第六十七話 リーフレッド王国陥落

「なに? リーフレッド王国の王都が、謎の金属製と思しき巨大ゴーレムによって破壊されただと?」


「はい。王城が崩壊し、リーフレッド37世以下王族の大半が行方不明で、王都に外部の人間は近づけないようです」


「なんてこった!」


「ダストン様」



 突然、リーフレッド王国の王都が機械大人によって占拠されてしまったという報告が入ってきた。

 さらに悪いことに、王城が完全に崩壊して、グリワス以下王家の人たちや大貴族たちが行方不明だそうだ。

 王城の崩壊に巻き込まれてしまったようだ。


「グリワス……」


 年はかなり上だったが、せっかく対等な友人と同盟国ができたというのに……。


「嘆いている場合ではないか」


 急ぎ俺とプラムでリーフレッド王国の王都に向かい、機械大人を倒さなければならないだろう。


「プラム! 行くぞ!」


「はい!」


 俺はプラムがリーフレッド王国の王都へ向かおうとしたその時、またも伝令が飛び込んできた。


「なにかあったか?」


「それが……我が国の北部、旧リーフレッド王国領の西部より、エリオット王国領から、多数の金属製の魔獣が進入しつつあります」


「そっちを先になんとかしないと駄目か……」


 すまない、グリワス。

 俺はラーベ王国の王なので、先に自領に侵入しつつある機械魔獣を倒さなければならない。


「リーフレッド王国の様子を知りたいな。あとは、他国の動静だ」


 リーフレッド王国が、南方の未開地の大半を得たことを気に入らない周辺国は多かった。

 エリオット王国もそうだが、ここは機械魔獣のせいで滅茶滅茶かもしれないな。

 それともエリオット王国は、機械魔獣と同調して動いているのか?

 いや、機械魔獣と人間は相容れないからあり得ないはず。

 現在、ブルマイ王国、ドーラ公国、トワイト王国、アストハン王国他に、リーフレッド王国とラーベ王国も合わせて『北方七ヵ国』が南方未開地を巡って争っていたので、これをチャンスと捉えて軍を動かされると面倒だ。


「リーフレッド王国が混乱したとなれば、火事場泥棒的に兵を動かすかもしれない。どうにか、リーフレッド王国の重臣や軍の重鎮でもいい。連絡を取り、場合によっては兵糧なども援助しなければ」


 とにかくまずは、ラーベ王国の安全が最優先だ。

 機械魔獣たちをラーベ王国に入れるわけにいかない。

 俺とプラムは急ぎ北方へと飛んで行くのであった。




「あーーーはっはっ! リーフレッド王国の王都は俺様が占領したぞ!」


 巨大化の際、王城にいたリーフレッド13世とその家族、その他王族と大貴族たちの多数が死んだようだな。

 効率よく邪魔者を始末できてよかった。

 直接手を下さなければ我慢できないのはダストンだけなので、死んでいれば問題ない。


「よう、ガラット子爵」


「お前のような化け物に知り合いなどいないぞ!」


「俺様だよ、俺様。正統なるバルサーク家の跡取りにして世界の王になる予定のフリッツだよ。頭が悪いな、ガラット子爵はよぉ」


「お前が、あのフリッツ?」


 驚異的な力を得た俺様に驚いているようだな。

 それにしても、この力は素晴らしい。

 王都を支配したら、ちゃんと言うことを聞く貴族たちも見つかった。

 こいつらは新しい王となった俺様に媚びを売るため、他の俺様に従わない貴族たちを多数捕らえてくれたのだから。

 何名か特にピックアップしておいたが、上手く捕らえてくれてものだ。

 失敗したら潰すと脅したから当然か。


「ガラット子爵、お前は俺様に金を貸してくれなかったな」


「誰が、お前みたいな借金をするしか能がない奴に金など貸すか!」


 世界の王たる俺様に相応しい生活を送るためには、騎士爵の年金だけでは到底足りなかった。

 だから出世払いで貸してくれと頼んだのに、ガラット子爵の奴は断りやがって!


