第五十三話 アトランティスベース 

「ついにやったぞぉーーー!」


「どうかされましたか? ダストン様」


「ついに、新しいスキルを手に入れたんだ!」




 このところ、俺とプラムは死の凍土、北アーベルの沼、リンデル山脈で魔獣たちを虐殺レベルで倒し続けていた。

 ここで得られる魔石と素材が、ラーベ王国の復興と発展に使われるからだ。

 さらに時間短縮のため、シゲールたちに大量の魔法道具を作らせた。

 工事に使えそうなトラック、ブルドーザー、ショベルカー、クレーン車の絵図を描いて渡すと、彼とその仲間たちが何度かの爆発ののち、無事に開発に成功。

 量産され、ラーベ王国の各地で使用されるようになった。

 現在ラーベ王国では、とてつもない予算を投入した『緊急国土開発計画』が進んでいる。

 その予算は、どこもかしこも戦乱に傷ついら民衆を労わる『民力休養』のため、来年以降にならないと徴税もできず、仕方がないので商人たちから金を借りたり、俺とプラムが魔獣を虐殺して集めていた。

 この一~二年を乗り越えれば、ラーベ王国の財政も落ちつくと財務大臣になったムーアが言っていたので、今はレベル上げも兼ねて魔獣を虐殺しているわけだ。

 俺のスキルが絶対無敵ロボ アポロンカイザーでよかったと思う。



ダストン・バルザーク(16)


レベル1000


スキル

絶対無敵ロボ アポロンカイザー


解放


カイザーパンチ

カイザーキック

カイザーアイビーム

フィンガーミサイル

コールドフラッシュ

ダブルアームトルネード

ロケットパンチ(爆破)

アームミサイル


無敵剣

豪槍(ごうそう)アポロニアス

スペースブーメラン

為朝の弓

スペースヌンチャク

スペース青龍刀


アトランティスベース(基地)転送



プラム・ラーベ(17)


レベル978


スキル

セクシーレディーロボ ビューティフォー


解放

レディーパンチ

レディーキック

パイオツミサイル

ヘッドレーザー

ダブルブーメラン


修理キット



 前ラーベー王やスタッカー伯爵との戦闘。

 そして、毎日の魔獣虐殺でレベルが大分上がった。

 新しい武器やスキル増えなかったが、ついに一つだけアトランティスベース(基地)転送を覚えることができた。

 これは、別次元にあるアトランティスベース(基地)に転送してもらえるスキルというわけだ。


「プラム、行こう」


「はい」


 俺がスキルを使うと二人はその場から姿を消し、気がつくと、アニメでもよく見たアトランティスベース(基地)の転送マシーンの中に立っていた。

 アニメだと、第十八話からこのアトランティスベース(基地)を生活、活動の拠点にするんだよな。


「ダストン様、とても綺麗で見たことのない造りのお家ですね」


「そうだな」


 早速内部を巡ってみるが、さすがは古代アトランティス文明の遺産。

 実に超未来的で、ここ数年間ファンタジー風な世界で生活していたせいか、懐かしいというのも変か……とにかくワクワクしていた。


「ここの居住区は充実しているから、二人でここに住もうか?」


「いいですね、それ」


 ここなら、ラーベ城に住むよりも警備を減らせるからな。

 俺とプラム以外誰も入れないのだから。


「プラム、なにを飲む?」


「広くて綺麗なお部屋ですね。ゴーレム?」


「敵ではないから安心してくれ」


 早速休憩室に入ると、そこには給支用のロボットが立っており、俺とプラムを見つけると挨拶しえきた。


「オカエリナサイ、ダストンサマ、プラムサマ。ナニカノマレマスカ? オショクジモヨウイデキマス」


 そう言うと、ロボットは小さな端末を渡してくれた。


「ちょうどお昼だったから、なにか食べようか。俺はラーメンとカレーね」


 アニメの設定のままなので、日本食を出してもらえるのが嬉しかった。

 他にも、このアトランティスベース(基地)では、世界中(地球限定)のありとあらゆる料理、お菓子、食材の出してもらえる。

 なお、『古代アトランティス文明の遺産なのに、どうして日本のラーメン、カレー、中華料理、フランス料理のフルコースが出てくるんだろう? 』と不思議に思うかもしれないが、それはアニメの設定なので仕方がないということで。

 別に、なにか不利益があるわけじゃないどころか、メリットしかないのだから。

 これは、異世界で頑張り続けた俺への褒美だと思うことにしよう。


「プラムはなにを食べる? 色々とあるよ」


「本当ですね。これなんて美味しそうです」


 プラムは、カルボナーラとサラダに、デザートのケーキも頼んでいた。

 食事に甘い物も加えていく。

 やはり女子はスイーツが好きなんだな。


「この細い小麦は美味しいです。ダストン様も同じようなものを食べていますね。どこの料理なのでしょうか?」


 そういえば俺も今のところ、この世界では麺料理は見ていなかった。

 世界は広いので、どこかにはあるのかもしれないけど。


「遠い神話の時代の料理なんだろうね」


 プラムには、まさかアニメが作られた別世界の料理とはいえず、絶対無敵ロボ アポロンカイザーが出てくる神話の世界の料理だと言って誤魔化していた。


「プラムのカルボナーラも美味しそうだな」


「ダストン様、少し食べますか? あーーーんしてください」


「……あーーーん」


 誰も見ていないしな。

 問題なかろう。


「プラムも、このラーメンも美味しいよ。はい。アーーーンして」


「これまでに食べたことがありませんけど、とても美味しいですね」


 そのあと俺はデザートも食べたくなり、ロボットにアイスクリームを注文した。

 バニラアイスは、食後のアイスコーヒーとの相性が最高だな。


「頑張ってレベルを上げてよかった」


「ここに、絶対無敵ロボ アポロンカイザーとセクシーレディーロボ ビューティフォーがあるんですね」


 格納庫に安置された二体は、ロボットたちにより念入りに修理、整備されていた。

 食後、アトランティスベース(基地)を見て回るが、大まかに居住区、戦闘区、生産区、運用区の四つに分かれている。

 どうしてそんなことを知っているかって?

