43 二次試験
2月21日。土曜日。
ついに零一くんの東王大学二次試験の日がやってきた。
朝、学校へ向かう途中、
「私は何も出来ませんが、いい結果が出るよう祈っています!」
とメッセージを零一くんへ送ると、すぐに返事が来た。
「出来る限り頑張ってみます!」
私はそんな零一くんの一言を何度も読み返しながら、心配ながらも学校へと到着した。
「碧ーおはよ!」
「……はい。おはようございます文音」
「今日、東王大学の二次試験だっけ! 上月くん受かるといいね……!」
「はい。本当に」
そんな会話を文音と朝して、そのあとなにも手がつかずお昼に――学校が終わる時間になった。
「零一くんはいまお昼休み中でしょうか……邪魔はしたくないのでメッセージは送りませんが、すごく何をしているのか気になりますね。ご飯はしっかり食べたのでしょうか」
「フフッ……! 碧ってば上月くんのお母さんみたいになってるじゃん」
文音が思わずといった体で笑い出した。
「なっ! 別にお母さんというわけではないのですが……気になります」
「そっかそっか。まぁ上月くんのお父さんが何もしなさそうな分、お母さんが二人居てもいいか?」
「はい? 零一くんのお父さんが何もしなさそうとは?」
「あ、いや……なんでもない忘れて!」
文音がなんだか気まずそうに手を何でもないとぱたぱたと振る。
どうしたのだろうか? 文音がやたらと動揺している。
「それより! 今日はこの後どうする? 矢張さんとの練習はないんだよね?」
「はい。今日も操は仕事がこの後入っているようですので……」
「そっかそっか。じゃあどこか行っとく?」
「はい……いえ、文音に付き合わせるのは悪いので私一人でいいです」
「んん?? なにどこか行くの?」
「神頼みに……」
私が恥ずかしくも真剣な表情でそう告げると文音はあろうことか笑い出した。
「アハハ! いいよいいよどこ行くの? 一緒に行ってあげるって」
「はい。お正月にも訪れた神社へ……」
「おっけー! それなら近いし全然いいよ。行こう行こうー」
文音に連れられ、私はお正月に訪れた神社へと向かった。
∬
お正月にも訪れた神社は、2月の平日ともなればお正月とは違ってガラガラだった。
「お正月にはあんなに人がたくさんいたのにね……!」
文音がお正月を思い出してそう述べ、私が「そうですね」と相槌を打つ。
そうして私と文音はすぐに本殿へとたどり着き、お参りを始めた。
最後に一礼し、願い事を――零一くんが東王大学に合格しますようにという願いを良く神様へと伝えた。そうして願い事を終えると、私は文音と共に社務所へと向かった。
せっかく来たのだから、これからの事を占おうとおみくじを引くことにしたのだ。
料金を支払い、おみくじを貰う。
そうして文音と二人で「いっせーのーで」という掛け声をしておみくじを開いた。
結果は――大凶。
「そんなまさか……」
「なになにー? うわマジか……!」
私のおみくじを覗き込んだ文音が絶句している。
「まさか大凶だなんて……」
私はがっくりと肩を落とす。
零一くんの合格祈願をしにきたというのに、なんだか幸先が悪い。
「私は中吉だってさー。
碧、大凶引くだなんてツイてないね……中身はなんて書いてあるの?」
なにやら難しいことが書いてあるが掻い摘んで言えば、
「……どうやら恋愛運が最悪、家族運も最悪なようです」
「へぇ……」
文音は私のおみくじの内容を聞いて黙り込んでしまった。
こういう時こそ、いつもポジティブな文音から、なにか励ましの言葉が欲しかったのだが……。
「……ま! 仕方ないよ!! 悪いおみくじはここに結ぶらしいから結びなよ!」
数瞬遅れて文音がそう言いながらおみくじかけを指し示し、私はおみくじを厳重に叶いませんようにと思いながらおみくじかけに結んだ。
そうして、幸先の悪さを感じながら文音と二人で神社を出た。
∬
2月22日。午後4時すぎ。
家にいた私にメッセージが届いた。
いまかいまかと待ち望んでいた私はすぐにメッセージを開く。
零一くんだ!
「二次試験終わりました!」
「お疲れ様でした。それで、その……結果はどうでしたか?」
「はい。おかげさまで十分な手応えを感じてます」
「それは……! 良かったです!!」
「はい!! これも藤堂さんに貰った学業成就のお守りのおかげかな?
心配してくれてありがとうございました!」
「いえいえ、それにまだ合格が決まったわけでもないですし。
その台詞は合格発表の日まで取っておきましょう?」
「ははは……確かにそうですね。上手く行ったからか浮かれてしまいました。
それではまた明日以降学校で!」
「はい。学校で」
やり取りを終えた私がよほど嬉しそうにしていたからだろう。
リビングで横にいた母が「上月くん、上手くいったのね」と微笑んだ。
「はい。二次試験ばっちりだそうです」
「そう……! それは凄いわね。
天下の東王大学の二次試験と言ったらさぞ難しいでしょうに」
「本当に、零一くんは凄いです……!」
私は笑顔で零一くんを褒めちぎった。
明日の学校が楽しみだ。
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