第五十八話 サメ

「こういう姿形の魔獣でした。水上にはヒレしか出していませんでしたが……」


「なるほど(絵を見るとサメのようだけど、この世界にはサメがいないのかな?)」



 ランカーに到着すると、そこには沈んだ貿易船から救助された船員たちがいた。

 話を聞くと、船を襲った機械魔獣の絵を描いてくれたのだが、どう見てもサメに見える。

 とういか、サメにしか見えない。

 そして俺以外、初めて見る生き物だと首を捻っていた。

 どうやらサメは、この世界には存在しないようだ。

 つまり、サメの機械魔獣は女帝アルミアスが放った可能性が高い。


「ダストン様、相手は泳げる機械魔獣です。どう戦いましょうか? 私たちは水中では戦えませんよ」


「そうだなぁ……」


 絶対無敵ロボ アポロンカイザーも、セクシーレディーロボ ビューティフォーも、水中専用のロボットとは言い難い。

 戦えないわけではないが、その形状や重さのせいで水中での機動力が大きく制限されてしまうのだ。


「他にも問題はある」


 サメ型の機械魔獣だが、なぜか大型の船しか狙わないみたいだ。

 貿易船が沈んでランカーから救援の小型船が向かった時、なぜかサメ型の機械魔獣はその船を襲わなかったらしい。


「そこを通った船を見境なしに沈めるのではなく、大型船のみを沈める。どうしてなんだろう?」


 そしてそのせいで、サメ型の機械魔獣の討伐はえらく困難になっているのだ。

 サメ型の機械魔獣が出現する海域に俺たちだけで向かっても、サメ型の魔獣が姿を見せないはずだからだ。


「船を囮にするのは?」


「それもなぁ……」


 守りきれないで壊してしまうかもしれない。

 船の損失だけならいいが、船員に犠牲者を出したくなかったというのもある。

 なにより、今のラーベ王国には大型船が一隻もなかった。

 ランカーを貴族連合に参加している貴族が所有していた時、まだ港の設備は少なく、水深も浅かったので小型船しか使用していなかったからだ。

 現在、魔力で動く新機関を搭載した大型船はシゲールの主導で建造中であり、まだ実用に耐えられる大型船は存在しなかった。


「さて、どうしてものか……そうだ!」


「ダストン様?」


 この方法なら、水中の機械魔獣も倒せるはずだ。


「シゲールの元へ!」


「はい」


 俺とプラムは、急ぎ新型大型船建造の指揮を執っているシゲールの元に向かうのであった。




「囮に使うガワだけの大型船ですか? すぐに用意できますよ」


「さすがは、シゲール!」


「『こんなこともあろうかと!』というほどでもありませんな。ようは外から見て船に見えればいいわけで。動力は、絶対無敵ロボ アポロンカイザーが中に入るのでしょう? 機械魔獣が食いついてきたら逆に倒してしまうと」


「さすがはシゲールだな。すぐにわかるなんて」


「『こんなこともあろうかと!』じゃなくて、誰でも思いつきますよ。きっと」



 シゲールは、作戦への協力を了承してくれた。

 建造中の大型船を一隻用意し、そこに絶対無敵ロボ アポロンカイザーが入って機械魔獣のいる海域へと向かう。

 機械魔獣が襲ってきたら、逆に攻撃して倒してしまうという寸法だ。


「なるほど。これなら絶対無敵ロボ アポロンカイザーの姿を隠せ、同時に動力も必要ありませんね」


 俺が操縦して押していけばいいのだから。


「私はなにをすればいいのでしょうか?」


「プラムは遠方上空で待機だ」


 いくつか、絶対無敵ロボ アポロンカイザーの武器を渡しておくので、もし俺とその機械魔獣との戦いが長引きようなら、急ぎ飛来して助っ人として参戦すればいい。


「プラムは、上空から機械魔獣に攻撃をするのさ」


「なるほど。わかりました」


 こうして作戦が決まり、俺はいつものように絶対無敵ロボ アポロンカイザーを呼び出した。

 そして、シゲールが用意した大型船を海上に浮かべ、その中に入る。


「船の中に入りやすいよう、シゲールが船を改良してくれて助かったよ」


「そこは、巧の技というよりも配慮ですな」


 職人でもあり、研究者でもあるシゲールらしい言い方であった。


「プラム、預ける武器は、豪槍(ごうそう)アポロニアス、スペース青龍刀、為朝の弓でいいかな?」


「はい」


 上空から攻撃するのだから、このチョイスでいいと思うんだよな。


「ダストン様も武器を用意しますよね?」


「当然」


「やはり無敵剣ですか? もしくは豪槍(ごうそう)アポロニアス?」


「いいや、こういう時こそカイザースコップだ」


 今日はプラムに、カイザースコップを武器としても使えることを証明しようと思う。

 それがなんになるのかって?

 スコップはいい武器なのだと、ちゃんと彼女に教えてあげたいのさ。


「それでは出発進行!」


 絶対無敵ロボ アポロンカイザーに搭乗した俺は外側だけ完成している大型船の中に入り、機械魔獣が出現した海域に向けて移動を開始した。


「まったく、人が苦労してラーベ王国の経済をよくしようとしているのに邪魔しやがって。どんな奴が機械魔獣になったんだ?」


 先日のスタッカー伯爵みたいな奴なのであろうか?

 どちらにしても、可哀想だが完全に破壊するしかないのだから。

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