第十八話 ダブルアームトルネード

「ダストン様、プラム様。いってらっしゃいませ」


「行ってくる」


「行ってきます、ムーアさん」



 俺がハンターになって一ヵ月が過ぎた。

 月替わりにランクの変更があり、俺とプラムはCランクに。

 Bから上は一ヵ月に一つずつしか上がらず、Sからはハンター協会の審議があるそうなので、Aランクから上に上がるには時間がかかるかもしれない。

 でもCランクになれば口座も開設できるし、特に困ることもないので問題はなかった。

 初心者用の宿から出るように言われたので、ちゃんと大きめの家を購入したしな。

 ローンなんて甘えはないそうで即金で購入したが、お金には余裕があるのですぐに購入できた。

 ムーアが住み込みで働ける家なので、それなりの価格だったとだけ。

 彼の給金も稼ぎに比べればさほどの金額でもなく、今日もプラムと二人で魔獣狩りに出かけた。


「新しい武装というか、これは技の類だと思うな。とにかく覚えた」


「私は全然覚えられないです」


「(セクシーレディーロボ ビューティフォーは、武装と武器が少ないんだよなぁ……)そのうち覚えるさ。今のところ、そんなに困っていないでしょう?」


「そう言われるとそうですね。殴って蹴ればいいので」


 プラムのレベルは120を超えたが、あれからなにも武器も武装も増えていなかった。

 俺はレベル150を超え、新しい武装、技を覚えている。


「『ダブルアームトルネード』。両腕で竜巻を発生させる技だ」


 空を飛ぶ機械魔獣をこれで叩き落としたり、機械大人を上空に巻き上げたり。

 アニメの絵的には見栄えがある技であった。

 あと竜巻なので、この世界基準でいうと風魔法に見えなくもない?


「師匠、このダブルアームトルネードなら魔獣の体が残りませんか?」


「おおっ! 確かにプラムの言うとおりだ!」


 風で巻き上げる技だから、きっとモンスターの素材は残るはず。

 プラムの考えに全面的に賛成した俺は、その足でマッドウォーターカウで試すことにした。


「お肉、角、内臓が高く売れる君に決めた!」


「師匠、頑張ってください」


「任せてくれ、プラム」


 美少女に応援されるのは悪くないな。

 俺は、マッドウォーターカウに対し両腕を前につき出してダブルアームトルネードを放った。

 両腕から発生した竜巻は、標的のマッドウォーターカウを包み込む。


「プギャーーー!」


 もの凄い悲鳴をあげるマッドウォーターカウ。

 あとは上空へ巻き上げるだけ……のはずが、その後予想もしなかった展開へと発展していく。


「プグギュワァーーー!」


「うわっ! キモッ!」


「師匠、失敗ですね」


 ある種の必殺技の範疇に入るからか?

 ダブルアームトルネードに巻き込まれたマッドウォーターカウは、まるで体のあちこちが剥がれていくかのようにバラバラになり、ついには上空へと消えて行ってしまった。


「師匠、これは?」


「威力があり過ぎるんだな」


 数百トン~数千トンの機械魔獣や機械大人が上空へと巻き上げられ、ダメージすら与えられる技なのだ。

 重量がわずか数トンの魔獣なんて、簡単にバラバラに引き裂いてしまうのであろう。

 マッドウォーターカウは破片が拾えないほどバラバラになって消えてしまった。

 しかも……。


「師匠! 魔石がないです! まさか壊れたとか?」


「それはないはずだ」


 魔石は、カイザービームやフィンガーミサイル、コールドフラッシュでも壊れなかったものだ。

 多分、どこかに飛ばされてしまったのであろう。

 なにしろ竜巻だからなぁ……。


「ハンター業では使えないな」


「師匠、ゴーレムに戻りましょう」


「そうだな」


 魔石すら回収できないとは……。

 普段は使えない武装ということで、これはたまに練習するだけにしておこうと思う。

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