35 Interlude1 策謀
「ちょっと都恋! どこまで行くつもりだよ。トイレなら駅前のコンビニにでも……」
「私、お着物でのトイレの経験がありませんもの、一度着物を脱いでするしかありませんわ」
「脱いでってそんな……!」
僕は都恋に連れられ、駅から離れた場所にある裏路地へときていた。
いくら着物でのトイレが初めてだからって脱いでするって一体どういうことだろう?
じゃあ一体どこへ向かってるっていうんだ!
「ありましたわ!」
都恋が看板を指し示す。休憩2時間4000円。宿泊6000円。
「ちょっと待って、ここってもしかして……!」
「さぁ急ぎましょう零一さん。私もう我慢の限界が来ています」
建物へとずけずけと入り込んでいく都恋を追い、しょうがなく僕はその場所へと入っていった。
部屋の中に入り、スマホを確認するがどうやら圏外のようだ。
これでは藤堂さん達に連絡することもままならない。
「都恋……まだかな……」
トイレへと入っていった都恋の事を待つ間、ベッドを椅子代わりにする。
そうして3分ほどしただろうか、都恋がトイレから戻ってきたようだ。
スマホから視線を上げる。
「おかえり都恋……さぁ早く神社へ戻ろ……うって! なんだよ都恋その格好!!」
「零一さん!」
そこには一糸まとわぬ姿となった都恋がいた。
そうして都恋が僕に体当りするかのようにしてきた。
「私、着物の着方が分かりませんの……!」
「分かった……! 分かったから一度離れろ……! 着物なら僕が着付け方知ってるから!」
「ちぃ……そうではありませんわ零一さん! 私を見て何とも思いませんの?!」
「都恋は都恋だろ! 他にどう思えっていうのさ!」
「さぁ零一さんもお脱ぎになってください!!」
都恋が強引に僕の上着に手をかけた。
しかし、僕はそれを拒むと立ち上がり、くっついてくる都恋を抱えてベッドへと放り投げた。
「だから僕は都恋をそういう風には見れないって……!
僕には婚約した藤堂さんがいるんだよ!?」
「だから何だって言うんですの!? 多夫一妻という形式もありましてよ!?」
「僕に一夫多妻者になれっていうのかい!? お断りだよ!」
「零一さん。どうか私の夫の内の一人として……!」
「ごめんだけど、よくわからない! 無理だよ!」
僕はそれだけ言い放つと、都恋を残しホテルを後にした。
外へ出るとスマホは圏外ではなくなっていたので、すぐに藤堂さんへと連絡を取ることにした。
「もしもし、藤堂さん? ごめん都恋が迷惑をかけて……うん。うん。もう大丈夫だからこれからそっちへ合流するよ。今どこへ? まだ神社? 分かった! じゃあすぐに行くから」
僕は裏路地のホテル街を後にして、神社へと急いだ。
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