなか強くならない人が、わざわざレベリングなんてしませんからね。シゲールさんの件は非常に興味深くありますが……』


 高レベル、特殊なスキルが出現するかもしれない。

 普通の国や貴族が、そんな理由で優秀なハンターの資質もない人を一流ハンターレベルまでレベリングするわけがない。

 俺だからこそ、シゲールの新しいスキルを見出せたわけか。


「他の連中はどうなんでしょうか?」


「試してみるかな」


 シゲールのレベリングと合わせて、明日からムーアたちにも試してみるとしよう。

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