第十四話 魔獣狩りでは使えない

「プラム、レベルが100を超えたら新しい武装を覚えたよ」


「師匠、おめでとうございます!」


 二人で沢山魔獣を倒し、俺はようやくレベル100になった。

 新しい特技を覚えたのだが、それは……。



ダストン・バルザーク(13)


レベル100


スキル

絶対無敵ロボ アポロンカイザー


解放


カイザーパンチ

カイザーキック

カイザーアイビーム

フィンガーミサイル

コールドフラッシュ


無限ランドセル



 新しい武装は、絶対零度どころか、究極絶対零度(マイナス一億度)……本当にそんな温度があるのかって? アニメの設定なのであまり気にしないでね……の冷気を胸から発射する武装であった。

 これを浴びると、さすがの機械大人でも大きく行動を阻害されてしまう。

 全銀河全滅団が繰り出す『機械魔獣』……全銀河全滅団が作り出した機械型の獣だ……なら、とてつもない冷気により機能を停止してしまうほどなのだから。

 当然だが、まったく効果がない機械大人がいるのも、アニメとしてはよくある話であった。


「つまり氷魔法ですか?」


「そんなところかな?」


「それなら、魔獣の素材が残りませんか? 溶けるまで時間がかかりますけど」


「いやあ、そう上手くいくものではないと思うな」


「どうしてです?」


 なぜなら、コールドフラッシュは氷魔法なんて範疇を超えているからなぁ……。

 なにしろマイナス一億度だから。


「試しにやってみるか」


 相手は動物じゃなくて魔獣だ。

 もしかしたら素材が残るかもしれない。

 俺とプラムは、久々にスライムの生息地へと向かった。

 相変わらずもの凄い数だが、どうやって増えているのか不思議でたまらない。

 別に俺は生物学者ではないし、そこまで知的好奇心が高いわけでもないから研究はしないけど。


「試しにあのスライムで試そう。コールドフラァーーーッシュ!」


 常にアニメでの動きを忠実に再現することを忘れない。

 そうしなければ、このスキルは発動しないのだから。

 『コールドフラッシュ』ではなく、『コールドフラァーーーッシュ!』なのはお約束であり、俺はプラムにも常に声を張り上げ、イントネーションを間違えないよう、まるで野球部の先輩が後輩に『声を出せ!』と注意するような感覚で指示を出した。 

 コールドフラッシュは、絶対無敵ロボ アポロンカイザーの胸から出る。

 俺は仁王立ちしてから、両腕を腰に当てた。

 すると青白い冷気の光線が発射され、標的のスライムに命中する。

 スライムは一瞬で凍り付いてしまった。


「カチコチですね。これなら、溶ければドロドロも回収できるはず……あっ……」


「やはりそうなったか」


 やはりマイナス一億度は生物には辛いようだ。

 スライムは凍って固まるの段階を超え、一瞬で粉々に砕け散って、霧のように空を舞ってから完全に消滅してしまったのだから。


「それでも魔石は残るんですね……」


「魔石って頑丈だよなぁ……」


 下手な金属よりも、はるかに頑丈なんだよな……。

 魔法道具の燃料として使うと、溶けるようになくなってしまうけど。


「念のため、他の魔獣で試してみよう」


 俺とプラムは、そのあとも色々な魔獣にコールドフラッシュをぶつけてみたのだけど……。


「アイアンタートルの甲羅まで粉々になってしまいました。危険じゃないですか? この武装」


「うーーーん、封印で!」


 武装が増えるのはいいんだけど、素材が残るように魔獣を倒せるものが……元々巨大機械と戦うための武装だから無理なのか……。

 でも、絶対無敵ロボ アポロンカイザーの武器と武装は八百八万八百八あるって設定だ。

 アニメや設定集で出てこなかったものが、これからレベルアップで出てくるかもしれない。


「やはり、レベルアップだな」


「はい! 私も武器と武装を増やしたいです!」


「……そうだね……」


 その後は、ゴーレムを倒して大量の鉱石と魔石をゲットしたのだけど、ゴーレムにもコールドフラッシュは使えなかった。


「鉱石まで粉々になってしまうとは……」


 マイナス一億度の冷凍光線。

 意外と使い道がなかった。

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