「現に俺は新しい王となって出世したぞ。お前のような人を見る目がない貴族はいらないな」


「こらっ! なにをする! まさか……やめろぉーーー! ぎゃぁーーー!」


「素手でグチャグチャに握り潰しまぁーーーす! おおっ! 潰れたトマトみたいだ!」


 随分と呆気ないが、これも俺が世界の王に相応しい力を得たためか。


「次は、オースチン伯爵。王城で俺様をバカにした罪で『冷凍刑』にしまぁーーーす。絶対に許しませぇーーーん!」


「人でなしが!」


 なぜか新しく生まれ変わった俺様は、『絶対零度』の力を持つ機械魔獣なのだそうだ。

 哀れ、オースチン伯爵はすぐに凍り付いてしまった。


「つまらんな」


 その辺の石畳に凍ったオースチン伯爵を投げつけたら、すぐに粉々になってしまった。

 人間とは、こうも脆い生き物だったのか。


「これで、ダストンも終わりだな」


 いくら泣き喚いても許さず、惨たらしく殺してやるさ。

 今から楽しみだなぁ……。


「陛下」


「なんだ? 下僕」


 こいつの名前、なんだったかな?

 別に誰でもいいか。


「実は、この国が混乱したとみるや、ブルマイ王国、ドーラ公国、トワイト王国、アストハン王国などが軍の動員を始めました。南方の未開地の奪取が目的かと」


「随分と卑怯な手を使うな」


 このあと、本当はラーベ王国に攻め入ろうと思ったのだが、その間にこのリーフレッド王国を奪われるのは美しくいないな。

 世界の王たる俺様の戦歴に傷がつく。

 こうなれば、先に四ヵ国を落としてしまうか。

 そうすれば、ダストンはその戦力差に絶望するはずだ。


「こんなに愉快なことはないな。まずは、ブルマイ王国、ドーラ公国、トワイト王国、アストハン王国を落としてしまうか。あれ? エリオット王国は?」


「エリオット王国ですが、なぜか次々とその……奇妙な金属製の魔獣が大量に発生し、それがラーベ王国北部目がけて侵攻しているそうです」


「そうか! なら放置だ!」


 せいぜいダストンが苦労すればいいさ!

 今、体の中の青い玉が教えてくれた。

 俺様のように、赤い玉をその身に宿し機械魔獣になる者たちが、エリオット王国には多数現れた。

 その原因は、現エリオット王……すでに元か。

 悪政を働き、機械魔獣になった愚民たちに殺されるという最悪の末路を迎えたようだ。

 愚かな奴め。

 俺様なら、愚民たちに背かれなどしない。

 そんなことをした奴は、俺様がみんな殺してしまうからな。

 世界の王になる俺様に逆らう奴など全員死刑に決まっているし、エリオット王が無能だっただけだ。

 まあエリオット王に関しては、どうせ俺様が殺す予定だったから手間が省けたとも言える。

 機械魔獣たちが俺様に従えばいいが、従わなければ破壊する。

 それまでは、ダストンの足を引っ張ってくれればいい。


「先に済ませておくか。これまで誰もできなかった。四ヵ国征服を。世界の王になる俺様に相応しいデビュー戦じゃないか」


 きっとどの国の王たちも、俺に泣きながら跪き、必死に命乞いをするであろうと考えたら楽しくなってきた。

 俺様以外に王はいらないから、もちろん皆殺しにするけどな。


「世界征服の開始だ!」


 軍勢などいらない。

 ただ各国の王とその家族、反逆者を殺せばいいだけのこと。

 飛べるようになった俺様は、急ぎ俺様の国の南方に兵を向けつつある敵国へと侵攻を開始するのであった。


 愚かな奴らだ。

 俺様の国に攻め入るなんて。

 必ず死ぬ前に後悔させてやろう。

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