 俺は、絶対無敵ロボ アポロンカイザー数量限定設定集を購入して、暗記するまで何度も繰り返し読んでいたからだ。

 居住区は、ありとあらゆるものが揃っている。

 料理の材料はすべて、人工光合成を利用して作った特殊なコケを用いた人工食料だけど、本物とまったく差がないので気にはならない。

 特にプラムは、人工合成する食料自体に馴染みがないので、素直に美味しい料理やお菓子、飲み物を堪能していた。

 作り方は工業的だけど、人工合成食料は添加物や保存料を使っていないので実は健康的だったりする設定だけど。

 戦闘区は、このアトランティスベース(基地)自体が戦うための武器装備や装備が配置されている場所であった。

 ミサイルやレーザー、ビーム、デコイなど。

 ミサイル、弾薬、エネルギーの生産工場に、アトランティスベース(基地)を運用するロボットたちの生産、整備工場も併設されていた。

 生産区は、食料や生活必需品の生産や管理を行う部署である。

 アニメだと、機械大人や機械魔獣のせいで被災した人たちに、食料、仮設住宅、衣服なども提供していた。

 運用区は、アトランティスベース(基地)を維持管理するロボットたちの置き場所だ。

 戦闘区と同じく、ロボットの生産工場も置かれていた。

 無人で運用することが前提のアトランティスベース(基地)なので、ロボットたちが沢山いなければ話にならず、戦闘時に破壊されることも考慮して、ロボットは大量の予備が用意されていた。

 軍艦に予備の人員を乗せているのと同じ考え方だ。


「後方支援体制が整ったので、これで一応安心して機械大人と戦えるな」


「そうですね。お休みしたので、あとは夕方まで頑張りましょうか?」


「そうだね」


 とにかく今は、魔獣を倒して素材と魔石を稼がねば。

 稼げば稼ぐほど、ラーベ王国の復興と開発は早く進むのだから。


「今日はもう戻ろうか?」


「はい」


 こういう時、俺とプラムスキルはとても役に立つ。

 北部からラーベ王国の王城までの距離を、わずかな時間で往復できてしまうのだから。


「ダストン様、アトランティスベース(基地)で移動しないのですか?」


「しない方が早いんだよ」


 実は王城の上空で召喚すれば、すぐにアトランティスベース(基地)は別次元から出現できるので、これに乗って帰らず俺とプラムは飛行した方が移動が早かったりする。


「夜はここの居住区で寝よう」


「王城の設備よりも圧倒的にいいですからね」


 空調は完璧で、風呂は露天風呂、薬湯、ジェットバス、サウナなど。

 下手な豪邸、高級温泉宿よりも充実しており、ロボットに言えばどんな食事やデザート、飲み物が出てくる。

 寝室も豪華で、洗濯や掃除も全部ロボットがやってくれるのだ。

 無理に城の部屋を使う意味はなかった。

 もし俺たちの子供にスキルがなかったら、このアトランティスベース(基地)は使えないかもしれないので、城の住居を廃止にしたりはしないけど。


「そろそろ王城が見えてきたな」


「はい」


 今日も沢山の魔獣を狩った俺とプラムは、飛んで王城へと戻り、そこで改めてアトランティスベース(基地)を呼び出した。

 王都の上空に直径一キロを超える空中要塞が出現したら住民たちがパニックを起こすので、ちゃんと保護色モードで見えないようにはしているけど。

 これも、アニメの設定であった。


「ムーア、というわけで俺とプラムはアトランティスベース(基地)で暮らすから」


「スキルで出した空中要塞ですか? ……先代のお館様はバカなことをしましたな」


「火のバルサーク家。今やそんなことを覚えている者は少ないでしょう」


「先代の陛下も同じだ。風のラーベ王家といっても、もう誰も生き残っておらぬ。王妃様以外はな」


 ムーア、アントン、ボートワンは、父や先代ラーベ王のことを思い出し、溜め息をついていた。


「まあなんだ。三人とも、これでも飲んで早く寝てしまえ」


「飲み過ぎはよくないですけど」


 俺とプラムは、アトランティスベース(基地)で製造、貯蔵していた高級酒……昔のアニメなのでナポレオンを手渡した。

 アニメの設定だと、本物と同じ味と香りを再現しているそうだ。

 他にも、高級ワイン、コニャック、焼酎、日本酒なども渡しておいた。

 それにしても、どんな食品も忠実に人工合成できるのはいいけど、古代アトランティス文明の空中基地が、現代日本の食品データはどこで手に?

 ……深く考えたら負けか。


「これは美味そうな酒ですな」


「ありがたいです」


「大切に飲みます!」


 大人はお酒が大好きだな。

 気に入ってもらえたのなら忠誠度も上がるだろうし、それはよかったと思う。

 俺とプラムが魔獣狩りを続ける以上、特に三人には頑張ってもらわなければいけないのだから。

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