第五十四話 夫婦生活  

「ダストン様」


「ううん……」


「いつもお寝坊さんですね。おはようのキスをしたら起きていただけますか?」


「起きる」


「やはり目が覚めていましたね」


「いや、プラムがキスをしてくれないと起きないよ」


「それは大変です。さあ、起きてください」


 アトランティスベース(基地)の居住区にある寝室で朝目が覚める。

 大人が十人は寝られる大きなベッド……アニメの設定でもそうだったけど、子供向け番組にしては際どいな……で、プラムにキスをしてもらい目覚める。

 世の男性諸君。

 気持ちはわかるけど、俺はこれでも色々と大変なので、このくらいのご褒美は許容してほしい。

 目が覚めると、二人で一緒に朝風呂に入った。

 天然温泉……の成分を人工合成したお湯だけど、露天風呂といっても人工庭園だけど……違いはわからないので問題はない。

 この世界では大貴族や王族でも朝からお風呂に入れず、今のところは俺とプラムだけの贅沢だった。


「チョウショクデス」


 朝食はロボットが作ってくれる。

 和食、洋食の他に、中華粥だったり、メニューのバリエーションは豊富で、頼めばどんな料理でも作ってくれるの飽きないでよかった。

 朝食が終わると、一度王城に顔を出す。


「特にないよね?」


「シゲール殿の活躍もあって復興も新規開発も、王都や郊外の再開発も順調ですが……」


「金がないと?」


「はい……」


「王城の財宝を売り払うわけにいかないからなぁ……」


 ラーベ王国の復興と開発は順調に進んでいる。

 今では被災者もみんな家や農地、職を得ることができた。

 ただし、まともな税収は来年以降である。

 ラーベ王国に金はなく、俺とプラムが毎日虐殺している魔獣の素材と魔石にかかっているのだ。


「他にも、アトランティスベース(基地)から出しておくけど」


「あのお酒がいいですな」


 仕方がないので、アトランティスベース(基地)で生産している酒も王城の倉庫に入れていた。

 これを売却して金を得るわけだが、あまりやり過ぎるとラーベ王国の酒造業がオワコンになってしまう。

 超のつく高級酒のみを、国内の富裕層とリーフレッド王国に流していた。

 これが実によく売れ、新ラーベ王国の財政を助けていた。


「今年いっぱいで、なんとか財政を均衡にしないとな」


「計画では問題ないです」


「そうか」


 ラーベ王国の統治は、ムーアとアントンに任せている。

 前に約束した……それは、バルサーク領のことだって?

 細かいことを気にしてはいけない。

 だって、俺とプラムの子供の一人にちゃんとバルサーク家の名を継がせる予定なのだから。

 そのためにも、二人には頑張ってほしいところだ。


「陛下、この前被災地で食べた『即席ラーメン』は美味しかったですな。もっと欲しいです」


「えっ? 即席麺が? まあいいけど……」


 スタッカー伯爵により荒廃した東部で急ぎ食糧支援が必要になり、俺がアトランティスベース(基地)を召喚できるようになってから、カンパンとか、即席ラーメンとか、缶詰を住民に配給するようになっていた。

 あとは、軍への補給が追い付かない時にも提供した。

 そうしたら、軍人たちが即席ラーメンをとても気に入ってしまったのだ。

 カップラーメンだと容器の片づけが面倒なので、袋入りの即席麺とし、某〇キンラーメンと同じ作り方ができるようにしたのだけど、最近軍人たちの『即席ラーメン寄越せ!』圧が凄いと思う。

 即席ラーメンで働いてくれるのなら、こちらとして楽なので別にいいけど。


「倉庫に入れておくから、公平に支給してくれよ」


「本当に喧嘩になってしまうので、確実に公平に支給していますよ」


 凄い人気だな!

