第五十六話 カイザースコップ
「第三中隊が壊滅しました!」
「第四中隊、半数を失って撤退中です!」
「……いきなりどうしてこうなったのだ?」
「それが……突然金属製の魔獣が出現しました。これには凄腕のハンターたちも歯が立たず……」
「金属製の魔獣など聞いたことがない。一体これはどういうことなのか……」」
せっかく第二段階の作戦も順調だったのに、まさかここで足を止められるとは……。
現在のリーフレッド王国が発展するには、南部の掌握がなによりも重要なのに。
最大のライバルであったラーベ王国だが、かの国は前王が引き起きた騒動により、わずかに得ていた南方の土地を我らに譲渡して同盟を結び、国内の統治に集中するようになった。
ラーベ王国は、南方への橋頭保を失ってしまったのだ。
その代わり、長年反抗していた東部地域の併合には成功している。
だが、その東部の土地も元は自国の領土だったため、ラーベ王国の国力はいまだ回復途上といったところか。
こちらが、暗黒竜騒動もあったので損切りして譲渡した北部及び旧バルサーク辺境伯領の復興も残っており、暫くは友好関係を結べるであろう。
あの国の新王は、元バルサーク辺境伯だしな。
その間に、リーフレッド王国は南方に大きく領土を拡大……と思っていたら……。
「金属製の魔獣? それはゴーレムではないのか?」
基本的に魔獣は生物であるが、リンデル山脈のゴーレムたちのような例外もあった。
金属製の魔獣も、ゴーレムの仲間だと思ったのだ。
「その強さは尋常ではなく、全軍がこれ以上南下できません。ただ……」
「ただなんだ?」
「その金属製の魔獣は、前には出てこないのです」
我が軍の南下を阻止するためだけに出てきたというわけか。
そして、いくら我が軍を打ち払っても追撃はしてこないというのか。
奴らめ。
なにを考えているのか……。
「倒せそうか?」
「ハンター有志に依頼すれば倒せるかもしれません」
南方攻略に参加しているハンターの数は多い。
暗黒竜騒動のせいで北部から逃げ出してきたハンターたちが多く、実にいい戦力になってくれている。
「彼らならいけるか」
「はい。凄腕から希望者たちを募ります」
本当はバルサーク辺境伯……じゃない。
ダストン王とプラム妃に頼みたいところだが、同盟国の王様と王妃にそんなことは頼めない。
報酬でラーベ王国が再び南方の土地を得てしまえば、俺に反抗的な一族や貴族たちに批判、それだけならいいが、反抗でもされると厄介だ。
我々だけで、その金属製の魔獣とやらを退治しなければ。
「しかし、人間を見ればすぐに襲いかかってくるはずの魔獣が、我らの南下を阻止するだけとは……。もしや知能が高いのか?」
とにかくその金属製の魔獣を排除するため、今はハンターたちに声をかけるとしよう。
「プラム、どうだい? 絶対無敵ロボ アポロンカイザーの新武器『カイザースコップ』は?」
「便利ですけど、これは武器なのですか?」
「本当は土木作業用だけど、武器にも使えるだな」
「初めて見る形の道具ですね」
今日は、絶対無敵ロボ アポロンカイザーとセクシーレディーロボ ビューティフォーの二体で、東部の港を整備していた。
レベルが1000を超えたら、かなり自由に二体を呼び出して動かせるようになったので、先日併合した東部の端にある港町『ランカー』の整備を手伝っていたのだ。
新しい武器であるカイザースコップを使って、港周辺の海底を浚渫していく。
水深を深くし、大きな船も港に停泊できるようにするためだ。
カイザースコップには予備があり、プラムにも貸して二人で海底の砂を浚渫していた。
「陛下が、港の整備を急がせるとは思いませんでした」
「南方の土地に進出できなくなった以上、ラーベ王国領内の開発にメドがついたら、海を隔てたリーフレッド王国以外の外国との交易を始めなければ」
「確かに交易で国富を増すのは重要ですね」
そのために、シゲールたちに魔法道具の開発、量産、大規模な工房群の建設、職人や研究者の養成などを任せているのだから。
「他国に侵攻したり、未開地の奪取をしなくても、技術と交易で富を稼いで国民たちを食べさせることができれば」
俺はムーアに、自分の考えを説明した。
「だから、陛下と王妃様自ら工事をしていらっしゃるのですね」
「そういうことだ」
港の工事はともかく、ランカーの欠点であった水深の浅さは、俺とプラムが海底を浚渫した方が早いからだ。
新しい武器である、カイザースコップの使い心地を試してみたいというのもあった。
「武器なんですよね?」
「武器にも使えるだ」
プラムは半信半疑のようだけど、アニメでもちゃんとカイザースコップを武器として使用していた。
それ以上に、工事道具として使っていたけど。
「武器としての使い方はあとで教えるよ」
その後も二人で海底の浚渫を続け、わずか一日でランカーは大型船が入港できる水深を確保することができた。
その後は、シゲール特製の工事用魔法道具と、それを操る王国軍の工作部隊が入り、ランカーは港湾都市へとその姿を変貌させていくこととなる。
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