第十話 同類
「彼女がプラムさんですか。初めまして、ダストンです」
「ダストンさん、彼女のスキルは変わっているそうですよ。使い方が容易にわからないくらい」
「なるほど」
ランドーさんに呼び出されて人を紹介されたのだけど、もの凄い美少女だな。
事情を聞けば、元ラーベ王国の王女様だったらしいが、変わったスキルのせいで故郷を追い出されたとか……。
俺は中身がオジさんだし、スキルが使いこなせたので大した苦労もしていないけど、この子は大分苦労してきたことが容易に想像できた。
「ダストンさんのスキルも変わっているんですよね?」
「ええまあ……」
この二週間半ほど。
あれだけ魔獣を狩っていれば、気がつかれて当然というか。
俺のスキルを『神託』で聞いた神官も。
それを聞かされた教会も。
バルザーク伯爵である父も。
首を傾げ、そんなスキルにはなんの価値もないと判断し、俺は故郷を追い出された。
別に知られてどうというわけでもないのだ。
「ちなみにダストンさんは、どのようなスキルなのでしょうか?」
「『絶対無敵ロボ アポロンカイザー』です」
「ハンター協会も当然スキル情報の収集や解析をしていますけど、なんとも摩訶不思議な名前のスキルですね」
この世界の人間に、ロボットアニメに出てくる超合金巨大ロボの名前を聞かせても理解できないから当然か。
「それでもダストンさんは、ハンターとして優れた成果を出しています」
優れたというか、圧倒的な強さで魔獣を倒せます。
ですが、攻撃力があり過ぎて素材の確保に苦労しているけど。
だからもっと、素材が残る魔獣の情報が欲しいよね。
「私は思うのです。もしかしたら、プラムさんのスキルも同じようなものなのではないかと」
「かもしれませんね」
実際に聞いてみないことには、なんとも判断しづらいけどね。
「もしよろしければ、プラムさんのスキル名を教えていただきたいのですが……スキルの公表を嫌がる人も一定数いるので、強制はしません」
どういうわけか、実際にスキルを教えたがらない人は一定数いた。
それがバレると……問題あるのかな?
でも、戦い方ですぐに気がつかれてしまうからなぁ……。
いいスキルを持っているハンターの中には、ドヤ顔で自慢している人も多い。
隠さなければならない風習がある地域とかあるのかね?
「いえ、特に隠す理由は……どうせ、神官と教会と元家族は知っていますから」
確かにそうだ。
成人の儀には家族もつき添う。
俺のスキルだって父はすぐに知ることができたので、別に秘密でもなんでもないのだ。
「正直なところ、どう使っていいものやら皆目見当もつかず。私は不慣れな剣でスライムばかり倒して生きてきました」
スキルは、ちゃんと使い方が理解できていないと発動しないからなぁ……。
メジャーなスキルは、いくらでも使い方を調べることができる。
バルザーク伯爵家なんて、代々火魔法しか出ない想定なので、火魔法に関するマニュアルの類は非常に多かったのだから。
スキルの遺伝的な継承は絶対ではない。
きっと過去に、『火魔法』のスキルが出ないで追い出された先祖はいたんだろうなと思う。
というか、貴族でないのに魔法系のスキルを持つ人って、先祖が貴族なのだろう。
他に理由が思いつかない。
「どんな可能性にも賭けてみようと思います」
「で、プラムさんのスキルは?」
「『セクシーレディーロボ ビューティフォー』です。とにかく意味不明で……」
「私も前に聞いたんですけど、どんな文献にも載ってなかったんですよ。ダストンさん、わかりますか?」
「はい」
「「ええっーーー! 本当にですか?」」
なんかもの凄く驚かれてしまったが、俺はそのスキル名にもの凄く聞き覚えがあった。
だってそのスキル名は、俺がこよなく愛している絶対無敵ロボ アポロンカイザーに出てくる、アポロンカイザーを支援、補佐する、女性型ロボットの名称なのだから。
そしてそれを操る女性はメインヒロインで、最終話で主人公と結婚してしまう、日本人とアメリカ人とのダブル、アンナ・東城。
金髪でスタイル抜群で、当時子供だった俺はその美しさに参っていたほどだ。
初恋の人でもある。
数少ない絶対無敵ロボ アポロンカイザーマニアの中でも、ヒロイン、アンナ・東城の人気はとても高いからなぁ……。
「あの! 是非ご教示を!」
「はい……(似てるなぁ……)」
さらに先ほどから気になっていたのだけど、このプラム元王女。
アンナ・東城を幼くさせたような……。
胸の大きさとかは、さすがは西洋ファンタジー風な世界というか……。
そんな彼女に必死に懇願され、俺は彼女にスキルを教えることになったのであった。
教える……。
まあ、教えるでいいのか?
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