 即席ラーメン。

 今度、ラーベ王国の商人たちに作り方を教えようかな。

 あとは、パスタ、ウドン、蕎麦の乾麺とかもか。

 民間で普及させた方が、周り回って税収も上がるだろうから。

 新しい産業を育てないと。


「じゃあ、今日も行ってくる」


「「「陛下、王妃様。いってらっしゃいませ」」」


 ムーア、アントン、ボートワンに大まかに指示を出し、俺とプラムは北方へと飛んで行く。

 今日も北部で大量の魔獣を狩るのだ。

 魔獣を狩れば狩るほどラーベ王国の財政と国力がプラスになるので、とにかく頑張らねば。


「こんな王様、前代未聞だけど」


「そうですね。でも、早くラーベ王国がよくなります」


 どうせ収支のこととか考えるだけ無駄だからな。

 俺とプラムも、一つでも多くレベルを上げたい事情がある。

 お互いに利点があるわけだ。


「お昼はなにかな?」


「今日はラーメンが食べたいです」


「ボートワンたちの影響だな。俺はつけ麺にしよう」


 昼食はアトランティスベース(基地)を召喚し、居住区のリビングでそれぞれ好きなものを食べる。

 ロボットに言えば食事が出てくるので楽でいい。


「おやつは、これが美味しそうですよね」


「ハワイアンパンケーキか」


 昼食が終わるとオヤツの時間まで魔獣狩りを続けるのだが、知らぬ間にメニューが増えていることがある。

 アニメを放映していた当時に、『ハワイアンパンケーキ』や『抹茶タピオカラテ』は存在しなかったはずなので、これは俺の影響かもしれないな。

 プラムは年頃の女性らしく、毎日おやつの時間に食べるスイーツを楽しみにしていた。


「神話の時代のデザートは美味しいですね」


「そうだね」


 神話の時代というか、現代地球のだけど。

 俺も甘い物は好きなので、今日はマンゴーを大量に使用した台湾かき氷を食べていた。

 酒は、ボートワンたちに任せればいいだろう。

 オヤツを食べ終わると、あとは夕方までもうひと踏ん張りだ。

 そして日が暮れた。

 夜間戦闘は効率が落ちるので、そのまま飛んで王城に戻る。

 さすがに一食くらいは、王城の料理人が作る夕食を食べるのが日課だったからだ。

 そうしないと、彼らの仕事を奪ってしまうことになるから。


「今日も沢山魔獣が狩れましたね」


「レベルも上がってるし、次はどんな特技や武装が出てくるか楽しみだ」


「私も、新しい武器とか欲しいですね」


「もっとレベルが上がれば、新しい特技や武器を使えるようになるさ」


 夕方になると王城に戻って夕食となるが、基本的に質素なメニューにしている。

 表向きは経費削減のためだが、実はアトランティスベース(基地)で食べた方が美味しいからだ。

 料理人たちの雇用は維持しているが、俺たちに料理を作るよりも、王城詰めの家臣や兵士たちに初食事を出す機会の方が圧倒的であった。


「明日はお休みですが、なにをしましょうか?」


「どこかに出かけようか?」


「それよりも、ここで映画というやつを見たいです」


「無理に外に出る必要はないか」


 さすがに週に一度休日を取っているが、だいたいアトランティスベース(基地)内の施設で遊ぶことが多かった。

 色々あって飽きないし、二人きりで遊べるというのもあった。

 夫婦になっても、デートはしないとね。


「おやすみなさい、ダストン様」


「おやすみ、プラム」


 そして、二人で仲良く寝る。

 それにしても、アトランティスベース(基地)を召喚できるようになってよかった。

 実に充実した夫婦生活を送れるのだから。

 ぶっちゃけこれがあれば、素材や魔石なんて全部無料で提供しても全然構わないし、今はその状態だな。

 王様は公人でもあるので、いまいち個人の資産と国家の資産の差がわからない。

 困窮している人たちを見ると精神的に凹むので、今はこれでいいじゃないかな?

 なんて考えていたら眠くなってきた。

 夫婦なのでそういうことをする日もあるけど、今日は明日のお休みに備えて寝てしまうことにしよう。


 それではみなさん、おやすみなさい。

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