第七話 フィンガーミサイル

「お金はもう十分だけど、レベルはなかなか上がらないんだな。とはいえ、新しい武装が解放されたことを喜ぼう」


 ハンターになって二週間。

 ステータスはこんな感じになった。



ダストン・バルザーク(13)


レベル60


スキル

絶対無敵ロボ アポロンカイザー


解放

カイザーパンチ

カイザーキック

カイザーアイビーム(目)

フィンガーミサイル


無限ランドセル


 レベル20ごとに、武器や武装が解放されるというわけではないようだ。

 次の武装が解放されるまで、レベルを40も上げる羽目になってしまった。

 アイアンタートルを大量虐殺したので、もう北方どころか他国の分の亀鉄を入手できたそうだ。

 これ以上狩ると相場が大幅下落してしまうので、今日は他の魔獣を狩っていいという許可を貰った。


「ブモォーーー!」


 巨大な水牛。

 マッドウォーターカウという巨大な水牛型の魔獣が沼にいたので、早速新しく覚えたフィンガーミサイルを放ってみる。

 絶対無敵ロボ アポロンカイザーの指はすべてミサイルであり、アニメだとカイザーアイビームと共に雑魚敵の掃討に使われていた。

 ビームだと高温で容赦なく溶かすイメージだけど、ミサイルなら素材が残るかもしれない。

 もしそうなれば収入も増えるはずだ。

 なお、『指がミサイルって、敵と組み合った時に誘爆しない?』とか、そういう大人の意見は俺は聞きたくないかな。

 元々アニメの設定なんだから、あまり細かいことに拘ってもというわけだ。

 それと無事に素材が残ったとして、これ以上金を得てどうなるって意見もないわけではないけど。


「どんな武器か試さないと、いざという時に使えないからな。フィンガーミサイル!」


 フィンガーミサイルには、カイザーはつかない。

 つけてしまうとミサイルが出ないので、アニメどおりに叫ばないと駄目みたいだ。

 口にする文字数が減るから楽でいいけど。

 アニメのシーンどおりにポージングしながら技名を叫ぶと、俺の指から本当にミサイルが発射された。

 一瞬俺の指がなくなってビビるけど、すぐに元通りになって、本当に不思議である。

 そして、マッドウォーターカウに命中したミサイルは大爆発を起こし……。


「おえっ!」


 確かに素材は残ったが、ミサイルの爆発でバラバラになったマッドウォーターカウのバラバラ死体というのはいただけない。

 あまりにスプラッターな光景で、しかも素材の価値もこれでは期待できないな。

 だって、バラバラなのだから。

 むしろ、パンチの方がまだマシとは……。

 フィンガーミサイルは、もっと硬い敵に使えばいいのか?

 その前に、マッドウォーターカウでは素材を得られないようだ。

 俺はグチャグチャの内臓の中から魔石を拾ったが、バラバラな内蔵と肉片、血の臭いのせいで大分気分が悪くなったので、また別の魔獣を探そうと思う。


「とはいえ、俺の魔獣に対する知識など実家の本のみだからなぁ。こういう時は、ランドーさんに聞こう」


 見た目少年な俺が言うのもなんだけど、彼は若いが、買い取り所の責任者なので魔獣に詳しい。

 俺が攻撃しても、消えない魔獣を教えてくれるはずだ。


「その前に、今日の分を」


 値が下がったとはいえ、甲羅が残るだけマシであろう。

 俺は、夕方までアイアンタートルを虐殺してから、買い取り所まで飛んで行くのであった。





「えっ? マッドウォーターカウでも駄目ですか?」


「バラバラになってしまいました」


「手加減しても?」


「手加減してもです」


「……次の魔獣を紹介します」


「わーーーい、ありがとうございます」


 明日に備えて早く寝ようかな。

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